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松本 和也 院長の独自取材記事

入澤クリニック

(松江市)

最終更新日:2021/10/12

松本和也院長 入澤クリニック main

松江市郊外の竹矢インターチェンジにほど近い「入澤クリニック」。松本和也院長は2016年に同院を受け継ぎ、「地域の身近なかかりつけ医として、患者さんが当院で診療を完結できるように」と一般内科や専門の消化器内科など幅広い診療を提供。松本院長は膵臓がんの検査に用いる超音波内視鏡検査で豊富な経験を持ち、鳥取大学医学部機能病態内科学の特任准教授を務めるほか、かかりつけ医と総合病院が連携した「松江市膵がんプロジェクト」を主導して地域全体で膵臓がんの早期発見・治療をめざす。そんな松本院長に医師を志した経緯や超音波内視鏡検査などについて話を聞いた。

(取材日2020年12月18日)

人の役に立ちたいという思いから医師の道へ

先生はなぜ医師をめざされたのですか?

松本和也院長 入澤クリニック1

もともと「将来は人の役に立ちたい」という思いがありました。それを知った兄から「人助けをしたいなら医学がいいのでは」と勧められたのをきっかけに、鳥取大学の医学部に進学しました。卒業後は同大学医学部附属病院に勤務して消化器内科を専門に診療にあたり、その後、愛知県がんセンター中央病院消化器内科で膵臓がんの診断に有用な超音波内視鏡検査について勉強させてもらいました。愛知県がんセンターから戻った後は再び鳥取大学医学部附属病院に勤務し、2016年から当院で診療を行い、院長を務めさせてもらっています。

超音波内視鏡検査を学ぼうと思ったのはなぜですか?

きっかけは一人の患者さんでした。その方は県外からの旅行者で、総胆管結石のために緊急受診をされて、その時は内視鏡を使った治療を行い、その後速やかに退院されました。しかし半年後、その方のかかりつけの病院から「膵臓がんが見つかったので、半年前の状況を教えてほしい」と連絡が入ったのです。あらためて、私も含めた複数のドクターで当時のCT画像を見直しましたが、膵臓がんを確認することはできませんでした。「同じようなケースで、今後どうすれば発見ができるのか」と悩んでいた時に、当時の愛知県がんセンター消化器内科部長の講演を聞く機会に恵まれ、「自分自身とこの地域に足りないものはこれだ」と感じ、超音波内視鏡検査のスペシャリストである、その方のもとで勉強をさせてもらったんです。

膵臓がんは早期発見が難しいと言われていますね。

松本和也院長 入澤クリニック2

膵臓は、インスリンを出す内分泌機能と、栄養素の消化吸収を行う外分泌機能が主な働きで、胃の後ろに位置しています。みぞおちとおへその間辺りに横たわるようにあり、長さは15センチほど。膵臓がんの早期発見が難しいと言われるのは、多くの人が初期症状がほとんどないことに加えて、検査で発見しにくいことにあります。おなかの不調ではまず腹部エコーを行いますが、エコーと膵臓までの間には皮下脂肪や胃袋、肝臓、内臓脂肪、場合によっては大腸などがあるために画質がかなり落ちてしまい、膵臓自体がよく見えないのです。そしてより解像度の高いCT検査でも、造影剤を用いなければ小さな腫瘍を見つけることができません。このため、膵臓がん診療では、膵臓がんを疑ってCTを撮影する場合は造影剤を使うこと、MRI検査、そして超音波内視鏡検査が推奨されています。

開業医では扱いが少ない超音波内視鏡検査を実施

膵臓がんの検査で、なぜ超音波内視鏡検査が重要なのでしょうか?

松本和也院長 入澤クリニック3

造影剤を使ったCT、MRI、超音波内視鏡のそれぞれに一長一短がありますが、小さい膵臓がんを見つけることに関しては超音波内視鏡が得意です。CT、MRIでは見ることが難しい、10ミリ未満の腫瘍をはっきりと映し出せます。さらに腫瘍が疑われる細胞に直接針を刺して細胞を採取することができるので、組織検査によって、より診断の精度を上げていくことが可能となるのです。超音波内視鏡はまだあまり普及しておらず、診断技術も求められるので、当院のように開業医で導入しているところは珍しいかと思います。

クリニックでの超音波内視鏡検査の流れを教えてください。

超音波内視鏡は、一般的な経口の胃カメラである10ミリより少し大きいくらいのサイズです。最近の経鼻の胃カメラは6ミリほどなので、少し大きいと感じるかもしれませんね。当院では、私が鳥取大学医学部附属病院で開発に関わったマウスピースを使用することで、喉への違和感を始めとした検査時の苦痛軽減に努めており、実際その苦痛度は通常の経口の胃カメラよりも少なくなる方が多いようです。このため、一般的には静脈麻酔をしてから超音波内視鏡検査をするのですが、当院では事前に患者さんに説明し、納得していただいた上で静脈麻酔を行わずに実施しています。検査時間は15分ほど。通常の胃カメラはだいたい7~8分なのでそれよりも時間がかかりますが、「麻酔がなくても平気だった」と言っていただけるよう、検査時の苦痛の軽減には最大限配慮しています。

超音波内視鏡検査時に麻酔をしないことのメリットをお聞かせください。

松本和也院長 入澤クリニック4

大学病院に勤務していた時は、静脈麻酔をして超音波内視鏡検査を行っていましたが、検査後には2時間の待機時間があり、車の運転もできません。しかも目が覚めた後の出来事でも覚えていない人が多いので、後日、説明のためにあたらめて来院してもらっていました。しかし静脈麻酔をしなければ検査当日に説明が聞け、車で帰宅できます。患者さんの時間と費用の負担を考えた時、「静脈麻酔を行わないためにわずかの苦痛はあっても、患者さんのメリットも大きいのでは」と、このスタイルへ。普通の胃カメラを受けられる方であれば、ほとんどの方が静脈麻酔がなくても超音波内視鏡検査を受けておられます。また当院のスタッフたちが、鳥取大学医学部附属病院で学んだ介助に関する専門的なノウハウを生かし、検査中に親身な声かけをしてくれる点も、患者さんの大きな励みになっています。そうした検査が求められてか、安来や米子市からも多くお越しいただいています。

かかりつけ医として幅広い診療を

内科で受診される患者さんも多いですか?

松本和也院長 入澤クリニック5

専門の消化器内科の病気で来院される患者さんは全体の1割ほどで、ほとんどは一般内科の患者さんです。膵臓の検査は他院と比べて多いですが、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病、骨粗しょう症、気管支喘息、睡眠時無呼吸症候群、風邪、花粉症などの患者さんがほとんど。骨粗しょう症の患者さんのために、より正確な診断を下せるように総合病院と同レベルの検査機器を導入するなど、幅広い診療を心がけています。それというのも、高齢の患者さんが地域柄とても多く、皆さんが整形外科や耳鼻科、皮膚科などのいろいろな疾患を抱えていらっしゃるので、当院でできる限りのことに対応して、複数の病院に受診しなくても良いようにして差し上げたいのです。医療はどんどん進歩していますので、患者さんの負担を減らしたいという気持ちで、病気や薬の情報収集に日々努めています。

医師会のプロジェクトにも参加されていますね。

2018年に始まった松江市医師会の「松江市膵がんプロジェクト」ですね。市内の一般内科や消化器内科の開業医27施設と、3つの総合病院の消化器内科と放射線科の医師がタッグを組み、膵臓がんの早期発見をめざしています。特に造影剤を使ったCT検査の重要性は、医師の間でもあまり浸透していなかったので、これを機会に広めたいですね。膵臓がんは、糖尿病、膵臓がんの家族歴、喫煙や多量飲酒、慢性膵炎と関連があります。また自覚症状としてはおなかや背中の痛み、体重の減少などがあります。リスクがある方、こうした症状に悩んでいる方はお近くの医療機関で検査を受けておくと安心です。

読者にメッセージをお願いします。

松本和也院長 入澤クリニック6

人生100年時代と言われる中、私がそれに対して一番大切だと思うのが健康です。そのためにも健康診断はとても大事。病気の診断がつくことが怖い、忙しい、通院が大変、といったさまざまな理由で特定健診や職場健診、あるいはその後の精密検査を受けていない方は多いと思います。ですが本当に怖いのは、病気が進行して大変な状況になってしまうこと。生活習慣病では、動脈硬化が進むと狭心症や脳梗塞につながり、命が助かっても運動や仕事、食事、レジャーなどが制限されてしまいます。最初にきちんと対応しておけば、後の通院の手間や費用もずいぶんと減るでしょうから、かかりつけ医をつくって年に1回の健康診断を受けるようにしましょう。また、当院では感染症対策として、患者さんの手指消毒や院内の換気のほか、午前午後の診療後に院内の消毒作業も徹底しています。安心してご来院ください。

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