武部 健 院長の独自取材記事
武部整形外科リハビリテーション
(尼崎市/立花駅)
最終更新日:2024/10/10
兵庫県尼崎市浜田町。国道2号沿いにある「武部整形外科リハビリテーション」は、1985年の開院以来、地域の医療を支え、近隣に暮らす人々の健康を父子2代にわたり見守ってきたクリニックだ。「質の高い医療で社会に貢献する」を基本理念とし、地域に根差した治療を行い、住民の健康で豊かな生活をサポートすることをめざしている。整形外科を中心に診療を行うほか、耳鼻咽喉科にも対応している。2019年7月には院内にフィットネス施設を開設し、運動による予防を含めた総合的医療サービスを展開している。「自分が育ったこの町で、皆さんに愛されるクリニックでありたい」とにこやかに話す武部健院長に、クリニックで行っているさまざまな取り組みや、これまでのキャリアについて話を聞いた。
(取材日2022年10月24日/情報更新日2024年9月12日)
医療と運動をつなぎ、地域の健康増進に貢献する
現在のクリニックの状況について、教えてください。
当院は、1985年に私の父である武部恭一が開院し、地域に根差した整形外科医療とリハビリテーションを提供してきました。来院される方は近隣にお住まいの方を中心に、地域性を反映して膝や腰に痛みを持つ人や骨粗しょう症など高齢者の方が多いです。夕方には、スポーツでけがをした中学生高校生、その後には会社帰りのお勤めの方などが来院され、幅広くいろんな方に来ていただいています。2018年には入院施設の代わりに、スペースを生かしてデイケアルームの拡充とフィットネス施設を開設しました。現在、医療・デイケア・フィットネスの3本柱で、地域の皆さんの健康増進に貢献できればと思い、ブログでの発信や院内誌「つなぐ」を発行するなどさまざまな取り組みを行っています。2024年5月には改装し、リハビリテーション室がさらに広くなり運動スペースの拡大をし、充実した運動が実施できる環境が整いました。
デイケアやフィットネス施設を開設したのはなぜですか。
勤務医時代、治療に来られた患者さんに「運動してくださいね」と話をしても、「どこで運動したらいいんですか」「どんな運動をしたらいいんですか」と質問されることが多かったんです。確かにそうだなと、もどかしさを感じていました。2019年にクリニックを継いで、当院なら患者さんが運動できる場所を提供できるなと。「こんな運動をしてみましょうか」と患者さん一人ひとりに合わせて直接指導をすることができます。「こんな動きができなくて困っています」というお悩みに、より具体的に介入することができます。治療が済んだ患者さん、まだ痛みが残っている患者さんなど、いろんな症状の要望に応えることができると思い、運動施設の充実を図りました。
医療と運動をつなぎたい、という思いがあったのですね。
そうですね。医療、デイケア、フィットネスの3本柱が連携して、患者さんを見守っていくことが重要だと考えています。腰痛や膝痛で来院された方がリハビリテーションを卒業した後も、院内の施設で運動を続けることができれば便利でしょうし、治療が済んだ後の状態を保つのに役立てられたらと思っています。治療して終わりではなく、健康維持、そして向上という流れをこのクリニックの中でつくれたらうれしいです。運動に慣れていない方にも安心して取り組める環境だと思います。歩きにくかった方が安定して歩けるようになったり、股関節の可動域が広がって転倒しにくくなったりすると、週1回2回であっても、運動を続ける意味があるなと実感できると思います。
父の姿を見て、整形外科の医師の道へ
先生が医師をめざされたきっかけを教えてください。
クリニックの上階が自宅でしたので、父が夜中に「急患だ!」と言っては、飛び起きて出ていく姿を見ていました。子ども心に「大変だなあ、でも患者さんのために頑張っているんだな」と感じていました。朝起きたら、今から診察に行く父がいて、学校から帰ってきたら、まだ診察をしている父がいて。医療は身近な存在として育ってきたと思います。それで自然と私も整形外科の道に進みました。私自身スポーツが好きですし、学生時代はスキーを楽しみ、勤務医時代には加圧トレーニングについても学ぶなど、筋力トレーニングにも興味を持ってやっていました。
理事長、院長ともにスポーツ医学にも精通しているのですね。
高齢者の方が中心のリハビリテーションのほかに、アスレチックリハビリテーションを行っています。尼崎サッカー協会の医事委員をしており、サッカーチームの人たちが来院することもあります。また、サッカーチームの育成世代の担当医もしており、サッカーはもちろんのこと、少年野球チームなどいろいろなスポーツで将来、アスリートをめざしているような育成年代の子どもたちを見ています。運動している彼らはリハビリをした後、さらにハイレベルな動きにも対応しないといけないので、その辺りもフォローできるようにしています。
大学院やアメリカ留学など、さらなる学びの機会を持たれていますね。
周囲にそういう人が多かったので特別なこととは思いませんが、大学院や留学で研究に専念する時間を持てたことは良かったです。臨床をした後、一度基礎に戻りたいという思いが湧きました。学生時代に詰めきれなかった部分をじっくり研究することで、疾患に対する理解が深まると考えました。テーマは「軟骨」。どういった具合で痛むのか、変形性関節症に対してどういうアプローチができるのか研究しました。大学院では外来の仕事をしながらでしたので、留学先では研究だけに没頭する環境に身を置けたことが新鮮でした。日本とアメリカの施設面、資金面、文化の違いなども知ることができ、有意義でしたね。今の臨床に生きているかはわかりませんが、自分にとって深みを得た、いい経験をさせてもらったなと思っています。
健康寿命を延ばすために質の高い医療の提供をめざす
骨粗しょう症の外来、耳鼻咽喉科があるのも特長ですね。
骨粗しょう症は通常の外来に加えて、週1回予約制の外来を設けて、診察しています。骨粗しょう症により腰椎、股関節の骨折を起こすと、生活レベルが低下します。学会でも腰椎と股関節の骨密度測定を勧めています。当院では腰椎と股関節の骨密度を直接測定できる装置を導入しているので、骨密度検査を受けることをお勧めしています。耳鼻咽喉科については、私の妻が日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医であること、この地域に耳鼻咽喉科が少ないということで開設しました。みみ・はな・のどの診察の他にも睡眠時無呼吸症候群の治療、補聴器の外来を行っています。整形外科にある耳鼻咽喉科なので、専門性の高い治療にも取り組んでいます。例えば、耳鼻咽喉科で診る疾患の一つにめまいがありますが、平衡感覚の回復を目的としたリハビリテーションを行っています。
デイケアについて詳しくお聞かせください。
当院のデイケアは要介護者または要支援者が対象となります。日常生活の自立を助けるための理学療法や、そのほか必要なリハビリテーションを行うサービスです。週に6日、多い曜日では1日に5回セッションがあります。1回100分、個別のリハビリテーション、天井から下げられたロープを用いた運動、物理療法を行っています。高齢者といっても、本当に幅が広いですね。私が言わなくても運動する人は大丈夫なので(笑)、今まであまり運動をしていなかった人にこそ、利用してほしいと思います。
来院される方へ、メッセージをお願いします。
「ここに来たら元気になった」と言ってもらえるとやりがいを感じますね。当院の掲げる「質の高い医療を提供する」ために毎週持ち回りで疾患や治療方法、リハビリテーションについてまとめ、院内で勉強会をしています。スタッフ一同、自己研鑽に努めています。またコロナ禍で中止していましたが、2023年10月に患者さんのために「健康教室」を再開、年に4回実施しています。ロコモのNPO法人による全国大会で健康教室開催による取り組みが銅賞を受賞しました。待合室には「待ち合い体操」という、簡単にできるオリジナルの体操のポスターを掲示していて、それを見て体を動かしている患者さんもいます。私も診療を終えた後、院内のフィットネス施設で運動しています。時々、患者さんとも顔を合わせて「調子はどうですか」と、言葉を交わしています。一緒に楽しく運動して、その人にとっての「健幸=健やかな幸せ」を実現できるよう、頑張ってまいります。