心不全から命を守るために
早期の医療介入と適した管理を
島松循環器内科クリニック
(福岡市中央区/六本松駅)
最終更新日:2025/06/24


- 保険診療
生活習慣病で薬を飲んでいる人はたくさんいるが、動脈硬化が進むと、その先には心不全や心筋梗塞という重い病気が待っている。全身に血液が回らなくなることで、全身の臓器に何らかの影響も出るため注意が必要だ。「島松循環器内科クリニック」の下園弘達(しもぞの・こうたつ)院長は、総合病院の高度救急救命センターや循環器内科で急性期の心不全や慢心不全に携わってきた心不全の専門家。「救急車で運ばれ、体外式模型人工肺を使って何とか心臓を維持させるような症例もありました」と心不全の怖い側面を話す。その一方で、そういった最悪の状態にならないよう、日々の自己管理と治療の継続で一般の人と変わらない生活が送ることが期待できるとも話す。心不全の注意すべき点や自己管理について話を聞いた。
(取材日2025年2月26日)
目次
心不全は、適切な治療と正しい生活習慣、日々のセルフチェックで、悪化を防ぎ、健康寿命の維持をめざす
- Q循環器系の疾患について教えてください。
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A
▲健康診断を積極的に受けてほしいと語る院長
心臓から全身へと血管を通して酸素が送られます。この循環に問題があるものを循環器疾患と呼びます。血管の抵抗や血液量が多くなることで血液が循環しにくくなる「高血圧」、動脈硬化を引き起こし末梢循環が悪くなる「糖尿病」や「コレステロール異常」なども循環器疾患の一つと言えるでしょう。生活習慣病による動脈硬化から、狭心症、心筋梗塞、不整脈、弁膜症などが引き起こされ、心不全まで至ることが知られています。自覚症状がない高血圧、糖尿病、コレステロール異常は、健康診断で初めて指摘され受診につながることが多いです。健診がセーフティーネットになっていますので、放置しないようにしましょう。
- Q心不全とはどのような病気なのでしょうか?
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A
▲診察風景。わからないことも丁寧に教えてくれる
心不全は、心臓が体全体に十分な量の血液を回せず、息切れやむくみの症状がある状態のことをいいます。日本循環器学会と日本心不全学会が発表した「心不全とは心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」という一般向けの定義があります。これは患者さんが混乱しないよう説明を統一するための定義ですが、「生命を縮める病気」という一文に衝撃を受ける方も多いでしょう。心不全になっても過度に不安になってほしくないので補足すると、適切な生活・治療を受ければ、十分に健康寿命を延ばすことが望めます。生命を縮める可能性があるからこそ、適切な治療を受けましょう。
- Q心不全と診断された場合にすべきことは何でしょう?
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A
▲心不全になっていく流れを説明しながら治療の選択を行う
食生活や体重を管理して生活習慣を整えることと、体のセルフチェックをして記録することです。セルフチェックの内容は、血圧を毎日、同じ時間に計測することや足のむくみや体重が急激に増えていないかを確認すること。むくみは、脚の脛をグッと押してみて、痕がつくかどうかを確認してください。押した痕がしばらく残る方もいると思いますが、残った痕が前日と比べて変化していないかをチェックします。前日とは明らかに違うむくみであれば、体重も2キロくらい増えていることもあります。これは腎臓に血液が回らなくなった悪化の兆候で、患者さん自身では判断できないようなサインでもあるので、次の受診日を待たずにすぐに受診してください。
- Q今の段階より悪化させないことが大事なのですね。
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A
▲気軽に相談しやすい環境が整っている
患者さんもお薬の治療に頼るだけでなく、食事や運動などの自己管理に努め、些細なことでもかかりつけ医に相談することが重要です。心不全患者が急増すると、大きな病院だけでは対応しきれなくなります。そのため、すでに全国各地で「心不全地域連携パス」といって地域全体で心不全患者を診る「地域チーム医療」が始まっています。これは、来るべき心不全パンデミックに備え、急性期病院、慢性期病院、かかりつけ医間で情報を共有し、連携を円滑にするための体制をつくっていこうというもの。体制を整え、病気とうまく共存できる環境を地域全体でサポートすることが、心不全の進行を最小限に食い止めることにつながると考えています。
- Q普段の生活で予防できることがあれば教えてください。
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A
▲各種検査を受けることが可能
高血圧などの症状を放置しないことですね。心不全発症前はギリギリまで症状がありません。心筋梗塞や狭心症の症状はあっても息切れやむくみといった心不全の症状はないため、「症状がない状態で治療?」と思われがちですが、将来心不全にならないための予防だと思ってください。心不全でいわれている「1日の塩分摂取量を6グラム以下に抑える」というのは、高血圧の段階ですでに指導されていることです。「高血圧の方が塩分を控える」、当たり前のことのようですが、これがすでに心不全の予防になっているわけです。さらに適度な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠など基本的なことに気をつけることが最大の心不全予防方法です。