藤田 博崇 理事長の独自取材記事
ふじた医院
(善通寺市/善通寺駅)
最終更新日:2024/10/02
JR土讃線・善通寺駅から車で3分、徒歩約10分の県道24号沿いで、1988年から診療を続ける「ふじた医院」。2012年に、藤田博崇先生が2代目院長として医院を継承した。現在、藤田先生は理事長に就任。外科・整形外科・消化器内科・循環器内科・胃腸内科・リハビリテーション科・肛門外科・麻酔科など幅広い診療科目に対応し、3階建ての建物には19床の入院設備も備え、総合的な診療を実践している。また胃・大腸内視鏡検査に加え、交通事故のケガや後遺症の治療に力を注ぐほか、通院が難しい患者には往診も実施。「患者の話をしっかりと聞いて、気持ちに寄り添う医師でありたい」と語る藤田理事長に、医師をめざしたきっかけや、診療への思いを聞いた。
(取材日2022年7月23日)
被災地で医療奉仕活動を行う医師に憧れ、医療の道へ
医師をめざしたきっかけとご経歴をお聞かせください。
高校2年生くらいまでは「宇宙船をつくりたい」という夢があり、名古屋大学の航空工学部をめざしていたんです。しかし、ちょうどその頃に阪神・淡路大震災が発生し、神戸に住んでいた母方の叔母が被災をしました。この時に、被災地や紛争地などで医療活動をする医師団の姿を見て心を打たれたんです。父が医師だったこともあり、進路を変更して医師をめざすようになりました。大学は香川医科大学(現・香川大学医学部)に進学し、その後は香川大学第1外科・三豊総合病院・坂出市立病院、再び香川大学第1外科を経て国立善通寺病院(現・四国こどもとおとなの医療センター)の勤務医に。父からクリニックを継承したのは、2012年のことです。
研修医時代のお話をお聞かせください。
現在は消化器外科と心臓外科が分かれていますが、僕が入局した頃の香川大学の第1外科では、胃や大腸などの消化器と心臓がセットになっていました。その時の先生が心臓外科の教授だったこともあり、半年くらいは教授と一緒に手術に入りながら経験を積んでいましたね。三豊総合病院では、肺がんや乳がん、心臓血管の手術にも参加しました。複数の病院で研鑽を積んだことで、クリニックを継承するのに必要な技術や知識を学ぶことができたと思います。
医師としての活躍の場に、善通寺を選んだ理由は?
医療現場でがんの患者さんの治療を行い感じたことは、「がんの根治は難しい」ということです。早期のがんを発見し、手術をしても、若い人であれば再発してしまうことがあります。僕の身の回りでも、まだ40代だった外科医の先輩が胃がんを発症しました。当然、本人も医師で知識がありましたから、「あれくらいの早期のがんなら手術で根治するだろう」と思っていたんですが、半年後に再発し、1年後には亡くなってしまいました。海外の被災地や紛争地に出向いて医療を届けることも意義があると思いますが、僕はこの経験にとてもショックを受けて、まずは「目の前にいる人を助けたい」と思うようになったんです。そして地元である香川県、善通寺市に戻り、地域医療への貢献を志すようになりました。
地域に根差し、患者に寄り添うクリニック
クリニックを継承するにあたり、注力したことはありますか?
CTやMRI導入を検討した時期もあったんですが、広さなどの問題もあり、大がかりな検査は基幹病院へ任せて、地域に根差したかかりつけ医としての診療に特化しようと思いました。例えば、全身麻酔を伴う手術が必要な患者さんは基幹病院に紹介していますが、腰から下の腰椎麻酔を使うヘルニアなどの簡単な手術は、当院で行っています。また不安に思われる方が多い、胃・大腸の内視鏡検査も実施しています。整形外科ではリハビリテーションのニーズが高いということもあり、整形外科の友人医師のクリニックで経験を積み、ギプスの巻き方や膝の注射法などを覚えました。善通寺・丸亀でクリニックを探すなら「ふじた医院」と頼ってもらえるように、患者さんのさまざまなニーズに対応できる体制を整えています。
どのような患者さんが来院していますか?
香川県全体としてもそうですが、善通寺市も高齢者の人口比率が高いので、来院する患者さんは高齢の方が多いです。また、うどんをよく食べる地域性のせいか、高血圧症や糖尿病の有病者も多い印象です。当院ではあまり循環器系の患者さんは診ていないのですが、リハビリで来院する患者さんに、高血圧や糖尿病の薬を処方することもあります。入院する患者さんの症状は多岐にわたり、骨折の手術をした方やがんの方、寝たきりで食事ができなくなった高齢の方、内科的疾患を持つ方などがいらっしゃいます。
診療時に心がけていることを教えてください。
患者さんの話をよく聞いてから、治療方針を決めるということでしょうか。「手術をしたくない」「ステロイドを使いたくない」「薬を飲みたくない」といった患者さんの希望がある場合は、患者さんのお気持ちを尊重し、別の治療方法で対応するようにしています。また「手当て」とも言いますが、直接手で触れて診察することも大切にしています。「腰の骨が変形しているからリハビリをしましょう」と口だけで説明するのと、実際に患者さんが痛みを感じる患部に手を当てながら説明するのとでは、患者さんへの伝わり方も違うと思うんです。医師が言ったことを、患者さんが聞くだけのような一方的な診療ではなく、患者さんに寄り添いともに歩んでいく、そんな診療を心がけています。
西洋医学に加え、鍼灸や漢方など東洋医学も取り入れる
交通事故のケガや、後遺症の治療にも力を入れているそうですね。
実は、僕の家族が交通事故でケガをしたことがあるんです。天気が悪い時には、調子が悪くなって寝込んでしまうこともあり、「どうにかしてあげたい」という気持ちから交通事故のケガや後遺症の治療に取り組むようになりました。患者さんに有益なものであれば、西洋医学だけでなく、鍼灸や漢方を使った東洋医学や、先進の機器なども積極的に導入しています。交通事故のケガや後遺症は、民間療法に頼って結局治らなかったり、悪化したりして来院する患者さんが多くいらっしゃいます。そうならないためには、きちんと医師の診断を受けることが重要です。当院では診断を行った上で、さまざまな治療やケアを受けられる環境を整えているので、患者さんも安心して治療に取り組めるのではないかと思っています。
リハビリでは、先進のトレーニングマシンを活用していると聞きました。
新たに導入したマシンは、一見、スポーツジムのマシンのような見た目なのですが、筋力をつけるというよりも、どちらかといえば筋肉をしなやかにするストレッチのようなイメージを持っていただくとよいです。筋肉をしなやかに保つことで、疲れにくい体づくりを行い、さらに筋肉を鍛えて関節の可動域を徐々に広げていきます。筋力トレーニングの方法は多岐にわたるので、専門のスタッフの指導を受けながら行うことが大切です。当院では医師による検査・診断をもとに、患者さんの体の特徴を理解してから、一人ひとりに合ったトレーニング方法を検討しています。
休日の過ごし方や、今後の目標などもお聞かせください。
休日は室内でトレーニングをしたり、息子と一緒にキャッチボールをしたりして過ごしていますね。近年は有床診療所や、往診を行うクリニックが消えつつあります。こうした現状を踏まえ、今後も地域に貢献し地域を支えるクリニックとして入院対応や往診を継続するとともに、「善通寺、丸亀ならここ!」と頼ってもらえるようなクリニックをめざしていきたいと考えています。