田村 大介 院長の独自取材記事
田村クリニック
(宝塚市/逆瀬川駅)
最終更新日:2025/06/09

阪急今津線の逆瀬川駅から徒歩約4分の場所にある「田村クリニック」。1991年に院長の田村大介先生の父が開業したクリニックを、2020年から本格的に引き継ぎ現在に至る。父と同じく呼吸器が専門で、日本呼吸器学会呼吸器専門医と日本内科学会総合内科専門医の資格も持つ田村院長。神戸大学医学部附属病院に長く勤務し、後進の指導にも積極的に取り組んできた経験を生かし診療を行っている。冷たそうなファーストインプレッションが悩み、と話す田村院長だが、言葉の端々から患者への優しさと真面目さが伝わってくる。4月から女性医師が診療に加わり、検診・予防接種に特化した外来も新設。常にクリニックと自身のアップデートに努力する田村院長に、診療のスタンスや呼吸器内科を専門とする強み、今後の展望までじっくり聞いた。
(取材日2025年4月15日)
木曜午前診療を再開、外来も新設し診療が充実
新しい先生が入職され、診療体制も強化されたそうですね。

はい、今年の4月から外来体制を少し変えて、充実を図りました。実は私が当院を父から完全に継承した2020年から木曜日の午前診療をずっと休診にさせていただいたんです。患者さんに長らくご不便をおかけしていましたし一時は自分ですることも考えたのですが、当院に私とは違う空気や目線を運んでくれることも期待して神戸大学から女性の先生に来てもらいました。患者さんへの接し方も私とは全然違いますし、やわらかい雰囲気が良いと思っています。さらに第2・第4火曜には、検診・予防接種に特化した外来も新設しました。こちらも担当は女性の先生です。日本糖尿病学会糖尿病専門医でもいらっしゃるので、当院の内科診療の幅も広がりますし、さまざまな相談に乗れる「かかりつけ医」としての役割も強化できるでしょう。また将来的に二診制で稼働できれば、患者さんをお待たせすることも少なくなると期待しています。
どのような患者さんが来院されますか?
父の代からの患者さんも多く、呼吸器関連の疾患はもちろん、風邪を含めた一般的な内科疾患や生活習慣病、予防接種などさまざまな診療を行っています。私が診療するようになって、改めてわれわれが呼吸器を専門としていることにフォーカスしたホームページを作り、告知したことで、呼吸器関連の患者さんも増えました。年齢層も10代の方からご高齢の方まで幅広いのが当院の特徴です。5歳以上のお子さんも断らず診療させていただいています。小児科特有の疾患が疑われる場合は専門の先生にご紹介しますし、大人の方も専門的な医療が必要な場合は適切な病院におつなぎします。
先生の診療方針、モットーについても伺います。

医師は常に患者さんに優しくあるべきだ、というのが私の信念です。患者さんはご自身のお体についてわからず困って来院されるのですからそれに気づかねばなりません。新型コロナウイルス(COVID-19)流行初期の頃、われわれ医師の中でもCOVID-19についてはわからないことだらけでした。流行当初はアルコールやマスク、防護服なども手に入りませんでした。そんな中発熱患者は診察できませんというクリニックがあったことは流行初期にはやむを得なかったことだと思います。実際自分も未知の感染症を診察することに怖さもありましたが、発熱して不安で困っている患者さんを診ることはクリニックの医師の責務だと思い、流行初期から発熱患者さんの診察を続けてきました。COVID-19流行時にわれわれが頑張ってきたことが地域の患者さんの健康と安心に少しでもつながっていたら医師冥利に尽きるなと思いますし、これからも続けねばなりません。
スペシャリティーは「咳」に関する診断・治療
ご専門の呼吸器について、お聞かせください。

呼吸器内科と言われてもピンとこない方もおられるかもしれませんが、呼吸に関わる肺や気管支の病気を専門的に診ます。具体的には気管支喘息や肺炎、気胸、肺気腫、肺がん、肺結核などの呼吸器疾患の診断・治療ですね。クリニックに来られる方は咳の悩みが多いですが、咳について語ると1冊の本になるくらい専門性が高いんですよ。多いのは喘息性の咳ですが、結核や肺がんのような難しい病気が隠れている場合もあるので、エックス線検査できちんと評価して咳の原因を突き止め見極めることが重要です。呼吸器内科の医師は咳の治療やレントゲンの評価が得意ですし、一般的な風邪の対応も得意だと思いますよ。
大学病院ではどのような経験を積まれたのですか?
私自身は最初から呼吸器内科を志望して、専門的に臨床経験を積ませてもらいました。兵庫県立がんセンターに入職して1年間は肺がんの患者さんを数多く診療し、大学病院でも肺がんの治療や緩和医療も多く経験しました。大学では主に肺がんを研究するグループに所属し、中でも気管支内視鏡の検査、診断に力を入れていました。実は今でも加古川中央市民病院で内視鏡の指導を行っています。その後大学教員としても、学生や若い医師たちの指導にも従事しました。医師として一番大事なのは人に対する優しさを持つことだと思っているので、ことあるごとに若い子に伝えてきましたね。そういった経験やつながりを生かして、クリニックでの診療を行っていますし、近隣の基幹病院の呼吸器内科とも密に連携を取っています。
患者さんと接する時に心がけていることはありますか?

喘息など継続的な治療が必要な疾患でも、症状が治まると薬をやめてしまう患者さんがいます。治療の大切さや見通しについて理解していただくために、わかりやすく説明するように心がけています。それと、「正しい治療を行う」ことを大事にしています。風邪一つとっても基本のガイドラインに沿って科学的根拠に基づいた診療をして、必要な時に必要な薬を適切に出すこと、不必要な薬は出さないことが大切だと考えています。ただ、ガイドラインに沿って画一的な治療をするだけではなく、患者さんの年齢や環境、それぞれのニーズや思いに合わせた治療をしていきたいですね。また当院ではスタッフ一同、患者さんを長い時間お待たせしないというポリシーで診療しています。ベテランのスタッフが多く私から見ても、事務的な業務処理がすごく速く、無駄な時間がほとんどないのではないでしょうか。
画像を読み、病態を見極め、治療の道筋を立てていく
先生が呼吸器を専門にされたのは、やはりお父さまの影響でしょうか?

そうですね。父が呼吸器の医師でしたので、それ以外を選択する考えはありませんでした。いざなってみて気づいた呼吸器内科の魅力もたくさんあります。まず、内科の医師に必須の項目を専門的に診ることができます。心臓や肺といった臓器は人間のバイタルに直接関わる部分で、そこの管理ができるというのは医師として大きな強みだと思います。また、がんやアレルギー、喘息など診療領域も広く、内科の医師に必要なスキルが自然と身につきます。私が神戸大学の医局にいた頃に、何人の若手医師を呼吸器内科へ導けたかはわかりませんが、後輩の医師に相談された時には、呼吸器内科の魅力を熱く語っていました。その頃の熱意は今も変わりません。
これまでの経験で、現在の診療に生かされていることはありますか?
エックス線写真やCT画像から読み取れることが、どんどん増えてきていると感じます。呼吸器専門医としては「ここに影がありますね」だけではなく、影のある肺の中で何が起こっているのかまで想像することが必要です。これは今までの経験なくしてはできないことで、5年前、10年前の自分よりも現在のほうが確実にその技術が深まってきていると感じています。肺の中でどのようなことが起こっているのかをレントゲンやCT画像から読み取り、起こっている病態に対して適切に診断・治療を行うことが重要です。その上で患者さんにそれらをかみ砕いて説明し最善の策を考えるのが私の仕事です。簡単なことではありませんが、だからこそ面白くやりがいを感じています。患者さんのために自分の知識や経験を生かすことができるのが楽しいです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

診療経験を積み呼吸器内科医としての専門性を高めながらも、総合内科専門医として内科全般を詳しく診ることのできる医師をめざしています。新しい先生に来ていただき、外来も新設しましたが、診療については今までどおり、呼吸器内科の専門クリニックとして、また総合的に診療を行う内科としても、日々の健康で心配なことがあればまずは気軽に相談していただける窓口になりたいですね。これからも引き続き地域の医療に貢献してまいります。