今川 宏樹 院長の独自取材記事
仁愛内科医院
(廿日市市/地御前駅)
最終更新日:2021/10/12
交通量が多い国道2号の広島市内から宮島方面へ向かうバイパスの脇に入り、50mほど進んだ場所にある「仁愛内科医院」は1983年に広島市内に開業。現在の場所に移ってから30年がたとうとしていた2019年に、院長に就任したのが、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の資格を持つ今川宏樹先生。「生まれ育ったこの地域に恩返しがしたい」と、前院長である母から医院を引き継ぐことを決意したという。来院する患者が少しでも楽になるように、と真摯に診療を続ける一方、「この地域から胃がんや大腸がんをなくしたい」と内視鏡での検査にも力を入れている。インタビューでは、内視鏡検査についてや日々の診察で心がけていることなどをたっぷりと語ってもらった。
(取材日2020年9月26日)
育った地域に恩返しをしたいと院長に就任
先生がこちらの院長に就任した経緯から教えていただけますか?
この医院は私の母が開業しました。その後父も加わり、昨年私が院長になるまでは2人でやっていたんです。母が最初に開業したのは広島市中区広瀬町で、その後私が13歳になる頃にこの地に移転しました。もともと母の実家がこの辺りだったので、土地を探していたようです。両親も年を重ねてきましたし、私自身も育ったこの地に恩返しがしたいという気持ちがあったので院長として病院を継ぐことを決意したんです。とはいえ、両親ともにまだ現役。2人とも当院で診療にあたっています。私はもちろん毎日診療していますが、両親は交代で診療に出ています。なので、当院には3人の医師が在籍しているということになりますね。
ご両親からの影響を受けて、医師の道に進まれたのでしょうか?
そうですね。両親の影響はとても大きかったと思います。父からも母からも「医師になりなさい」と言われたことは一度もありませんでした。それでも私の兄も医師の道に進んでいますし、やはり2人の背中を見て育ったからというのは医師の道を選ぶ上での大きな決め手でしたね。何か具体的なきっかけがあったかというと、そういうものはなかったと思います。でもいつの間にか、自然に医師の道を選んでいました。母の年代はまだ女性の医師の数は少なく、珍しい存在でしたが、なんでもできるスーパーウーマンでしたね。仕事も家事も、子育ても、そして自分の親の面倒も見ていましたから。
消化器内科を専門に選ばれた理由を教えてください。
研修医時代に初めて内視鏡検査をさせてもらって、それがとても面白かったんです。検査から診断、そして治療まで一貫してできるという魅力もあり、やりがいを感じました。先輩方の素晴らしい内視鏡の技術に憧れたというのもありますね。その先輩方がうまく持ち上げてくれたというのもあるかもしれません(笑)。内視鏡は実際に画像を見て診断できるというのが興味深く、またとても奥が深いので上をめざしたらきりがないというところもやりがいにつながっています。挿入技術、診断技術、治療技術などいろいろな側面からのアプローチがあって、長年続けてきてもまだまだ学ぶべきことがあり、さらに上をめざして私も日々努力をしています。これは天職だなと感じています。
来院した患者には少しでも楽になって帰ってほしい
診察で心がけていることを教えてください。
とにかく患者さんの苦痛に配慮することを心がけています。来てくださった患者さんには少しでも楽になって帰っていただければと思っているんです。楽になっていただけるのが私にとっても一番うれしいことですから。なので、患者さんの痛みや違和感、不快感にまずしっかり寄り添うことを大切にしています。当院に通ってくださっている患者さんの中には、母から引き継いだ患者さんもいます。子どもの時の私を知っている人もいるので、頭が上がらないですよ。また小学生、中学生だった時の先生が来てくださったりもするんです。育った地域で診療するとはこういうことなんだなと思いながら、お一人お一人と向き合っています。
先進の内視鏡を導入されているとお聞きしました。
私が院長に就任したのと同時に新しい機器を入れるか迷ったのですが、そろそろ新しいものが発売される頃だろうと予想をつけていたので、父が使っていたものを使いながら新しい機種が発売されるのを待っていました。いざ使ってみると、ハイビジョンなので画質が素晴らしく、奥まで明るく見ることができるので、これまで向かなかった精密検査にも対応できるようになったんです。また挿入もするっと入る感じなので検査時の苦痛の軽減にも大いに貢献していると思います。新型の内視鏡を使った検査ですので、ご希望の方はぜひご来院ください。
オンライン診療にも対応されていらっしゃるのですね。
はい。患者さんと直接対面しない診療には難しさがありますが、新型コロナウイルスの影響で受診を躊躇される方がいらっしゃるかなと思い、準備を整えました。ただ今のところは、まだそれほど多くの需要があるわけではありません。というのも、当院では発熱している方と通常の患者さんの診療スペースを分けられる造りになっているため、発熱されている方の受診にも対応可能だからです。スタッフが防護衣を作ってくれたりとクリニック全体で対策を取っています。
この地域から胃がんや大腸がんをなくしたい
これまでのご経験の中で、忘れられないエピソードなどありますか?
たくさんありますが、特に印象深いのが、まだ研修医だった頃に出会った患者さんです。担当させていただいたその方はがんを患っていらして、すでにかなり悪い状態でした。その方のそばにいてお話を聞いたり、お出かけする時に介助させていただいたりしたんですが、残念なことに、そう時間もたたないうちにその方はお亡くなりになりました。私自身、研修医という身でできることは限られていました。それでもその患者さんに、自分は何かできたと言えるのだろうか、これから医師として患者さんに何ができるんだろうかと、本当にいろいろなことを考えるきっかけになった出会いです。自分の力のなさを思い知らさせてくれた人とも言うことができるかもしれません。
毎日お忙しくしていらっしゃると思いますが、リフレッシュ方法はありますか?
中学校1年生、小学校5年生、6歳の3人の子どもがいるので、子どもたちと過ごす時間を大切にしています。休みの日には、子どもたちをいろいろなところに遊びに連れて行くようにしているんです。この前はカヌーに乗りに行きましたね。もともとあまりスポーツはしないのですが、アウトドアは好きなんです。旅行も好きなので、子どもたちを連れて行きたい気持ちはあるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響でなかなか行くことができません。そのかわり映画を見に行ったり買い物に出かけたりしていますが、そうやって子どもたちと過ごす時間が、一番のリフレッシュですね。個人的な趣味というのはこれといってありませんが読書は好きです。ミステリー小説に没頭する時間も日々の活力になっているかもしれません。
最後に、読者へのメッセージと今後の展望についてお聞かせください。
私の目標は、消化器内科の専門家としてこの地域から胃がんや大腸がんをなくすことです。胃がんや大腸がんは、早期発見できれば完治が見込めるがんなので、多くの人に内視鏡検査を受けていただきたいですね。症状が出た時にはすでに病気が進行しているとうことも多いため、定期的に検査を受けることが大切です。内視鏡検査はハードルが高いと考えていらっしゃる方も多いとは思いますが、鎮静剤を使用したり、細いスコープを使用するなど苦痛を和らげる手段を用意しています。今後この地域から胃がんや大腸がんをなくすという目標を達成するためにも、内視鏡検査をさらに充実させ、受診の啓発にも力を入れていきたいです。