仲村 広毅 院長の独自取材記事
なかむら医院
(西伯郡伯耆町/岸本駅)
最終更新日:2024/04/09

JR伯備線岸本駅より車で5分ほど。「なかむら医院」は、大山を望む、自然に囲まれた場所にある。2代目院長の仲村広毅先生は、1970年に父が開業した仲村医院へ2005年に入職。2014年の継承時に医療法人化し、なかむら医院として再出発した。夜間の救急患者にも応じ地域の人々を支えてきた父を見て育ち、自然と後を継ぐことを考えたという。大学卒業後は救急医療の現場で勤務し、幅広い症例に対応してきた。その経験を生かして、同院では内科と外科を標榜し幅広く患者を受け入れる。また高齢の患者が多いため、医療機関に通えなくなった患者に対しての訪問診療にも注力する。「地域の皆さんに、ここに診療所があって良かったと思ってもらいたい」と話す姿からは、優しさと温かさが伝わる。そんな仲村院長に、同院や地域について話を聞いた。
(取材日2024年2月29日)
救急の現場での経験を生かし総合的な医療を提供
院長を継承するまでの経緯を教えてください。

大学は岡山県倉敷市の川崎医科大学に進学し、卒業後は母校の付属病院の救命救急センターに勤務しました。その後出向で、茨城県の牛久愛和総合病院、岡山県の岡山中央病院に在籍しました。その間、母校の大学院で4年ほど学んだ時期もありますね。そういった経験を重ねて、2014年に当院に入職しました。その当時、父は40年以上も診療を続け高齢でありましたし、この周りには医療機関も多くはなかったので、自分が戻って引き継いでこの地域での医療提供を続けていければそれがいいのかなと考え、ここ伯耆(ほうき)町に戻りました。もともとそういった将来像が頭にあったので、何でも診ることができるようにと救急の道を選んだところがあります。父が診療をしていた時の院名は「仲村医院」だったのですが、引き継ぐ時に「なかむら医院」と平仮名表記に変更して、建物も靴のまま入れるバリアフリーの造りにリフォームしました。
救命救急センターではどういったご経験をされましたか。
僕が勤務していた救命救急センターは、重篤で緊急性の高い患者さんを受け入れる三次救急だけに対応している現場ではありませんでした。日帰りできる程度の症状に対応する一次救急から、重い症状の三次救急まであらゆる患者さんを受け入れていました。夜間には、風邪や腹痛の患者さんをはじめ、意識がない方や交通事故で多発外傷を負った患者さん、熱性けいれんのお子さんなど、さまざまな症状の方が搬送されていました。そんな現場でいろいろな病気やけがの症状を診てきた経験は、今の診療に役立っていると思います。
医師をめざしたきっかけを教えてください。

父は1970年にここで診療所を開きました。もともとは産婦人科を標榜していたのですが、内科の症状を抱えた方も、転んでけがや捻挫、骨折をした方も受診され、内科、外科問わず幅広く診察していました。当時は今のようにたくさんの医療機関があるわけではありませんでしたので、この地域では父が診るのが適切な状況だったんでしょうね。家は診療所の裏手にあり、子どもの頃の僕は、診療所によく出入りをしていました。父に「うろちょろするな」とたびたび怒られていましたが、うろちょろしながらも父の仕事を見ていたんですね。当時父は訪問診療にも対応していて、昼間に定期的な訪問診療をして、夜間には患者さんから連絡を受けて出かけていくこともありました。なので、それが当たり前だと思っていたんです。なので自分が医師になったら、近隣の人たちのいろいろなニーズに、できるだけ当院で完結させられるように応えたいと思っていましたね。
健診を通して、地域の人々の健康をチェック
どういった患者さんが多いですか。

高齢の方が多いでしょうか。一方で、予防接種も行っているので未就学児くらいのお子さんも来院されます。風邪をひいた方や下痢をした方も多く来られます。最近は、健康診断で血圧や血糖値、脂質のことを指摘されたという相談も増えています。風邪でも腹痛でも、健康診断で指摘があった方でも、まず来てもらって診させていただき、そこから一緒に相談しながら治療を進めていきます。当院でできる治療や検査であれば対応し、当院でカバーできる範囲を超えている場合は、専門の医療機関を紹介しています。
こちらで受けられる検査について教えてください。
特定健診や後期高齢者健診、雇い入れ時健診の項目はカバーしています。僕自身は胃内視鏡を扱っていないので、専門の医師に毎月1~2回来てもらっています。最近胃の調子が悪いとか、食欲がないという方に、すぐに診てもらえる医療機関を紹介することもできるのですが、緊急性のない場面では「当院で胃カメラの日があるから、気になるならそこで検査してみましょうか」とお声がけしています。ご高齢の方は車を運転して知らない土地にある医療機関まで行くよりも、住み慣れた町の通い慣れた診療所のほうがより安心して検査を受けられるのではないかと思っています。なので検査の設備を整えて、できるだけここ伯耆町だけで完結できるようになれば、よりいいかなと考えています。
診療で心がけていることはありますか。

特に高齢の方だとどうしても服用する薬が多くなる傾向があるので、ポリファーマシー(多剤服用の中でも害をなすもの)にならないようにできるだけ気をつけています。必要な薬は処方しなければなりませんが、患者さんご本人の希望も聞いたり、「もう少し様子を見てからにしませんか?」と相談したりしながら、慎重に対応しています。
地域全体の医療を支えたい
訪問診療もなさっていると聞きました。

伯耆町になる前の旧岸本町を中心に、当院から片道2kmくらいのエリアを訪問しています。訪問診療の時間としては、僕が当院の昼休憩に入った13時から15時半くらいの間で伺っています。もともとは、通院されていた患者さんが当院に通えなくなった場合に対応していました。最近は他の病院を退院された後の患者さんが、自宅などでの訪問診療に移られた場合にも対応しています。
鳥取県西部医師会の副会長もされているんですね。どういった活動に取り組まれていますか。
在宅医療での多職種連携が重要視されるようになってからだいぶ年数がたちますが、個別の施設ごとに運営されているケースが多く、いったいどこでどんな人たちが集まって連携がされているのか、把握できていないんです。在宅医療を受ける患者さんが増えていくだろうこれから先、さらに多職種連携を含めてつながりを強化していきたいと、保健所も一緒に話し合いをしながら意見を集約しています。他に、救急医療に関して、対応方法の見直しを検討しています。新型コロナウイルス感染症の流行で搬送困難例がたくさんありましたので、自転車で転んだといった軽度の症状は開業医でも対応できたらいいのではないかと考え、意見を集めているんです。
お忙しい毎日かと思いますが、リフレッシュ方法やオフの日の過ごし方についても教えてほしいです。

コーヒーが好きなんです。豆を買ってきて、ぐりぐりとミルで挽いてゆっくりコーヒーを淹れて飲むのが、日曜日の朝の楽しみですね。近くに豆を焙煎している店があるんですよ。喫茶店ではなくて、豆の販売だけを行っている小さな店でして、場所はちょっとわかりにくいところにあるのですが、たまたま人に教えてもらって行ってみたらすごく気に入ったので、それから通っています。
読者へのメッセージをお願いします。
地域の人に「ここに診療所があって良かった」と思ってもらえるように、当院だけでいろいろな困り事が解決できるようにしたい、またその道筋を見つけたいと考えています。「どの医療機関に行っていいかわからない」とお悩みの方は、当院を一度受診していただければと思います。まず患者さんを診て、自分の経験上できる治療は行い、これ以上は難しいと思ったら大きな病院や専門的な診療所を紹介しています。雑談を楽しみにいらっしゃるくらいの気軽さで、お立ち寄りいただけたらなと思います。伯耆町内の皆さんへ向けて行政が認知症予防やフレイル予防のために地区ごとの集まりを企画していますから、そういったイベントに私も積極的に参加して、交流の場が持てるといいなと思っています。