総合診療の観点から伝えたい
糖尿病、循環器疾患との向き合い方
医療法人 むた医院
(中間市/東水巻駅)
最終更新日:2024/07/11
- 保険診療
特定の臓器に着目するのではなく、多角的な視点で家族歴や本人の生活背景までも参考にしながら患者と向き合う診療スタイルを総合診療という。急性期疾患、生活習慣病といった慢性疾患の治療や予防、重大な疾患の早期発見までカバーするためには、柔軟な対応力と幅広い見識が必要となる。かかりつけ医の本来の役割は、この総合診療に集約されるといってもいいだろう。そんな総合診療を軸とする「むた医院」の渡辺裕美子院長は「私の診療で力を入れている循環器疾患や糖尿病治療も、この総合診療の考え方をベースにしています」と語る。地域住民の生活と密着に関わりながら医療を提供し続ける渡辺院長に、総合診療を担うかかりつけ医として重視していること、注力する糖尿病や循環器疾患の早期発見や治療、予防のための取り組みについて話を聞いた。
(取材日2024年6月5日)
目次
広い見地と専門性で、幅広い疾患や診療に対応。患者の暮らしや家族との関わりまで考えた総合診療
- Qまず、総合診療とはどのような診療を指すのでしょうか?
-
A
現代の医学が、各科で細かく専門的になりすぎている中で、特定の臓器や疾患に限定することなく、すべての部位、臓器を診ていきながら多角的に診療を行うのが、総合診療です。一人ひとりの患者さんを診る中で、あらゆる病気や原因の可能性を探りながら、網羅的に診断をしていきます。そのため、診療科にとらわれないたくさんの知識が必要になり、日々の勉強が大変ではあるんですけれど、患者さんの総合的な健康にアプローチできる面でやりがいを感じています。より専門的な医療や検査などが必要になったら、専門の先生に橋渡しをするのも大切な役目です。かかりつけ医としての役割をより強化したのが、この総合診療なのではないかと考えています。
- Q循環器領域もお詳しいと伺いましたが、どんな相談が多いですか?
-
A
胸が痛い、動悸がする、息苦しい、体がだるい、体が動きにくいなどの症状でご相談をいただくことが多いですね。こうした訴えに対しては、狭心症や心筋梗塞、不整脈、心肥大や心筋症なども疑いながら、幅広く原因を突き止められるように問診、検査を進めていきます。胃が痛い、体がだるいといった症状が、実は心筋梗塞が原因だったというように、一般的には珍しいケースも数多くあります。ですので、万が一の場合もきちんと大きな病院につなげられるよう、あらゆる可能性を考えて診療することを心がけています。また診療では、今後再発しないための注意点なども意識してお話をするようにしています。
- Qご相談の多い糖尿病の診療で大切にされていることはありますか?
-
A
もともと循環器を専門的に診ている際に、心筋梗塞を起こさないために必要なこととして、糖尿病にならないこと、コントロールすることを深く学びました。糖尿病はさまざまな病気との因果関係、関係性がありますので、総合的な健康をめざすために重要なポイントとなります。太っている人のほうが糖尿病になりやすいイメージがあると思いますが、細身でも遺伝や体質の問題で糖尿病になる方がいらっしゃいます。そして、ご高齢の方であれば低血糖を起こさないよう配慮するなど、患者さんごとに治療の方針や、めざすゴールも変わってきます。糖尿病の治療では、一人ひとりの状態に合わせて治療を提供することを大事にしています。
- Q患者さんだけでなく、ご家族との関わりも大切にしているとか。
-
A
診療を行う上での重要なこととして「病には背景があることが多い」と思います。これは病気になる背景という意味だけでなく、治療への姿勢や考え方といった背景も含んでいます。例えば、定期的に来られる患者さんの中でお薬がいっぱい余ってしまう方がいたとします。そのような場合は、ご家族からもお話を伺うことが重要です。そうして原因を突き詰めていくと、実は認知症が少し始まっていて、お薬を飲むタイミングを忘れていたことがわかったりするんですね。また私たちは、患者さんだけでなく患者さんを支えるご家族の健康にも目を配ります。ご家族みんなが健康で最適な選択を取れるようサポートするのも、かかりつけ医の役目だと考えています。
- Q予防医療という考え方も大事にされていると伺いました。
-
A
健診で問題を指摘されたのをきっかけに来院される方も多いのですが、そのほとんどは食事や運動など生活習慣の見直しで改善が期待できる方だと考えています。そして繰り返しになりますが、患者さんは皆それぞれ背景が大きく異なるので、個々に合わせた目標、治療法を提示します。一概にコレステロール、血圧、血糖値といってもライフスタイルによって対処方法は異なります。だからこそ、自覚症状がなくても定期的に通院し、経過観察を続けていただくようお願いします。生活習慣病は心筋梗塞や重度の糖尿病など命に関わる病気につながる恐れもありますので、丁寧に説明しながら通院のモチベーションを高めてもらえるよう取り組んでいます。