いつの間にか進行してしまう糖尿病
循環器疾患の合併症にも注意
中村内科クリニック
(北九州市小倉南区/石田駅)
最終更新日:2025/11/14
- 保険診療
生活習慣病の一つである糖尿病。日本では500万人以上が治療を受けており、未受診の予備軍を合わせるとさらに多くの罹患者がいるといわれている。治療をせずに放置しているとさまざまな合併症を引き起こし、神経や目、腎臓に深刻な障害を与えてしまう怖い病気だ。また血糖値が高いままの状態が続くと血管にダメージが蓄積されるため、心血管障害のリスクも。治療には循環器の専門家の知見も欠かせない。「医療法人 中村内科クリニック」の中村知久院長も、循環器疾患の豊富な診療経験に基づき糖尿病治療に尽力している一人。「気づかないうちに体の劣化は進行しているもの。早い段階で受診いただき、それぞれに適切な治療を検討してほしい」と呼びかけている。そんな中村院長に循環器内科の視点を踏まえた糖尿病治療について話を聞いた。
(取材日2025年7月18日)
目次
糖尿病は“沈黙の病”──気づかぬうちに心臓をむしばむ前に
- Q「糖尿病」とは簡単に言うと、どのような病気なのでしょうか?
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A
▲循環器疾患のスペシャリストの視点から、糖尿病治療にも取り組む
糖尿病は大きく2つに分類されます。1つはインスリンの分泌不全による1型糖尿病。主に自己免疫の異常が原因で、膵臓のインスリンを作る細胞が破壊されてしまうことで発症します。小児期に発症することが多く、生活習慣の改善だけでは対応が難しいため、早期に糖尿病専門の医師のいる医療機関での診断・インスリン治療が必要です。もう1つが生活習慣などに起因する2型糖尿病です。運動不足、偏った食事、過剰な間食、肥満などが原因ですが、初期症状はほとんどないため、治療を受けていない人も少なくありません。進行すると目や腎臓など全身に影響を及ぼし、最終的には命に関わることもあるため、早期発見・早期治療が非常に重要な病気です。
- Q検査のタイミングについて教えてください。
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A
▲地域の健康を守るため、多種多様なニーズに対応
糖尿病に関しては健康診断で血糖値の健診異常があれば、放置せず「とにかく早めに」検査を受けることをお勧めします。診断には血糖値やHbA1cの測定が行われ、結果に応じて食事・運動・薬物療法が始まります。治療中は定期的に血糖値や合併症の有無を確認する検査を受け、生活習慣の見直しと医師の指導のもと血糖コントロールを続けます。重ねてになりますが、糖尿病は早期発見・早期治療がとても大切です。通院に不安を感じる方もいるかもしれませんが、症状が出る前に動くことが、将来の健康を守る第一歩になります。私もスタッフも明るい雰囲気を心がけてお待ちしていますので、どうか勇気を出して一度相談に来てくださるとうれしいです。
- Q「糖尿病治療=厳しい運動」というイメージがあるのですが……。
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A
▲必要に応じて体重減少をサポートする薬の活用も提案
糖尿病の治療は「食事療法・運動療法・薬物療法」の3本柱で進めます。栄養バランスの取れた食事や軽い有酸素運動の継続が基本ですが、仕事や生活の都合で難しい方も多いのが現実です。また以前と違い薬物療法は画期的な進歩を遂げており、低血糖などの副作用を起こさず正常域まで血糖値の値を改善することができるようになってきました。治療に正解はありませんので、一人ひとりの生活に合わせた方法を考えることを大切にしています。実際40〜50代では内服治療を中心にされている方も多く、若年層や軽症の場合は薬を使わず生活習慣の改善を重視するケースもあります。無理なく続けられる治療法を一緒に考えていきましょう。
- Q糖尿病と循環器疾患は深く関わり合っているとか。
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A
▲待ち時間や費用負担を減らすために検査機器を充実させている
糖尿病になると血糖値が高い状態が続き、血管が傷つきます。その結果心臓にも負担がかかり、狭心症や心筋梗塞などの病気を引き起こすことがあります。そうなると心臓自体の働きも悪くなってしまい、別の疾患も引き起こしやすくなっていきます。足の血管が傷むと抹消動脈疾患となりひどくなると足を切断することもあります。また頭の血管が傷むと脳梗塞や脳出血の原因となるでしょう。糖尿病のメジャーな合併症と知られているのは目や腎臓の病気、神経障害だと思いますが、それだけに限らず心臓をはじめとした循環器を含め全身に大きな影響を及ぼすことも。糖尿病は甘く見てはいけない病気ですし、早期に治療の介入が必要な病気であると考えます。
- Q生活習慣病の改善をするために重要なことはありますか?
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A
▲生活習慣に配慮し、患者に寄り添った治療を
生活習慣病を改善するためには、運動療法と食事療法が欠かせません。運動は日頃の散歩などでも良いですが、関節の痛みがある方、体重が重くて足腰に不安がある方はプールでの運動が良いと思います。浮力を使うことで関節への負担を減らして運動することができますよ。中には忙しくて運動の時間が確保できないというケースもあるでしょうが、通勤中に1つ前のバス停で降りて歩く距離を意識する、階段を選ぶといったことから始めてみてはいかがでしょうか。食事に関してはバランス良く食べることが大切ですが、注意点は基礎疾患や年齢などによって異なります。基本的には間食を控えて、糖質に偏った食事にならないように心がけてください。

