インプラントを長期に保つため
歯周病治療とメンテナンスを

検診・治療前の素朴な疑問を聞きました！

Qインプラント治療の前に歯周病を治す必要があると聞きました。

A

インプラントは、虫歯にはなりませんが、歯周病にはなります。インプラントが歯周病に罹患している状態を“インプラント周囲炎”といいます。一般的に、埋入されたインプラントの約20%がインプラント周囲炎に罹患するといわれ、その原因はさまざまです。例えば、喫煙歴があること、ブラッシング不良、定期的メンテナンスの欠如などが挙げられますが、歯周病の既往もその原因の一つです。歯周病の方はそうでない方 と比べ、インプラント周囲炎を発症するリスクが3～4倍あると報告されています。従って、患者さんに長期にわたって健康なインプラントを維持していただくために、インプラント治療前に歯周病治療を完了する必要があるのです。

Qインプラント治療のメリットを教えてください。

A

歯の欠損治療において、両隣の歯を削るブリッジや、ほかの歯に支えを求める入れ歯と大きく違うところは、欠損した部分のみの治療で完結できることです。インプラントでしっかりとした噛み合わせを再構築できれば、残っている歯を支えられます。つまり周囲の歯への負担を減らし、なおかつ他の歯に影響を及ぼさないという点において、インプラント治療には大きなメリットがあるといえるでしょう。ただし、長期間骨粗しょう症の治療を受けている方など、一部の方はインプラント治療が難しいのでご注意ください。一方、歯周病によって顎の骨がない など条件が悪い場合は、顎骨再生のための処置を行うことで治療可能となりますのでご安心ください。

Q長持ちさせるためにはメンテナンスが重要なのですね。

A

インプラントは、天然歯のように噛めて審美性も高いですが、歯が入って終了というわけではありません。長く維持させるために最も重要なのは、治療後の“定期メンテナンス”なのです。メンテナンスを怠ると、“インプラント周囲炎”を発症しやすくなります。インプラント周囲炎は、痛みなく進行することで、気づかないうちにポケットも深くなり、最終的にインプラントが脱落するといった歯周病と同様の経過をたどることがわかっています。また、自分では丁寧に歯を磨いているつもりでも、必ず磨き残しは存在します。インプラントを健康に維持するため、そして何より残った自分の歯を守るために、3～6ヵ月に1回の定期メンテナンスが必要です。

検診・治療START！ステップで紹介します

1診査診断、治療計画

インプラント治療の入り口であり、最も重要な段階ともいえる診査診断からスタート。ここでは、さらなる歯の喪失を防ぎ、残った歯を守るため、歯周病や虫歯、破折など、歯を失った原因を明らかにしていく。その後、全身状態の確認やCT検査などを受け、治療計画へ。治療の方法など、もし希望があればこのタイミングで歯科医師に伝えよう。

2歯周病や虫歯の治療、顎の骨の再生治療などの術前準備

口腔内の細菌感染リスクを排除するため、術前に歯周病や虫歯の治療を受ける。もし診査の段階で、土台となるインプラント埋入部位の骨の厚みや幅が不十分な場合は、顎の骨の再生治療が必要となることも。骨が成熟するまでに必要な期間は、およそ半年間。その間も口腔内を清潔に保つ必要があるため、定期的なクリーニングや骨の状態のチェックを行う。

3インプラント埋入手術

手術当日は、歯周病や虫歯の原因となる細菌を取り除くため、約1時間ほど歯や歯茎、舌、頬の粘膜のクリーニングを受ける。その後、事前に立てた治療計画に沿って、顎の骨にインプラント体を入れていく。埋入したインプラントが骨に結合し、安定したら次のステップへ。

4型採り、仮歯の装着と補綴物の作製

口腔内スキャナーなどを使って型採りを行い、インプラントに取りつける仮歯を作製する。仮歯を装着し、実際に使いながら、噛み合わせや見た目に違和感がないか、セルフケアができるか、長期的に維持できるかなどを確認していく。満足のいく形態が決まったら、最終的な補綴物を作製し装着する。

5セルフケアの確認と定期メンテナンス

インプラントを長期的に維持していくために大切なのが、セルフケア。インプラント部位のプラークを確実に除去できるよう、歯科衛生士からセルフケアの方法について指導を受ける。その後は、インプラントと自身の歯を守るために、3～6ヵ月に1回、定期メンテナンスを受ける。メンテナンスでは、天然歯と同様に歯石取りやバイオフィルムの除去を行うとともに、インプラント周囲炎の有無をチェックしていく。