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井上 健 院長の独自取材記事

いのうえ内科脳神経クリニック

(広島市中区/舟入幸町駅)

最終更新日:2021/10/12

井上健院長 いのうえ内科脳神経クリニック main

広島市中区舟入川口町にある「いのうえ内科脳神経クリニック」。院長の井上健先生が父である前理事長から引き継いで、2012年に開業した。井上先生の専門の脳神経内科には、頭痛やめまいなどの患者が遠方からも訪れ、さらに先代の頃からの高齢の患者や、若者など幅広い世代が通う町のかかりつけクリニックだ。「患者さんが何を希望し、どうなりたいかを知るために、しっかりお話を伺います」と穏やかに語る井上院長に、父への思いやクリニックの得意とする診療を聞いた。

(取材日2021年3月18日)

地域の人に頼りにされる父に憧れて医師をめざす

先生が医師を志した理由を教えてください。

井上健院長 いのうえ内科脳神経クリニック1

当院は1970年、私が5歳の時に父が開業し、「井上内科胃腸科医院」としてスタートしました。当時は自宅を併設していたので、子どもの頃は病気の患者さんや夜中に父が往診に行く姿を見て育ち、近所の人に頼られ、命を預かる仕事をする父に憧れの気持ちを抱くように。「大きくなったら父のようになりたい」と、病気で困っている人に会うたびに思いは強くなりましたが、まだ子どもでしたから、野球選手なども夢見たものです。はっきりと将来の進路を医師に定めたのは高校3年生の秋のこと。それまでは数学と物理が好きだったので理学部を志望してました。しかしその年の夏に真摯に患者さんと向き合う父の姿にあらためて心を打たれる出来事があり、さらに父の恩師からの手紙を受け取り、「分野という狭い領域にこだわらず、自分の好きなことをして人助けをしたい」という思いが湧き上がって医学部へと進路変更しました。

脳神経内科を専門に選んだのはなぜですか?

実は現代の医学でも脳のことはほとんどわかっていなくて、現在わかっているのは、ほんの1%ほどではないかと言われるほど、解明されていません。医学部を卒業して内科の研修医をしていた時も、脳神経内科の分野はわからないことがたくさんありました。しかし逆を言えば、これから解明されることがたくさんあるということ。もともと数学と物理が好きだったので、理論立てて考えることができる脳神経内科が肌に合っていました。またわからないことが多いことに関連するのですが、神経の病気は原因が明らかになっていない難病が多く、必然的に患者さんと接する時間も長くなります。患者さんとの時間が長くなる中で、徐々に神経内科という領域になじんでいきました。

もともとクリニックを継ぐことを考えていたのでしょうか?

井上健院長 いのうえ内科脳神経クリニック2

父は一度も医師になれとも、開業しろとも言いませんでした。母は後を継ぐことを期待していましたが、私が医学部を卒業した年に55歳の若さで突然亡くなり、その後父は82歳まで開業医として働き、私は大学病院などで勤務医をしていました。しかし父が80歳の時に胃がんが発覚。その時も後継ぎの話はなかったのですが、後日、以前父が地元の高校のインタビューを受けた時、私に後を継いでほしいと話していたことを知り、父と母が築いたクリニックを継承することを決意。当時、県立広島病院で脳神経内科部長を務めていましたが、父が亡くなった翌月の2012年8月に「いのうえ内科脳神経クリニック」と名前を改め開業しました。亡くなる数日前に、父の手を握って「お父さん、僕、頑張るからね」と伝えることができました。それが父との約束だと思い、父の患者さんを引き継いで今も診ています。

頭痛から、脳卒中、難病まで扱う脳神経内科

脳神経内科はどのような病気を診るのでしょうか?

井上健院長 いのうえ内科脳神経クリニック3

一般になじみがない診療科かと思いますが、脳・神経・筋肉などの広い範囲にわたる障害を診る科で、脳神経内科、あるいは神経内科とも言います。当院の患者さんで多い主訴は、頭痛、めまい、物忘れ、てんかんなど。そのほか、しびれや睡眠障害で受診される方も多いです。脳卒中、パーキンソン病、運動機能異常症なども得意とし、これらの日常生活に不自由をもたらす運動機能障害は脳神経内科の専門分野と言えます。頭痛、めまい、しびれなどは脳神経内科で診てもらうと、早ければその日のうちに原因を特定できるケースが多いですよ。

漢方を取り入れて、東洋医学の「未病」の概念を大切にしているそうですね。

脳神経外科で漢方を取り入れている先生は珍しくなくて、例えば頭痛などにはよく漢方薬が処方されます。ただし漢方は人によって合う合わないがありますから、安全のためにも漢方を学んでいる医師による処方をお勧めします。未病とは、病気になる一歩手前の「病気未満」の状態を言い、当院では「未病の段階で病気への進行を食い止めて、病気になりにくい体をつくる」という東洋医学の考え方と、西洋医学に基づいた現代医療の検査手法をミックスした最先端の予防医学をめざしています。例えばアルツハイマー病は脳内のある微量のタンパク質によって早期発見が可能になりつつあり、研究が進んでいる分野ですし、脳出血やくも膜下出血を起こさないためには、血圧や高脂血症、糖尿病、それからストレスなどのコントロールが大事です。予防には、定期健診と合わせて、運動、食事、睡眠、そして良好なコミュニケーションが大切ですよ。

患者さんと接する時に心がけていることは?

井上健院長 いのうえ内科脳神経クリニック4

患者さんにとって何が一番大切で、何を望んでいるかを常に考えています。診療では患者さんがどんな病気で、今後どんなことが起こるか、そのためにどんな治療を行うと患者さんにとって良いのかを考えますが、私がしようとすることと、患者さんの希望にズレが生じることがあります。例えば動脈瘤を見つけて、手術が必要な場合、手術が不安で、破裂しそうな動脈瘤を放置するような事態は避けたいものです。その場合、患者さんが手術を受け入れられるようにプロである医師が導く必要があるでしょう。手術する病院への紹介状に患者さんの希望を説明して配慮してもらうよう促すのも一つの方法です。当院ではまずしっかりと問診を行い、私やスタッフが丁寧にお話を聞くようなシステムをつくっています。

医師は病気を治すだけでなく、その悩みを軽くする存在

設備や内装でこだわっている点を教えてください。

井上健院長 いのうえ内科脳神経クリニック5

クリニックの建物自体は1976年に父が建てたもので、父の代から小規模な改修工事は何度か行っていて、ある程度、きれいな状態を保っていました。ただ引き継いだ当初はトイレが和式だったので、洋式に入れ替えて、車いすでも入れるバリアフリーのトイレに改修。その後1年かけて少しずつ改修工事を行って、全面的にバリアフリー化しました。また引き継ぎの際に、先進の医療を取り入れたいと、MRIとCTを導入しました。高額な機器なので当初は導入を迷ったのですが、父からの「開業するならお金の心配よりも、自分のやりたいことをする開業医をめざしなさい。それが開業医の醍醐味だし、そうじゃないと面白みがないから」という言葉が後押しになりました。導入の結果は大正解。今では総合病院からMRI検査の依頼がくることもあります。

これまでで印象深いエピソードはありますか?

ウイルスの感染症で脳炎を起こした患者さんが印象に残っています。30代半ばの男性で、奥さんやお子さんもいる方でした。意識がなく、気管挿管をされている重篤な状態で、亡くなる可能性もあり、回復しても後遺症が残る恐れもありました。ご家族も覚悟をして、お葬式の準備をしていたほどなのですが、その後みるみる元気になって、退院の時は何の後遺症もなく、自分の足で歩いて帰られたのです。その姿を見たとき「こんなこともあるのだ」ととても印象に残りました。それは奇跡などではなくて、死のまぎわにある患者さんに対しても、諦めずに適切なケアを丁寧に続けたスタッフたちのおかげです。油断せず、少しの変化も見逃さず、ミスなく全員が一つになってケアを行えば、そのように回復することもあるのです。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

井上健院長 いのうえ内科脳神経クリニック6

長い人生の中では、治る病気もあれば治らない病気や一生付き合わないといけない病気を持つこともあります。もし病気になっても、いかに人生を楽しむか。皆さんの病気の悩みを少しでも解決できる手助けができればと思っています。病気を治すためだけでなく、病気の悩みを解決したり症状を軽くしたりするために医師は存在しています。当院では、患者さんをはじめ、スタッフのみんなや業者さんたちなど、出会ったすべての人が元気になるメッセージを送りたいと思っています。皆さまとの出会いを大切にし、皆さまの健康と幸せのための医療をこれからも届けていきます。

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