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井上 統夫 院長の独自取材記事

井上産婦人科クリニック

(北九州市八幡西区/黒崎駅)

最終更新日:2026/06/29

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック main

黒崎駅から徒歩5分、国道3号からもアクセスしやすい場所に位置する「井上産婦人科クリニック」。井上統夫(いのうえ・つねお)院長は、婦人科系の内分泌を専門とし、長崎や北九州の病院に長年勤務し数多くの患者を診療してきた。2022年に先代院長である父から同院を継承した井上院長は、「産婦人科は行きづらいという患者さんのイメージを払拭し、もっと気軽に足を運べるクリニックをめざしたいですね」と、優しい笑顔で話す。月経困難症や月経不順など月経に関する悩みや更年期障害、不育症・不妊症、さらには性別不合(性同一性障害)の相談にも対応し、その守備範囲は広い。終始穏やかな口調で話す井上院長に、同クリニックの歴史や診療内容について聞いた。

(取材日2026年5月21日)

年々減少していく産婦人科クリニックを守りたい

まずはクリニックの歴史を教えてください。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック1

1941年に祖父が開業して以来、場所を少しずつ変えながらこれまで続いているクリニックです。最初は八幡西区藤田で開業し、戦争で建物がなくなった後は八幡西区田町で再度開業。1950年に現在の場所に移り、診療を続けていますから、もう80年以上になりますね。昔からこの地域にあるせいか、当院は親子代々で通われている患者さんも多いんですよ。最近は、10代や20代の若年層の患者さんも増えてきて、月経困難症やPMS(月経前症候群)でお悩みの方が多いですね。現在は、お産は扱っておらず、女性の健康サポートをメインに診療をしています。

クリニックを引き継ごうと思われた理由は何だったのでしょうか?

一番の理由は、高齢の父に代わって、地域住民のために産婦人科医療を提供し続けたいと思ったからです。近年、産婦人科の医師になる人が減っているため、既存の病院やクリニックの後継者もいなくなっています。それが原因で廃業するクリニックが増えてきているんです。そんな中、せっかく祖父の代から築き上げたクリニックをなくすわけにいかないと思いました。私が子どもの頃は黒崎地区にも産婦人科クリニックは10軒くらいはあったと記憶していますが、今は大幅に減っています。女性が体調の面で困って受診したり、妊婦健診を受けたりしたいのに、その受け皿がなくなると困りますよね。当院は地域密着型ですので、地元の人たちのためにも受け継いでいく決断をしました。妊婦健診に関しては、里帰り分娩や公立の大きな病院などで分娩を希望する妊婦さんを受け入れています。

産婦人科クリニックそのものが減りつつあるのですね。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック2

そうなんです。もともと産婦人科医は過酷な勤務になりがちなので、なり手が少なかったんですね。24時間365日、妊婦さんを受け入れる体制を整えておかなければなりません。産婦人科は基本的に休む暇がないんです。加えて少子化が進み、この北九州でも年々子どもの数が減っています。新しく産婦人科クリニックを開業する人もほとんどいない状況です。だからこそ、黒崎地区では数少ない産婦人科クリニックである当院は残しておくべきと感じています。そして、時代に合った診療に移行するために分娩は取り入れず、月経不順や月経困難症、PMS、性感染症、おりものの異常、更年期障害、不育症・不妊症のほか、性別不合の相談にも力を入れています。患者さんの声に真摯に耳を傾け、ご本人が自覚していない問題も見逃さないよう丁寧な診療を心がけています。

まずは窓口として、行き場に迷う患者と接点を持ちたい

なぜ性別不合に力を入れようと思われたのですか?

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック3

北九州市では、性別不合の相談を受け入れている医療機関が少ないからです。昔に比べ、今は性の多様化が進んできています。しかし、実際に医師に相談するとなると、どこに行けばいいかわからない患者さんも多いのではないでしょうか。ですから当院では、トランス女性(MTF)とトランス男性(FTM)双方に対応し、相談を受けつけていることをお伝えしたいですね。性別不合の人は一定数いると思いますので、一人で悩まず気軽に訪ねてほしいです。

性別不合に産婦人科で対応してもらえるという認識がありませんでした。

性別不合とは、自分の生まれ持った「体の性」と、自分自身が自分の性をどう感じているかという「心の性」が一致しない状態のことをいい、精神科、形成外科、泌尿器科、産婦人科の各医師、このほか必要に応じて内分泌を専門とする医師、小児科など各領域の医師が関わります。診断が下り、かつ性別違和の持続をはじめとするいくつかの条件を満たした場合、性別適合手術といった身体的治療に移行する流れです。最初の診断を精神科でしてもらう必要があり、診断書がないとどこの医療機関でも治療できません。なぜなら、むやみやたらに治療するのは倫理的に問題があるからです。先に挙げた身体的治療は「性別不合」という診断があるからこそ許される医療行為だということをまず知っておいてください。

そういったことを知らない当事者も多いのでしょうね。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック4

そうですね。ですので、診断や治療の流れについてもわかりやすく説明させていただきます。精神科での診断書がなくてもお越しただいて構いません。その際、私が知っている北九州市内の医療機関をご紹介します。私は以前、長崎大学で10年ほど性別不合の研究をしてきました。その後勤務した北九州市立八幡病院でも、多くの性別不合の患者さんを担当してきました。これまでの経験から、さまざまなケースに対応できますので、まずはご相談に来ていただければと思います。

月経のトラブルは我慢せずに病院を受診してほしい

月経困難症で受診される患者さんは多いのでしょうか?

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック5

私が院長になってから、最近は若年層の患者さんが増えてきました。特に20代の患者さんの中に、月経困難症を訴える方が多いですね。生理痛は月経の時の痛みのことを指しますが、月経困難症はそれにより日常生活に支障が出る「病気」として捉えます。痛みの程度は、あくまでも主観で構いません。痛みが気にならないのであれば大丈夫ですが、ご本人が不快と感じれば月経困難症の可能性があります。月経困難症の原因の一つに子宮内膜症も挙げられます。子宮内膜症は進行性の慢性疾患です。子宮内膜症の罹患に気づかないまま放置すると、将来不妊症になる危険性もあります。逆に、初期の段階で適切に管理をすれば、症状を軽減することも可能です。また、月経不順で来られた方を診察してみると、月経困難症も抱えていらっしゃったというケースもあります。月経にお悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。

PMSとはどのようなものなのでしょうか?

PMSは、月経前1週間くらいから頭痛がしたり気分が憂うつになったりなどの症状が出だして、月経が始まると治まるのが一般的なパターンですね。人によって身体的不調や精神的不調はさまざまですが、我慢できないほどひどいのに耐えている方がいらっしゃいます。中にはPMDD(月経前不快気分障害)といって、PMSよりももっと重い症状になり、それにより人間関係が悪化してしまう人もいるんですね。月経困難症もPMSも、市販薬を飲んで、ご自身で対処できる場合もあると思いますが、まれに違う病気が潜んでいることもあります。気になる症状がある方は、ぜひ当院に来てみてください。なお、おりものは月経周期によって増える時期があり、それ自体は必ずしも異常ではありません。ただし、1週間以上続く・においが気になる・かゆみや痛みを伴うといった場合は、受診をご検討ください。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

井上統夫院長 井上産婦人科クリニック6

当院では、女性の一生を通じた健康サポートを大切にしています。前述した症状のほか、乳幼児期の陰部のけがやかゆみ、思春期の月経異常、閉経後の子宮脱や萎縮性腟炎など、年代を問わずさまざまなお悩みに対応しています。どうか小さな不調を見逃さず、ご自身の体を労わってくださいね。月経困難症については、低用量ピルなどの薬で症状の改善を図ることもできます。まれに副作用が起こることもありますが、ひどい症状の人については服用を検討してみてもいいかもしれません。女性の健康に関することなら何でも受けつけておりますので、いつでもお気軽にお越しください。