
こちらの記事の監修医師
昭和病院企業団 公立昭和病院
上西 紀夫 院長
しょくどうれっこうへるにあ食道裂孔ヘルニア
最終更新日:2022/04/25
概要
食道裂孔(れっこう)とは、横隔膜にある食道が通る穴。横隔膜は胸部(肺や心臓など)と腹部(胃や腸など)の境目となる筋肉で、食道裂孔から胃が飛び出し、横隔膜の上部にいってしまうことを「食道裂孔ヘルニア」という。大きく3つに分類され、胃と食道の接続部がそのまま上に出てくる「滑脱型」が最も多い。そのほか、胃の一部が横隔膜の上に出てくる「傍食道型」や、接続部が上に上がりつつ、胃の一部も出てくる「混合型」がある。高齢者や肥満体型の人、妊婦や経産婦(出産経験のある女性)などに多く見られる病気。生まれつき食道裂孔ヘルニアを起こしやすいケースもある。
原因
横隔膜の食道裂孔において、食道の固定が緩んでしまうことが原因。ほとんどの場合、腹部の圧力が高くなり、胃が押し上げられてしまうことで固定が緩むといわれている。そのため、食道裂孔ヘルニアは、胃に内臓脂肪がたくさんついている肥満体型の人をはじめ、妊婦や経産婦などに多い。また、腹部の圧力は喫煙や腹水、気管支喘息などによっても上がるため、身に覚えのある人は注意が必要。そのほか、生まれつき食道裂孔が広がりがちで食道裂孔ヘルニアを起こしやすい人も。加齢に伴い、横隔膜の締め付けが緩くなり、食道裂孔が広がってしまう人もいる。
症状
「胃から酸っぱいものや苦いものが口や喉に上がってくる」、「胸が焼けつくように痛い」、「げっぷや吐き気を催す回数が増えた」など、自覚症状が出てくるのが特徴。これは食道裂孔から突出してきた胃の一部に胃酸がたまることで、逆流性食道炎の症状が現れるからだとされている。また、上部に出てきた胃が心臓や肺などを圧迫し、息切れや動悸などの症状が出てくることも。そのほか、最悪の場合、胃がねじれてしまい、「食事中に頻繁にむせて、うまく飲み込めない」などといった嚥下障害が起きたり、血流が悪化して生命の危険が出てきたりする可能性もある。
検査・診断
エックス線検査やCT検査、上部内視鏡検査、上部消化管造影検査(胃バリウム検査)などを通して、食道や胃の状態をチェックし、食道裂孔ヘルニアの診断をしていく。例えば、上部内視鏡検査では、口や鼻から内視鏡(胃カメラ)を挿入し、食道裂孔の緩みなどを直接確認していくほか、逆流性食道炎や食道がん、胃がんなどの有無も確認する。上部消化管造影検査では、バリウムを飲み、飲食物が食道から胃を通過する際の状況を検査。この際に仰向けになることで、胃から食道にバリウムが逆流していないかのチェックも行い、逆流性食道炎の診断をつけていく。
治療
まずは、生活習慣の改善が基本となる。肥満を解消するため食事方法の改善を図っていくほか、「食後はすぐ横にならない」、「適度な運動をする」、「ベルトなどでおなかを締め付けない」など、生活習慣を改善するためのアドバイスも行う。「食事の度に胸やけがする」、「げっぷが多い」など、逆流性食道炎の症状に悩んでいる人には、胃酸の分泌を抑えるための薬などを処方することも。妊娠中の人は、おなかに圧力がかからないように心がけることも大切。なお、これらの治療で改善が見られなかったり、ヘルニアが大きかったりする場合は、手術を実施。胃から出たヘルニアを正しい位置に戻し、締めつけが緩くなってしまった横隔膜を締め治すための処置を行う。おなかに小さな穴を開ける腹腔鏡を用いた手術となるため、体への負担は少ないのが特徴。
予防/治療後の注意
食道裂孔ヘルニアに伴う逆流性食道炎の症状を放置していると、食道に潰瘍ができたり、食道がんへ進行したりすることも。気になる症状がある場合は、早めに医療機関で受診すること。早期発見・早期治療を心がけることが重要となる。また、薬物療法によって胸やけや吐き気などの症状が改善したとしても、ヘルニアがある限りは再発しやすく、長期にわたり薬の服用が必要になるケースがほとんど。そのため、医師の指示に従い、薬を飲み続けなければいけない。日頃から食事や生活習慣の改善も図っていくことが大切となる。

こちらの記事の監修医師
上西 紀夫 院長
1974年東京大学医学部卒業後、東京大学医学部第三外科学教室に入局。1977年から2008年まで東京大学医学系研究科消化管外科分野の教授を務める。2008年公立昭和病院院長に就任。2009年から2013年まで日本消化器内視鏡学会理事長を務める。専門は胃がん、食道がんの診断と治療、消化器がん発生機序の解明、消化管疾患の病態生理、消化器内視鏡、外科侵襲。東京大学名誉教授、医学博士。
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