下園 弘達 院長の独自取材記事
島松循環器内科クリニック
(福岡市中央区/六本松駅)
最終更新日:2022/03/03
ビジネスパーソン、学生、子ども連れの家族や高齢者など、さまざまな人が行き交う福岡市中央区六本松エリアで、2021年4月に開院30年となった「島松循環器内科クリニック」。六本松交差点より徒歩約2分の場所にある同院は「患者さんを自分の家族と思って、今できる最善を尽くす」をクリニック理念に、地域の健康を守ってきた。10月には副院長を務めていた下園弘達(こうたつ)先生が院長に就任。前院長の島松昌由先生とともに、日々、患者に寄り添った診療を行っている。診療は循環器内科が主軸。高血圧、糖尿病といった生活習慣病、弁膜症・不整脈・心筋梗塞・心不全などの心臓病の予防や治療など、多岐にわたるという。今後は訪問診療も開始予定と語る下園院長に、患者との向き合い方や診療スタイルなどについて聞いた。
(取材日2021年10月21日)
開院30年の循環器を専門とするクリニック
10月に院長を就任されたとお聞きしました。
ええ、このクリニックは義理の父である前院長が1991年に開院し、今年4月に30周年を迎えました。そもそものきっかけは義父が福岡市医師会成人病センター(現・福岡大学西新病院)で勤務していた頃に、クリニックの閉院で六本松エリアの地域医療を担う医師がいなくなったと聞き、ならば自分が開院をということで始まったクリニックなんです。今はずいぶんと再開発が進んでいますが、当時はずいぶんとこの辺りの様子も違ったようです。私は久留米大学病院に長く勤めていまして、それと並行して5年ほど前に週1回だけここでの診療も開始。2019年に副院長、そして今年4月から常勤となり10月に院長に就任いたしました。今も前院長が午前中来てくれていますので診療に時間をかけられていますし、医師と患者さん両方にとって良い環境で診療を行うことができていると思います。
診療はどのように分担されているのですか?
循環器内科である前に内科医ですので、2人で内科診療全般を担当します。義父も私も日本循環器学会循環器専門医の資格を持っていますので、診られない循環器疾患はありません。強いて言えば私が心不全を専門としておりましたので、心不全患者さんは私が担当しております。以前勤めていた久留米大学病院では高度救命救急センターにも一般病棟にも勤務しておりました。心不全に関わらず急性期の循環器疾患も多く経験しております。一般病棟では全国でも早い時期から心不全の緩和ケアも行っていました。それこそ救急車で運ばれ体外式膜型人工肺を使って何とか心臓を持たせるような症例から、慢性期の緩和ケアを行う症例まで実に幅広く診ていましたので、その経験は今も存分に生かすことができています。
さまざまな分野がある中で循環器内科を選ばれたのは何かきっかけがあったのですか?
私は鹿児島県の阿久根市という地方の出身なんですね。その地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちと親しくしていたので、その方たちが長生きできるように診療所の医師になりたいなと思ったのが医師をめざしたきっかけだったんです。その後、高血圧や心不全などの患者さんたちを最後までサポートできるようにという思いから循環器を選びました。健康診断で高血圧と指摘されるのが30歳だとすると、そこから60年前後病気と付き合っていくことになりますので、患者さんと長く二人三脚で取り組めると思ったんです。一人の患者さんを長く診ていきたいという想いが循環器内科を選んだ一番の理由です。
「病気を診るのではなく、病人を診る」ことが大事
こちらに来られる患者さんも高齢の方が多いですか?
当院は約4割が75歳以上の方。そのことからも、この辺りは高齢化が進んできているのを実感しますね。そこに再開発によって加わった新たなファミリー層や若い世代など、幅広い方がいらっしゃいます。親御さんと一緒にお子さんの風邪症状を診たり、中高生の来院も。ある一定の年齢を過ぎると、やはり高血圧、糖尿病などの生活習慣病で来られる方が多くなりますね。会社での健康診断の結果で指摘されたのがきっかけの方も多くいらっしゃいます。健診を受ける機会がない方は、国民健康保険に加入されている40~74歳までの方を対象とした特定健診「よかドック」、30歳代の福岡市民を対象とした「よかドック30」をご利用されることをお勧めします。
そのような健診もこちらで受けることが可能なのですね。
はい。その他にも入社される前に行う雇用時健診などに対応しています。健康であることをチェックすることもかかりつけ医の大きな役割と考えています。治療においては「病気を診るのではなく病人を診る」ことが重要なんですね。同じ病気でも治療方法が異なることがあります。やはり全身の状態は違いますし、場合によっては生活環境や倫理観、死生観などが治療方針に関わることがあります。クリニックには幅広い対応力が求められます。もちろん対応できない場合は適した機関におつなげしますし、その判断力も大事。患者さんにとってベストは何かというのを常に考えながら診療を行っています。
生活習慣病だけでも数多くあり、全身に直結するケースも多々あるとお聞きしました。
高血圧というのは生活習慣病でもあり心臓血管病でもあります。そして高コレステロール血症も生活習慣病でありながら将来的には動脈硬化を引き起こす循環器疾患の一つ。まさに全身に悪影響を及ぼす病気です。ですので、生活習慣病予防は一つの疾患だけではなく、多くの疾患を防ぐことにもつながるということをお伝えしたいですね。高血圧にしても血圧を下げることが目的ではなくて、将来心不全や心筋梗塞、脳梗塞などにならないようにするための手段。大病を引き起こさないために血圧をコントロールすることが重要なのです。
医師として患者が幸せであるための医療の提供を
診療する上で特に心がけていることは何でしょう。
患者さん一人ひとり倫理観、生活環境、死生観が違います。特に私は心不全を専門としていますので、同じ病態、同じ年齢であったとしても患者さんによって何を第一にすべきかというのが異なるんですね。この病気だからこの治療ということをせずに、患者さんの背景、想い、生活すべてを考慮した上で最も適している治療法をご提案する。それが診療を行う上で最も心がけていることです。治療するにも費用がかかります。良い薬を使うためにこれまでの生活ができなくなり、生きるのがつらいということになれば本末転倒。健康を保つというのはその方が幸せであること。そのために医療があるわけで、ガイドラインに沿った治療であっても患者さんが不幸になる治療なら私は他の手段を講じるべきだと思っています。医師の価値観を押しつけることはせず、あくまでも患者さんが幸せであるための医療の提供。ここはぶれずにやっていきたいです。
常に患者さんのことを考え診療されていますが、院長ご自身の時間はありますか?
休日は小学生の娘2人がいますので、子どもたちとの時間が中心です。実は妻も腎臓内科が専門の医師なのですが、今は子育てを中心にしているためセーブしながら勤務しており、週末は家族で過ごすことが多いですね。子育てが落ち着いたら、妻もここで一緒に診療できたらいいなと考えています。前院長もできる限り診療を続けると言ってくれていますので、非常に心強いですね。前院長は地域とのつながりも強く、私は「地域連携」こそが今後の医療を支えると思っています。高齢者が急増すると大きな病院では対応しきれなくなりますから、患者さんの情報をさまざまな機関で共有し連携していくことが不可欠。そこには当院も力を入れて取り組んでいきたいと思っています。
では最後に今後の展望についてお聞かせください。
義父が30年ここで築き上げてきた患者さんとの関係を守っていきたい、そしてその方たちを最後まで診させてもらいたいという想いから、今後は訪問診療も開始する予定です。高齢になり通院できなくなる方も増えてくると思いますし、そこで別の医師にバトンタッチをするのは長い間見守ってきた医師として非常に心残りです。どうしても気になるんですよね。患者さんにも安心していただきたいですから、そのためにさまざまな情報を共有できるように電子カルテの導入、より環境を整えるために院内の改装準備もしています。スタッフも看護師3人、受付2人で勤続年数も長い方ばかりですし、オンライン診療などより患者さんが受診しやすい環境づくりに取り組んでいますので、働き盛りの方や自分のことは後回しになりがちな子育て中の方などは特に健診を受けていただきたいなと思います。