こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
じょうがくどうがん上顎洞がん
最終更新日:2022/01/06
概要
上顎洞とは、頬の骨の裏側にあり、鼻の左右にある空洞のこと。副鼻腔の一つで、ここの粘膜から発生する悪性腫瘍(がん)を「上顎洞がん」と呼ぶ。副鼻腔がんの中では最も発生頻度が高いが、がん全体で見るとまれな病気。副鼻腔炎を患っている人の発症が多いことから、近年は副鼻腔炎の減少とともに上顎洞がんの発生数も減ってきている。初期の段階では自覚症状はあまりなく、がんが進行した状態で発覚することがほとんど。症状が進行すると、鼻詰まりや鼻腔の圧迫感、鼻血、膿のような鼻汁などが現れてくる。なお、頸部リンパ節へ転移することはほとんどない。
原因
まず、副鼻腔の粘膜に炎症が起こる「副鼻腔炎」との関連がわかっている。副鼻腔炎により、上顎洞に膿がたまった状態が続くことなどから、上顎洞がんの発生リスクが高まることに。また、タバコの煙には数多くの発がん性物質が含まれているため、喫煙習慣がある人も要注意である。
症状
初期の段階では自覚症状がほとんどないため、病気に気がつかないことも多い。中には、「鼻が詰まる」、「鼻水に血や膿が混じる」など、副鼻腔炎と似た症状を感じる人も。がんが進行して大きくなるにつれて、鼻腔などを圧迫し始めるため、症状が現れるようになる。しかし、その症状はがんが進行した部位によって異なるのが特徴。例えば、がんが目のほうへ広がると、眼球の腫れや異常が見られるように。ものが二重に見える複視や視力低下が始まったり、目やにが出やすくなったりする。重症の場合は、眼球周辺の骨が破壊され、眼球が飛び出して見えたり、眼球の位置がずれたりすることも。また、がんが口のほうへ広がると、歯茎の腫れや歯の痛み、頬のほうへ広がると、顔面の腫れや痛みが出てくる。
検査・診断
問診後、ファイバースコープなど専用の検査器具を用いて、鼻腔内や上顎にがんがあるかどうかを確認。初期の段階でのCT検査は本疾患の診断に極めて有効である。基本的に、がんが進行してから自覚症状が出るケースがほとんどのため、この段階でがんが疑われることも多い。また、顔の腫れや痛みがある場合、触診にて「頬を押したら痛いか」、「骨が欠けていないか」、「歯茎や上顎がどのように腫れているか」などをチェック。がんを確定するために、腫瘍の一部を採取して、がん細胞があるかどうかを顕微鏡で確認する病理検査も行う。さらに、がんの進行度や大きさ、リンパ節やほかの臓器への転移の有無などを確認するため、CT検査やMRI検査、PETスキャン(陽電子放射断層撮影)などの画像検査も進める。なお、頸部リンパ節への転移が疑われる場合は、詳細を確認するために超音波(エコー)検査も行っていく。
治療
一般的に、がんはその周辺も含めた切除手術を行うのが基本。とはいえ、上顎洞の周りには目や鼻、口といった重要な器官がたくさんあるため、上顎洞がんの場合はすべてを切除することができないケースも珍しくない。周囲の器官の機能面の低下・喪失を最小限にとどめるために、手術と放射線治療、抗がん剤治療の3種類を組み合わせた治療を行うことになる。また、顔面の手術になるため、美容面で後遺症が残ることも。上顎の骨や顔面の皮膚を切除した場合、その部分を再建・移植する手術も併せて行う。
予防/治療後の注意
副鼻腔炎との関連性がわかっているため、慢性化しないように適切な治療を受けること。喫煙習慣がある人やその家族も注意が必要。禁煙が予防につながる。また、がんは再発の危険性がある病気。治療後も経過を観察するために、定期的に診察・検査を受けること。なお、がんの発生した部位により、手術後に「嚥下や咀嚼の機能が障害される」、「眼球が飛び出して見える」といった後遺症が残ることがある。
こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
2006年杏林大学卒業。同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科や佼成病院を経て、2020年に開業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。専門分野は耳鼻咽喉科一般。
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