桑原 浩徳 院長の独自取材記事
くわはらこどもクリニック
(福岡市西区/下山門駅)
最終更新日:2025/07/15

JR筑肥線の下山門駅から徒歩約7分の場所にある「くわはらこどもクリニック」。大学の先輩である高崎好生医師が48年にわたって営んできた「高崎小児科医院」を桑原浩徳院長が継承し、2025年4月に新規開業した。前院長の診療への姿勢を引き継ぎながら、「子どもの健康は家族の幸せそのもの」というモットーを掲げ、地域に根差した安心感のあるクリニックをめざしている。2児の父でもある自身の経験からも共働き世帯に寄り添っていきたいと、診療時間や院内に併設した病児デイケアの時間を延長、ウェブ予約システムなどを新たに導入した。気軽に相談できる場所になりたいと力を込める桑原院長に、引き継いだ経緯やこれからの展望を聞いた。
(取材日2025年6月6日)
丁寧な診察と説明で、地域の頼れるクリニックに
医師をめざしたきっかけをお聞かせください。

幼い頃から人の役に立つ仕事に就きたいと思っていて、一番身近にいたのが小児科の医師であった父でした。診察の様子をのぞいたことがあるのですが、家では無口な父が、優しく子どもに接していたのを印象深く覚えています。大きくなってからも父の所に来る患者さんもいて、「先生と話して元気になった」と言われている姿に憧れ、小児科医になりたいという気持ちが強くなっていきました。卒業後は大学病院で救急医療や離島医療、新生児医療などさまざまな経験を積んできましたが、子どもとふれあいながら成長を見守っていけるような小児科を開業したいという思いが募って。将来を考えている時に大学の先輩のつてで、地域の患者さんに親しまれている前院長の高崎好生先生を紹介してもらいました。
どのような経緯で引き継いだのですか?
高崎先生の、子どもだけでなく親御さんのことも考えている姿勢に共感しました。診察する様子を見せていただいた時に、気軽に困った人の相談に乗っている姿を見て、僕もこういう先生になりたいと思ったんです。高崎先生のもとで学びたいと考え、非常勤医師や副院長として一緒に働かせてもらい、この春から引き継ぎました。正直、48年も親しまれていた医院を引き継いだプレッシャーはあります。実際に親子3世代で通ってくれている患者さんや、中学生や高校生になっても通い続けてくれる患者さんもいます。当面の目標は高崎先生が築いてきた歴史に泥を塗らないことですね。その上で、僕が勉強してきた医療を取り入れていき、地域で頼りになる存在でありたいと考えています。
診療するときの心がけや大切にしていることはありますか?

モットーは、「子どもの健康は家族の幸せそのもの」です。患者さんは乳幼児が一番多く、発熱をはじめ、アトピー性皮膚炎などの皮膚の悩み、便秘、アレルギー疾患、夜尿症などさまざまな悩みを抱えています。熱が高くても顔色が良くて活気があれば取りあえず様子見で良いですが、37度台の熱でも顔色が悪くてぐったりしていたら、しっかりと診察をする必要があります。受診をして良かったと患者さんに思ってもらえるように、丁寧な説明を心がけていますね。まず家で子どもを見るのはお父さん・お母さんなので、「こういった症状なので、あとこのくらいで良くなる見通しですよ」「こういった薬を処方したので薬が効いてきたら症状が治まることが望めるはず。もし治まらなければ〇日後に来てください」と、家で過ごす心構えを持ってもらうように具体的に伝えています。患者さんが求める診察、説明を丁寧にしていきたいですね。
共働き世帯に寄り添った診療時間延長とシステムの導入
子どもの元気がないと不安になる親御さんが多いと思います。受診の目安はあるのでしょうか?

お母さんやお父さんが心配になった、おかしいなと思った時が受診のタイミングです。特に乳児でしたら「鼻の奥でズコズコ音がしている」「目やにがすごく多い」「病気かと思うほどずっと泣いている」など、些細なことまで気になると思います。僕も2児の父なので、医師としてみたら異常はないけど、親御さんからしたら心配になるという気持ちがわかります。そういった自分の経験も踏まえてアドバイスができるので、気になったことがあれば足を運んでほしいです。悩んできた患者さんとその家族の心が少しでも軽くなって、帰ってもらいたいと思っています。前医院から引き継いだものですが、中庭には滑り台などを設置したプレールームがあってお子さんたちは喜んでくれます。待合室も広く、感染症対策として、発熱しているお子さんのための待合室も用意しているので安心して来院してください。
良い部分を引き継ぎつつ、新たに取り入れたことはどんなことですか?
共働き世帯が増えているので待ち時間を減らして受診しやすくするため、インターネット予約システムやウェブ問診ができるようにしました。ただ、急な高熱で緊急の場合などは、電話で話が聞けたり、直接の来院したりするほうが良いこともあるので、さまざまなニーズに合わせて対応するようにしています。また、予約と同時にカルテの電子化も進めました。「困った人が気軽に相談できる所」という基本コンセプトは守りつつ、医療の進化や変化する時代のニーズに、対応していきたいと思っています。診療時間についても、これまでは17時まででしたが、仕事をしていて夕方まで忙しいお母さん、お父さんが増えているので、17時40分最終受付の18時までに延長しています。
院内にある病児デイケアも引き継ぎ、預けられる時間を早めたそうですね。

「子どもが急に熱を出してしまったけれど、どうしても仕事が休めない」といった家庭のために、前院長が子どもを1日預かる「病児デイケアルームおもちゃばこ」を開設しました。共働き世帯が増えているので需要が高く、常勤の保育士さんが2人います。病気ごとに分けて預かれるように保育室も3部屋準備しています。インフルエンザが流行している時期などは、パートの保育士さんにも応援に来てもらう体制で、最大15人まで預かることができるようにしています。朝7時半から受付が始まり、検査をして親御さんから話を聞いて預かるシステムです。以前は8時半からの検査でしたが、8時10分からに検査時間を早めました。どうしても仕事に行かなければならない親御さんのサポートにつなげています。
従来の安心感を守りながら、新しさも提供
今後の展望や目標を教えてください。

高崎先生が築いてきたクリニックの温かさや安心感は今後も守りながら、常に新しい知識や医療を取り入れて還元していきたいと考えています。例えば、悩んでいるお子さんが多い、アトピー、花粉症やアレルギー性鼻炎による鼻詰まり、頭痛などは、年々新しい治療が増えていますからね。スギ花粉やダニアレルギーに対して、原因の根本にアプローチする「舌下免疫療法」は導入していきたい治療の一つです。新しい治療や薬に関しても、エビデンス、つまり「医学的根拠」を大切にし、治療の選択肢を増やすことができればと思います。院内に関しては、予防接種で来院するお子さんも多いので、接種後の待ち時間を楽しく過ごせる赤ちゃんスペースを用意したり、新型コロナウイルス感染症の流行で撤去していた待合室の本や絵本を増やしたりしていきたいと思っています。
開業して忙しいと思いますが、リフレッシュ方法はありますか。
最近はスポーツジムに入会して、運動するように心がけています。仕事で頭が疲れるので、体も疲れるとちょうどバランスが良くなる気がしています。おいしい物を食べることも、お酒も飲むことも好きなので、ジムに通う意味がなくなってしまう時もあるかもしれません。休日は子どもが行きたい所に一緒に行くことが多く、大きい公園で遊んだり温泉に入ったりして過ごしていますね。妻には、子どもを連れて病院に通うお母さん目線でそのクリニックの良かったところなどをアドバイスしてもらっています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

僕自身、スキンヘッドで声が低いせいなのか、見た目から怖い人と思われることがよくあります。医療従事者と見られることが少ないだけでなく、話してみると印象が変わるようで、飲食関係の人と間違われることもありますね(笑)。最初はそう思われることに納得いかなかったのですが、話しやすいという意味もあると思うので、何かあれば相談してみようかなと思える存在でありたいですね。一人ひとりの困ったことやニーズに応え、子どもたちの健康やその家族の育児の悩みをできる限り解決していきたいと思っているので、気になることがあれば気軽に相談しに来てください。