神戸 太一 院長の独自取材記事
神戸整形外科医院
(福岡市東区/箱崎駅)
最終更新日:2024/02/14
2023年6月1日に開院50周年を迎えた「神戸整形外科医院」は、いざという時の「駆け込み寺」をめざして、地域医療の中核を担ってきた。神戸太一先生は2012年に院長に就任して以来、数年前に引退した前院長の父とともに地域に密着した医療の提供に努めてきた。同院の大きな特徴は、19床備えた有床診療所であること。整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科に加え、内科・膝・脊椎・肩・形成外科分野を専門とする各医師が診療を行う。約30人におよぶチーム医療の舵を取る神戸院長に自身の歩みと同院の診療内容を中心に語ってもらった。
(取材日2022年12月27日/情報更新日2024年2月6日)
地域医療を担う開院50周年を迎えた有床診療所
こちらは、前院長であるお父さまが開院された医院だとお伺いしました。
はい、父が開院し、2023年6月1日で50周年になりました。私も小さな頃からこの地で育ちましたので、父が診療する姿も見てきました。日々患者さんのために尽くす父に対し、すごいなぁと子どもながらに思っていましたね。私の祖母である父の母が代々続く医者の家系でした。祖母は宮崎県で医業を営み、私の叔父である父の兄、そして父へと医業のバトンは渡されました。祖母は、長年、近隣の老人施設での診療ボランティアに尽力し、叔父もそれを引き継いだと聞いております。父は縁あって当地に1973年に整形外科の19床ある有床診療所を開設し、80歳過ぎまで地域医療に心血を注ぎました。父は、365日24時間、額に青筋を立てて頑張っておりました。盆正月の家族旅行も日帰りできる唐津や二日市がもっぱらでした。そんな中で私が小学生の時に富士山旅行へ連れて行ってもらえたことがかけがえのない思い出です。
実際に臨床に入ると大変なことも多かったのでは?
私は福岡大学医学部を1996年に卒業し、市中病院にて整形外科診療一般を学び、2012年に父の後を継ぎました。実際に臨床現場に立つと、先輩に助けてもらうことばかりで、なかなか追いつけない自分に悔しい思いもしましたが、素晴らしい先生がたくさんおられ、そういった方たちのもとで学べたことはありがたかったです。大学病院では、文献を片手にさまざまな症例を経験させていただきました。救急病院では、救急車がひっきりなしに来て、とにかく多くの患者さんを担当させていただきましたので、度胸がつき、対応力も身につけられたのかなと思います。
高齢の患者さんが多い病院にも勤務されたそうですが、いかがでしたか?
ええ、高齢の方と接する時間が多い分、皆さんの本音というか、内面的なものも学べました。年を重ねると不安なことが増える方も多く、それを間接的に伝えてこられる方が多かったですね。そのような日々を経て、2005年に副院長として当院での勤務を開始し、当時院長だった父と一緒に診療を始めました。父は、日中の診療、夜の書類、当直、加えて医師会から町内行事まで、体を張って働いていました。父の子どもの患者さんへの接し方は、本当に上手になだめながらの名人芸でした。父の記載した患者さんの情報を目にする機会がありますが、びっしりと書き込んである記述を見て感心させられます。
診療は「当たり前のことを当たり前にやる」がモットー
医院の患者層について教えてください。
患者層は幅広く、痛みを訴えて来られる方が多いですね。中でも膝や腰の痛みを訴える方が多いです。診察で注意するのは五感をフルに働かせることです。誰しも症状のすべてを言語化することはできませんし、なにしろ限られた時間の中での診療になりますので、そこは真剣勝負です。それが先ほどの「当たり前のことを当たり前にやる」ことにもつながるのですが、実はこれが一番難しいんですよね。患者さんによって生活背景は大きく異なりますし、病歴も症状もさまざまです。痛みに関しては、お薬・注射・リハビリ・生活調整等も取り入れて改善をめざします。当院は有床診療所ですので、地域の皆さんが困った時に「あそこに行けば何とかなる」と思ってもらえる存在でありたいなとは常々思っています。
病床はさまざまな目的で利用されているのですね。
入院といえば手術を想像される方も多いと思いますが、当院はそこに重きをおいてはいません。例えば、痛みで日常生活が困難な方には入院してもらい、検査や痛みに関するアプローチを行います。検査結果や病状によっては、適した機関をご紹介しますし、症状が安定すれば退院となります。急性期はもちろん、リハビリなどで改善をめざす回復期、再発予防や体力維持などを行う慢性期の方も受け入れています。当院は高齢の患者さんが多く、慢性期から終末期に移行される方もおられるため、その見極めが重要です。どのタイミングで適した機関につなぐべきかを見誤らないようにしなければなりません。そこは一番注力しているところですね。そのほかにも、レスパイトケアや、帰省時の一時利用、病院での入院日数制限を迎えた後のリハビリ目的による利用など、さまざまな目的に対応しています。有床診療所が減少する今、東区の方に限らず、多くの人の力になりたいです。
患者さんと接する上で心がけていることは何でしょうか?
先ほども述べましたがやはり五感をフルに働かせることです。誰しも症状のすべてを言語化することはできませんので、察することが肝要だと思っています。ただ、私以外にも、内科・肩・脊椎・膝・形成外科の各分野の医師が5人来てくれているので、ずいぶんとバックアップしていただいております。来られる曜日や頻度はそれぞれ異なりますが、例えば内科の中野先生には、主に入院患者さんを担当していただいています。特に、高齢の患者さんはいくつも疾患を持っている方が多いです。そんな中、先手を打つようにして容体の急変を未然に防ぐよう尽力してくださっているので、非常に助かっています。他方、先代の父は患者さんに対してさまざまな配慮をしていました。正月を病床で迎える方にはおとそを振る舞ったり、お月見会やお花見会を中庭で催しておりました。そういうところは見習わなければならないですね。
内科・肩・脊椎・膝・形成外科、各専門分野の診療も
内科以外の先生についても教えてください。
膝の佐伯先生は、患者さんの症状を見極め、困っている患者さんがすぐに手術を受けられるよう適した機関につなげることに力を注いでくれています。それは佐伯先生の人望やパイプがあってこそなので、ありがたいですね。肩を専門とする藤澤先生は、手術はもちろんですが、薬やリハビリでのアプローチもきめ細かく活用されています。脊椎に関しては痺れが残るなど完全には改善が難しい分野なのですが、そのような場合でも担当の河岡先生は根気強く患者さんをフォローアップしてくださいます。また、形成外科の西村先生には手術も担当いただいています。陥入爪やガングリオン、脂肪腫の手術など、とにかく経験豊富な先生です。本当に専門性の高い知識と技術を持つ先生ばかりで、心強いです。
神戸院長ご自身が健康に気をつけて取り組んでいることはありますか?
適度な食事運動休養です。平日は6時間睡眠、またカフェインの取りすぎに注意しています。家庭用平行棒・腹筋器具、スポーツ器具を部屋の片隅に置いて運動しています。ブルガリアンスクワットはよくやります。後足を台や椅子の上に置いて、前足で踏ん張って片足スクワットを行うエクササイズのことです。そして、週末は8時間くらいは寝るようにしています。日曜日は診療経営の懸案事項をまとめたり、結局は仕事をしていますね。
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
現在、私は50代半ばにさしかかりましたが、骨粗しょう症など整形外科関連疾患を始めとし、その他の主要臓器の主要疾患などについても少しずつ学び直し、60代を迎えたいです。そして、60代はより一層、老若男女の方々に寄り添った診療を行えるように努めたいと思います。私自身、壮年から熟年へと移行する中で、ご高齢の方々の心情への気づきが少しでも高まることを願っています。誰しも年をとります。そして年齢とともに身体能力は低下していきます。年齢相応に仕事や活動を上手にコントロールしていけるよう、患者さんお一人お一人と向き合いながら擦り合わせて行きたいと思います。また、どなたであろうと健康こそが生活の基盤であることに変わりないと思います。当院では朝と夕方の1日2回「健康運動教室」を行っていますので、ぜひご家族でお気軽にご参加ください。少しでも地域の皆さま方の健康寿命の延伸にお役立ちしたいと願っています。