井口 隆人 院長の独自取材記事
大坪歯科・矯正歯科医院
(宇都宮市/宇都宮駅)
最終更新日:2024/11/28
「大坪歯科・矯正歯科」井口隆人院長は宇都宮市出身。東京医科歯科大学病院や東京大学医学部附属病院で、矯正歯科や唇顎口蓋裂など顎や口腔の先天異常の診療に多く携わってきた歯科医師だ。栃木県には先天異常に対応する医療施設が少ないことから、地元で開業したいと考えてきたという。そして義父にあたる大坪正則前院長から承継し、同院の院長となった。重い障害や深い悩みを持つ子どもや保護者と向き合ってきた経験から、一人ひとりの患者や家族の思いや希望に寄り添う真摯な診療姿勢が印象的だ。地方にあっても、大学病院などと連携した先進の矯正治療や、新しい知見を取り入れた良質な歯科診療を提供したいと、地域への啓発や発信にも力を入れる。そんな隆人院長に、診療の特徴や患者に対する思い、めざす在り方などを聞いた。
(取材日2024年10月15日)
専門的な歯科治療を身近に提供するために地元で開業
こちらは歴史のある歯科医院とのことですね。
50年以上前に妻である井口麻里先生の祖母が開院して、義父の大坪正則前院長が長らく診療を行ってきた歯科医院です。2018年から私もこちらで診療を行うようになり、2022年にリニューアルして私が院長を引き継ぎました。小さいお子さん連れから高齢の方まで幅広い年代の患者さん、私の専門である先天異常の患者さんも来られますから、リニューアルの際には、車いすやベビーカーでも移動しやすいことを重視しました。また、栃木県は落雷による停電が多いので太陽光による蓄電池を備えています。また感染症対策として24時間全館換気システムを導入していますし、精密な治療のために口腔内スキャナーや顎機能検査機器なども整備しています。
では、院長に就任されるまでの経緯を教えてください。
私は宇都宮市出身で、兄が東京医科歯科大学歯学部に進学したことから、後を追うように同じ道を進みました。矯正分野に進んだのは、悪くなったところを治療するのではなく、現状をより良くしていくための前向きな医療であること、また、診療を受けた患者さんが笑顔になられる頻度が高いことに惹かれたからです。矯正の基礎となる部分を学んだ後、東京大学医学部附属病院に移り唇顎口蓋裂をはじめさまざまな顎や口腔の先天異常の診療にも携わってきました。栃木県内からわざわざ通院される患者さんもいらしたので、ゆくゆくは地元で専門的な診療を提供したいという思いがあり、2018年にこちらに戻ってきました。矯正だけでなく、一人の患者さんの歯科医療全体を見渡せるようになりたいという思いもあったので、当院で大坪先生から一般歯科診療を学びました。
こちらの診療面にはどのような特徴があるのでしょうか。
一般歯科、矯正歯科と幅広く対応し、私の手がけてきた先天異常に対する保険適応の矯正治療にも対応しています。矯正歯科では、外側矯正、裏側矯正、マウスピース型装置を用いた矯正など幅広く対応することができ、症状などに合わせて向き不向きをお示した上で、患者さんの希望もお聞きして適切なものを選択しています。小児矯正については、できるだけ大人になってから矯正をしなくて済むように、将来を見据えた矯正を行っています。今、見えているものだけではなく、成長とともに問題が出てきそうな部分もしっかりケアできるように心がけています。矯正中に虫歯ができた際には、すぐに治療が行えるのも特徴です。予防歯科にも力を入れ、ご自宅で適切なセルフケアをしていただくために、歯ブラシでクリーニングを行い、どこをどう磨くかを具体的に指導して、その歯ブラシをそのまま持ち帰っていただいています。
顎や口腔の先天異常に対する専門的な診療経験を生かす
診療の際、どのようなことを大切にされていますか。
昔からずっと通われている患者さんや、愛着を持って来てくださる方も多い歯科医院ですから、大坪先生やスタッフたちが育んできた患者さんとの信頼関係や温かい雰囲気を私たちも引き継いでいきたいと思っています。診療に関しては、まず患者さんのお悩みや、何を治療したいのかをよくお聞きして、それに対して医学的なエビデンスに基づいた情報を提供した上で、方針を選択していただくことを重視しています。また、歯科医師だけが治療を行うのではなく、受付スタッフや歯科衛生士とのチームで患者さんと向き合っていくべきだと考えていますので、スタッフにもその思いを共有しつつ患者さんに接してほしいと伝えています。
先天異常に対する診療を手がけてきたことでの、学びや影響はありますか。
それは大きいですね。顎や口腔の先天異常には非常に多くの病気や障害があり、患者さんごとに症状が異なりますから、学びは大きかったと感じています。また、先天異常の場合、お子さんやご両親がとても悩まれていることが多いので、気持ちの面もできるだけケアすることも心がけてきました。大学病院では、今まで診断されていなかった方への告知に葛藤したこともあります。遺伝性疾患が原因だったので、お子さんに遺伝するかもしれないと言わなければならなかったのです。一方で、保険が適応される症状でも「これは自分の個性だから」と治療を希望されない方もいらっしゃいました。一般の矯正にもいえることですが、すべてを平均値に合わせるのは、必ずしも正しいことではなく、その方に合わせたゴールを探すことが大切だと学びました。またさまざまな分野と連携したチーム医療を重視するのも大学病院での経験が影響していると思います。
今も、大学病院などとの連携にも注力されているのですね。
そうです。非常勤医として勤務している自治医科大学附属病院や、勤務医時代の同僚の先生が在籍する都内の大学病院との連携体制を整えています。また、長く大学病院に在籍していましたから、各地に知り合いができ、患者さんが転居された場合にもその地方の専門家をご紹介することができます。栃木県もそうですが、先天異常の患者さんを診ることのできる医療施設は全国的にも少ないので、こうしたつながりをつくっていくことはとても大切だと思っています。
歯科治療や多様な選択肢について積極的に発信を
専門的な立場から、気になることなどはありますか。
新型コロナウイルス感染症の流行が長引き、マスクの中で口が開いている人、口呼吸になっている人が多いことが気になります。特に子どもの歯並びは口周りの癖の影響が大きいので注意が必要です。また、ストレス社会のせいか、知覚過敏を訴える人が多い印象がありますね。知覚過敏に関しては、歯ブラシや歯磨き粉もさまざまな種類がありますので、その選び方などもできるだけ丁寧に説明しています。またフッ素の塗布や、フッ素の含まれた歯磨き粉で虫歯は予防できると過信されている方もいらっしゃいますので、適切な使い方やその意味などの背景までお伝えしていきたいと考えています。治療より、定期的なメンテナンスで虫歯や歯周病の予防につながる環境をつくっていきたいので、個々の患者さんに合わせて、実践しやすいケアを提案したいですね。
今後に向けての展望を聞かせてください。
治療中や治療後も虫歯にならない口腔環境をつくっていくことが重要ですから、お子さんも大人も予防に力を入れていきたいです。そのために衛生分野と治療分野で分けて、歯科衛生士と歯科医師で分担しながら、患者さんを全面的にバックアップする診療をめざしたいと思っています。また、都心に比べて、新しい歯科医療や、歯や口腔の健康について、あまりご存じない方も少なくないので、患者さんや地域の方がいろいろ学ぶことができる環境づくりや、ご自分に合った治療を選べる環境づくりを進めていきたいですね。そのために当院からさまざまな情報を発信していくことが目標です。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
私は、さまざまな矯正や、先天異常に対する保険適応の矯正治療など、大学病院での診療経験を生かし、地元でもあるこの宇都宮市でお役に立ちたいです。歯科医療の分野では、新しい考え方や治療が開発され、治療の選択肢は増えています。将来まで見据えた精密な治療の提供をめざしていますので、興味のある方はぜひご相談ください。また、矯正は期間が長いことですし、特に先天異常の場合は生まれた時から成人するまでずっと治療が必要なこともあり、患者さんや保護者の負担も大きいと思います。当院は、身近な場所で専門的な診療を提供できるように心がけていますので、お悩みの方はぜひご相談いただければと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは外側矯正/88万円~、裏側矯正(片顎)/22万円~、小児矯正/22万円~、マウスピース型装置を用いた矯正/22万円~
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。