こちらの記事の監修医師
国家公務員共済組合連合会 九段坂病院
皮膚科部長 谷口 裕子 先生
つつがむしびょうツツガムシ病
最終更新日:2022/01/06
概要
ツツガムシ病は、農作業や野外活動の際にダニの一種ツツガムシの幼虫に刺されることで発症する。ツツガムシに刺されてから10〜14日の潜伏期間後に、38〜40℃の高熱を生じ、さらに2、3日後に全身に紅斑(1〜2cm)が多発する。ツツガムシ病は、治療が遅れると、全身の血管に血栓ができたり出血しやすくなったりするDIC(播種性血管内凝固症候群)を起こして、死に至ることもある。ツツガムシの幼虫は小さいため、刺された自覚症状はない。診断の決め手は、わきの下や股など衣服で隠れている部位にできる刺し口(黒いかさぶたの付いた1〜2cmの紅斑)を見つけることである。
原因
ツツガムシ病は、Orientia tsutsugamushiという病原菌リケッチアによって起こる。このリケッチアを保有するツツガムシに刺されることで感染する。人から人に感染することはない。戦前は東北・北陸の河川流域で夏に発生することが多かったが、近年では北海道、沖縄を除く全国で発生している。東北・北陸地方では春〜初夏、関東〜九州地方では秋〜初冬の発生が多い。菌を持つツツガムシが多い地域ではよく知られている疾患だが、旅行などで訪れて感染してしまい、帰宅後に発症した場合は診断が遅れることがあるので注意が必要である。
症状
山林や草むらに入ってから10〜14日の潜伏期間後に、38〜40℃の高熱を生じ、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感を伴う。そのほか結膜充血、喉の腫れ、全身のリンパ節の腫れなども見られる。高熱が始まってから2、3日後に全身に紅斑(1〜2cm)が多発する。全身をよく探すと、わきの下や股など衣服で隠れている部位にできる刺し口(黒いかさぶたの付いた1〜2cmの紅斑)が見つかる。ツツガムシ病は、治療が遅れると、脳炎・肺炎を合併したり、全身の血管に血栓ができたり出血しやすくなったりするDIC(播種性血管内凝固症候群)や心不全を起こして、死に至ることもある。
検査・診断
ツツガムシ病の診断には問診が重要である。山林や草むらに入ったというエピソードは診断の重要な判断材料となる。ツツガムシ病の3大特徴は①発熱、②刺し口、③発疹(紅斑)である。中でも刺し口を見つけることが診断の決め手となる。確定診断は、血液や刺し口のかさぶたから病原菌の遺伝子を検出する検査(PCR法)や病原菌に対する抗体を測定する検査である。
治療
ツツガムシ病の疑いがあれば、検査結果を待たず、直ちに適切な抗菌薬を投与する。初期治療の遅れは死に直結する。第一選択薬はテトラサイクリン系の抗菌薬であり、使用できない場合はクロラムフェニコールを用いる。一般的には、入院の上、抗菌薬の点滴を7〜10日間、さらに内服を数週間継続する。このほか、高熱、脱水、栄養障害への対症療法として点滴などを行う。
予防/治療後の注意
現在のところ、ツツガムシ病に対する有効なワクチンは開発されていない。そのため、ツツガムシに刺されないように対策することが大切である。第一にツツガムシ病の発生が多い季節、地域を知り、避けることが必要である。第二に山野に入る際には長袖、長ズボンを着用し、ズボンのすそを靴下で覆って、露出を減らすことである。山野に入った後は、入浴やシャワーでよく洗い流すようにする。
こちらの記事の監修医師
皮膚科部長 谷口 裕子 先生
1990年東京医科歯科大学医学部卒業。アトピー性皮膚炎を専門に経験を積み、医真菌学の研究も行う。九段坂病院の皮膚科顧問を務める大滝倫子先生のもと、20年にわたって動物性皮膚疾患の治療について学び、多くの診療に携わる。日本皮膚科学会皮膚科専門医。
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