山田 健作 院長の独自取材記事
山田内科医院
(米子市/富士見町駅)
最終更新日:2023/05/15
地域のかかりつけ医として50年以上も近隣住民に貢献してきた「山田内科医院」。2022年11月に前院長の息子である山田健作先生が後を継ぎ、院長に就任した。山田院長は日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医の資格を有し、同院継承前は、勤務医として循環器疾患を中心に研鑽を積み、急性期患者の診療にあたってきた。同院では内科全般のほか、整形外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科などの領域に幅広く対応し、中でも大人の喘息やCOPDなどの呼吸器疾患の診断・治療に力を注いでいる。また、在宅療養支援診療所として訪問診療や往診にも取り組んでいる。「夜間や休日診療にも対応していますので、いつでも遠慮せずに相談してほしいですね」と語る山田院長に診療方針や今後のクリニックの展望などをじっくりと聞いた。
(取材日2023年4月6日)
地域のかかりつけ医として、幅広い診療分野に対応
医師をめざしたきっかけは何だったのでしょうか?
やはり父の影響が大きいですね。当院は1971年に父が開業したのですが、その父が患者さんから頼りにされている姿、夜中まで頑張っている姿を見て育ったので、自然と医師をめざすようになっていました。もともとは小児科を志望していのですが、あまり得意でない循環器を選択したのは、初期研修の時の指導医がすばらしい先生だったからです。その指導医は人柄はもちろん、知識も豊富で、診療全般に詳しかったんです。その先生のように、トータルな視点で診療できる医師になりたいと思いました。
これまでの経歴を教えてください。
島根県立中央病院では主に急性期の治療を行っていました。心臓カテーテル検査や心筋梗塞の患者さんを受け持つことが多く、夜中まで働いていました。鳥取大学医学部では、理論的に診療することを学び、カンファレンスの重要性や、治療方針を決定することの大切さを知りました。鳥取県済生会境港総合病院では内科全般を診療していたので、総合力を身につけるのにとても良い経験ができたと考えています。
先生が院長になってから変化したことはありますか?
前院長は地域のかかりつけ医として、内科全般を広く診察していました。私は、循環器、特に心不全が専門なのですが、そこを強調するつもりはなく、引き続き幅広く診療していきたいと考えています。心不全の患者さんは高齢の方が多く、さまざまな疾患を抱えているので、泌尿器科、耳鼻咽喉科、整形外科などの知識や経験を持っている必要があります。そのため、当院では循環器一般の診療から内科全般、さらに整形外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、褥瘡やスキンケア、外傷など小外科レベルのプライマリケアまで対応しています。もちろん、情報を得たり最新の知見を学ぶために勉強会やセミナーにも参加しています。設備の面では、以前は院内に車いすで入れなかったので改善し、感染症対策として隔離室を設けました。また、心不全には心エコー検査が欠かせないと考えているので、先進の超音波診断装置を導入しています。
動悸や息切れなど気になる症状があれば、すぐに受診を
診療の際に心がけていることを教えてください。
患者さんの話をしっかり聞くことを何より大切にしています。特に初診の患者さんについては、その人のことや病歴などがわからないため、時間をかけて問診します。病気以前に、その人自身を知ることが重要だと考えるからです。また、当院は、予約制にはしていません。予約をすると、その日に行かなくてはいけないことがプレッシャーになってしまいますからね。例えば、大雨の時に予約をしていたら、高齢者にとっては通院することが大きな負担になるでしょう。また、予約制にしていないことは、「いつでも来院していいですよ」というメッセージにもなると思います。実際、夜間や休日診療にも対応していますので、いつでも遠慮せずに相談してほしいですね。
循環器内科には、どのような時にかかるのでしょうか?
息切れ、胸痛、動悸といった症状があれば循環器内科を受診していただければと思います。年だからしょうがないと思われる方もいらっしゃいますが、ご自分で判断せずにまずは専門の医師にご相談ください。あとは一過性に意識消失した場合ですね。意識消失の場合は脳梗塞などを疑い、脳神経内科に受診、紹介されることが多いのですが、実は脳が原因で起こるケースは多くありません。意識消失した直後には、救急車を呼んだり、救急科外来に行く場合が多いと思いますが、例えば数日前に意識消失を起こし、原因がわからず気になるということであれば循環器内科にご相談ください。検査によって心臓が原因かどうかの判断につなげられます。
他に気をつけたほうがいい症状はありますか?
多くの患者さんは、胸の痛みや息切れが心配になって来院されますが、問題は本人が自覚していないケースです。明らかに息切れをしているのに、本人は大丈夫と言って受診しない場合があるんです。そうした時は、家族など周囲の人が気づいて、病院に連れて行ってほしいと思います。また、若い人だと動悸症状には気をつけていただきたいですね。「動悸は気になるけど、すぐ治るからいいや」と思うかもしれませんが、放置して良いかは心電図などの検査や診察をしてみないとわかりません。大きな病気につながる可能性もあるので、早めの受診をお勧めします。あとは、顔や足のむくみも気になります。むくみが必ず心臓に関係しているわけではありませんが、むくみの原因の一つに心不全が挙げられます。むくみ程度と軽く考えず、なかなか治らないようであれば一度検査をしてください。
訪問診療で、計画的に治療や健康管理を行う
最近はどのような相談が多いのでしょうか。
呼吸器疾患では、大人の喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)が増えているように感じます。喘息は花粉などアレルゲンの暴露や気象の変化、黄砂などで患者数が増加するのですが、COPDと喘息の合併例もあります。COPDとは、主に喫煙が原因で起こる肺の障害で、喘息とは治療法が若干異なります。当院ではスパイロメーター(肺機能検査)や呼気中の一酸化窒素濃度測定などを治療に役立てています。また、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の患者さんも多いですね。糖尿病ではインスリン治療にも対応しています。他には、睡眠時無呼吸症候群や不眠症の診察もしています。睡眠時無呼吸症候群は、高血圧の原因の一つなので、マウスピースなどの口腔内装置や持続陽圧呼吸療法によって治療します。
訪問診療にも力を入れているそうですね。
さまざまな理由で通院が困難な患者さんのもとを定期的に訪問し、計画的に治療や健康管理を行っています。定期訪問に加え、緊急時には必要に応じて臨時往診や入院先の手配なども行います。主な治療内容は、点滴、静脈注射、胃ろう・腸ろうなどの経管栄養、在宅中心静脈栄養、在宅酸素、緩和疼痛ケア、褥瘡治療などです。私の専門である心不全の患者さんにとって訪問診療はとても有用で、心不全以外の臓器障害で在宅サービスの有用性が示されている疾患が現在ありません。心不全の増悪因子の半分は肺炎や不整脈などですが、残りの半分は薬の飲み忘れや塩分の取りすぎなど自己管理によるものが占めています。訪問診療をすることで、患者さんの生活や自己管理の部分が医師の目で確認できるため、改善点がわかりますし、患者さんの生活に合わせたアドバイスもできるんです。また、終末期を在宅で過ごすことを望まれる患者さんには、在宅での看取りも行っています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
私の専門は循環器ですが、引き続き内科全般を総合的に診療していきたいと思っています。訪問診療にもさらに力を入れたいですし、今後は禁煙のための外来も開設する予定です。そして、心不全の一番の原因である高血圧の予防と改善に注力したいと考えています。高血圧には、原因のはっきりしない本態性高血圧と、原因がわかっている二次性高血圧があります。前者は塩分の取りすぎ、肥満、運動不足、アルコールなどが原因と考えられていますので、それらを啓発していきたいと思います。心疾患は命に関わることもある重大な疾患ですので、健診などで引っかかった方や気になる症状がある方には気軽に来院してほしいですね。そして何より、地域のかかりつけ医としてこれからも皆さんのお役に立ちたいと思っております。体調面で心配なことがあれば、些細なことでも構いませんので、いつでもお気軽にご相談ください。