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村山医療センター 手外科部門長 加藤 直樹 先生

こちらの記事の監修医師
村山医療センター
手外科部門長 加藤 直樹 先生

じょうわんこつかじょうこっせつ上腕骨顆上骨折

概要

子どもに起きやすい肘の骨折のこと。転んで手をつく転倒や鉄棒からの転落などをきっかけに、肘関節部が折れてしまう。まだ成長段階で骨ができあがっていないことから、強い力がかかると折れやすいのが原因。肘の部分に激しい痛みや腫れがあるが、転位が少ない場合、手術ではない保存療法がメインとなる。保存療法中も骨折部がずれたりすることがあるので注意して経過観察を行わなくてはならない。骨折部が大きくずれている場合や、神経や血管を巻き込んでいる恐れがあるような重症な場合は、手術が必要となる。

原因

ほとんどの場合、強い力がかかって肘が反ることが原因。転んだり、転倒したりした際に、肘を伸ばした状態で手をつくことで上腕骨を折ってしまう。さらに、子どもに上腕骨顆上骨折が多いのは、動きが活発でありながらも運動能力が完全に備わっておらず、骨も成長している段階であるため。子どもの上腕骨顆上部は、骨の表面をつくる骨皮質が薄く、骨の断面積が小さいことから、強い力がかかると骨折しやすいことがわかっている。

症状

肘の周囲に激しい痛みや腫れ、骨の変形などがあり、肘を動かすことができなくなる。適切な治療を行わず、骨がずれたままの状態であったり、そのずれが大きかったりすると、後遺症が残ることも。例えば、肘を伸ばした際に内側に曲がる変形(内反肘)や、外側に曲がる変形(外反肘)が残ってしまう。併せて、神経や血管が損傷されている場合、手指がしびれたり動かせなくなったりするほか、血管が傷ついてしまうケースもある。重症の場合は、フォルクマン拘縮(局所的な循環不全により、血液の流れが悪くなり、指が固まって変形してしまうこと)などの合併も起こる。

検査・診断

まずは、「いつ、どのように受傷したのか」、「肘の部分に腫れやあざはあるか」などを詳しく診察。その上で、上腕骨顆上骨折が疑われる場合は、エックス線検査を実施。骨折している部分や損傷の程度などを確認していく。骨折の部分が大きい場合は診断も難しくないが、子どもで軽症の場合、橈骨頭が脱臼してしまう「肘内障」や肘関節の違う部位の骨折である「上腕骨外顆骨折」などとの見分けがつかないことも。痛みや腫れの具合なども確認した上で、必要に応じて超音波(エコー)検査も行い、総合的に診断していく。

治療

骨折部のずれが少ない場合は、手術にはならない。ギプスやシーネなどを用いて、手首から腕までを数週間~1ヵ月ほど固定する「保存療法」を行っていく。ただし、ずれや変形が大きい場合は、手術を行うこともある。具体的には、皮膚の上から鋼線を刺して骨を固定する手術や、皮膚を切開して骨のずれを戻し、鋼線を刺して骨を固定する手術などを行うことになる。また、腫れがひどくて治らない場合は、入院するケースも。神経や血管が損傷され、血液の流れが悪くなっている場合などは、前腕や手の壊死などを防ぐために、早急に手術を行うことが重要。

予防/治療後の注意

上腕骨顆上骨折になる原因の90%以上が、転倒や転落といわれている。子どもは活発でありながらも、運動機能がまだ発達段階であるため、日頃から転倒・転落しないように気を配っていくことが大切。また、内反肘や外反肘などの後遺症を残さないためにも、適切な治療を完治するまで続けること。

村山医療センター 手外科部門長 加藤 直樹 先生

こちらの記事の監修医師

村山医療センター

手外科部門長 加藤 直樹 先生

1994年防衛医科大学校卒業後、同大学校病院整形外科に入局し、手外科を専攻する。英国留学、防衛医科大学校整形外科講師、埼玉医科大学整形外科講師、埼玉手外科研究所副所長を経て、2018年から現職。手外科治療の豊富な診療と研究経験から、手・肘の外傷、手指の機能再建、末梢神経損傷・障害の治療を得意とする。日本整形外科学会整形外科専門医。