増田 由紀子 院長の独自取材記事
増田内科整形外科医院
(福岡市東区/西鉄香椎駅)
最終更新日:2024/09/10
JR鹿児島本線・香椎駅から徒歩3分という好立地にある「増田整形外科内科医院」は、昭和30年代に開院して以来、地域のかかりつけとして親しまれてきた。祖父の代から続く同院を、20年守ってきた3代目院長の増田義武先生が52歳という若さで急逝。弟の診療にかける熱意を絶やしてはならないと、姉である増田由紀子先生が院長に就任し、バトンをつないだ。「地域の皆さんやスタッフの温かい想いに助けられて前に進むことができた、感謝の気持ちで胸がいっぱい」と、由紀子院長は語る。専門は内科だが、整形外科の医師も迎え、これまで同様に困った時のかかりつけとして、外傷や理学療法なども継続し、幅広い診療で地域に恩返しがしたいとほほ笑む。今後も大事にしたい患者との関わり方や地域に根差した医療。その想いを深く聞くことができた。
(取材日2022年11月25日/情報更新日2024年7月31日)
祖父、父、弟の想いを胸に、地域に根差した医療を
院長に就任されて間もないですが、患者さんに支えられることも多いそうですね。
本当にありがたいことです。ここは祖父が昭和30年代半ばに開院し、その後も父、3代目の弟というふうに、長きにわたり地域のかかりつけとして親しんでいただいているクリニックなんですね。そんな中、弟が急逝し、姉である私が急きょ引き継ぐことになったものですから、地域の皆さんにはずいぶんと支えていただき、前に進むことができました。10年以上前、弟と一緒に私もここで診療を行っていたことがありましたので、温かい言葉をかけてくださる方も多く、皆さんには感謝の言葉しかありません。当時担当していた患者さんが来院された際も、元気な姿で再会できたことに胸がいっぱいになりました。
当時は整形外科を前院長、内科を由紀子院長が担当されていたとお聞きしました。
はい。父が脳出血を起こし、総合病院の外科で勤務していた弟が早々に引き継ぐことになったものですから、私もサポートで一緒に診療していた時期があったんです。父の代では整形外科・外科を父が、内科を母が担当していましたが、領域を線引きせずに診療していましたので、前院長の弟とも同じようなスタイルで診療を行っていました。当院にはご家庭のかかりつけとして来られる方がほとんどでしたから、しっかり専門性を分けるという感じではなく、それこそ擦り傷から風邪、不定愁訴、生活習慣病、更年期の症状、足腰の痛みや打撲に捻挫など、お互いの知識を持ち寄りながら幅広く診させていただいていたんです。そのような経緯もあってか、今回私が引き継ぐことになっても、患者さんは以前と同じように幅広い主訴でいらっしゃるんですね。覚えていてくださったのかなと感激しています。
さまざまな症状の窓口のような役割も果たされているのですね。
それこそが、かかりつけの役割だと思うんです。もちろんすべての疾患を診ることができるわけではありませんので、専門性が必要な場合は適した機関へとおつなぎいたします。困ったときの案内人。そう思っていただくのがわかりやすいかもしれませんね。ですので、当院では内科だから、あるいは整形外科だからといった理由で診療をお断りすることは基本的にありません。研鑽を重ねてきた知識と技術をもって、できること、できないことを判断し、適した医療で患者さんの健康を守る。そういった意味では医師としての原点に立ち返らせてもらった気がします。私以外に整形外科の医師も勤務しておりますので、さらにこれまで同様のスタイルで幅広い診療をご提供できると思います。
東洋医学、西洋医学にとらわれない治療で改善をめざす
大学ご卒業後は内科勤務を経て、心療内科を専門にされていたとお聞きしました。
大学病院の救命救急を担当していた時に、あまりの忙しさから心が壊れてしまったのがきっかけでした。心と体の関係を学びたいと大学病院などの心療内科で勤める中、父が倒れたことからこちらへ戻り弟と診療することに。ただ、ここは弟が引き継ぐことになりましたので、私は現代医療ではなかなか改善しづらい症状に対するさまざまなアプローチ法を学びたいと思い、しばらくして関東へ行ったんです。東洋医学や西洋医学といった各領域にとらわれず、漢方などについても学んでいました。
その漢方についても教えてください。
漢方は前院長も取り入れていた分野で、痛みだけでなく、自律神経の不調によるさまざまな症状や更年期症状、時にはメンタルが関連した症状など適用は幅広いため、私も幅広い症状の改善を試みる手段の一つとして処方しています。例えば、血のめぐりや水のめぐりが関係している冷えやむくみなど病名のわからない身体の不調、そして、体質改善にも漢方は有用な手段です。西洋医学では改善しなかった症状も東洋医学では解決に導けることもありますので治療の選択肢としてなくてはならないものだと感じています。漢方は保険適用の範囲内で対応できますのでお気軽に相談していただけるとうれしいですね。
また、こちらで実施されている湿潤療法というのはどのような治療なのでしょう。
これは、擦り傷や切り傷などを消毒し、乾燥させてかさぶたをつくって治すというこれまでの治療とは違い、傷口を水で洗い流し、傷口から出てくる滲出液を封じ込め、湿った状態で治癒を促していく方法です。市販されている湿潤環境を保つ機能のあるばんそうこうを使用されたことがある方も多いのではないのでしょうか。当院でもお子さんの擦り傷や、やけどなどは特にこの湿潤療法で改善をめざすことが多々あります。ご自宅でもワセリンを使って処置することができるため、ケア方法をお伝えすることも。これまでの一般的な傷の治療に比べて痛みが少なく、傷痕が残りにくいともいわれています。
来院すると元気になれるようなクリニックをめざして
できるだけ体に負担の少ない治療法で改善をめざすことを大事にされているのですね。
医師である私の根底にあるのは、体に優しい治療、つまり本来人間に備わっている自然治癒力を最大限に生かせる治療をめざしたいという想い。それは、0歳児からご高齢の方まで、当院に来院される幅広い年齢の方すべてに対してです。現代医療で解明されていないことはまだたくさんあります。その一方で、数十年前はあり得ないといわれていたことが、今では当たり前になっていることも。そう考えると、固定概念にとらわれずに、あらゆる可能性を模索しなければいけないなって思うんです。症状に適していると思うことは、可能性がある限り積極的に勉強し、西洋医学・東洋医学にとらわれず取り入れていきたいと思っています。
それは院長ご自身がさまざまな経験をされてきたからこそ、たどりついた想いなのでしょうか。
そうですね。心を病んで身動きできなくなる苦しみも体験していますし、同じように苦しんでいる方をどうにかして助けてあげたいと常に思っています。しかし、弟を亡くしたことで、私は本当の意味で命の重さを知らなかったのだと思い知らされました。父の時とは違い、当日の夕方まで元気に診療していましたので、まさに瞬間的な出来事。今までに感じたことのない衝撃でした。これまでお看取りも担当させていただき、ご家族のお気持ちがわかっているつもりでしたが、寄り添えていると思うなんておこがましかったなと。医師の不養生だったのかもしれませんが、医師である弟が誰でもなり得る心疾患で亡くなったことに、病気を甘く見てはいけないと改めて気づかされました。その経験も今後地域の皆さんの命をお守りする上で、生かしていかなければと強く感じています。
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
地域の皆さんから前に進む元気をたくさんいただいた分、これから恩返ししていかなくてはと思っています。めざすのは、来院すると元気になれるようなクリニックにすること。顔を見ただけで元気になれたり、地元に帰ってくると元気をもらえたり、人や場所で元気になれることってありますよね。建物も香椎の区画整理を機に全面リニューアルしていますので、受診いただきやすくなったと思います。今回私が戻ってきたことで、より深く内科の診療ができるようになったため、内科を先に標榜したクリニック名に変更しました。お子さん連れの方はキッズスペースもありますし、スタッフもよくぞ集まってくれたと思うくらいすてきな方ばかりなので、初めての方も安心していらしてください。