姜 京富 院長、姜 純希 先生、金 明仙 さんの独自取材記事
朝日診療所
(神戸市長田区/高速長田駅)
最終更新日:2022/11/21

神戸高速鉄道東西線・高速長田駅から徒歩6分の「朝日診療所」を訪ねた。午前診療の締め切り時間が過ぎても、待合室にはまだたくさんの患者がいて、スタッフも忙しく行き来している。院内が一段落するまで待って、やっと会えた姜京富(かん・きょんぶ)院長は、疲れた様子もなく、快活な笑顔でエネルギッシュな雰囲気。さまざまな患者の相談に快く親身になって相談に乗ってくれるため、親子3世代で通う患者もいるという。そんな姜院長に娘の純希(すに)先生、金明仙(きむ・みょんそん)看護師長も加わり、和やかに取材が始まった。時には冗談を交えながら、日々の診療について、また医院がめざす方向、さらにはAlways say 「Yes」の信念まで、じっくりと聞いた。
(取材日2022年10月21日)
病気の裏に隠れた「気」の疾患まで、診察する
来院する大勢の患者さんに、先生が心がけておられることはどんなことでしょうか。

【姜院長】人を診るということに尽きますね。ただ単に疾病の診断だけでなく、その人の生活環境や背景を把握するよう心がけています。そのためにも、適切な疾病診断は不可欠であり、私が医療知識を深めるため、一生勉強し続けている理由でもあります。私の診療スタイルは「患者さんを診る」ということです。それはすなわち、「患者さんの気を大切にする」ということなのですが、気とは、エネルギーの「気」だけでなく、気持ちの「気」も含み、常に患者さんの心配事や相談事に真摯に対応することによって、患者さんの「気」を上げるよう心がけています。
どういう症状や訴えの患者さんが多いですか?
【姜院長】「胃が痛い」などおなかの不調を訴えて来院される方が多いです。絶食で来られた場合はその日のうちに胃カメラ・腹部超音波検査をするようにして素早く診断をつけることをモットーにしています。痛いのを我慢して食事も取れずに来院した人に、「明日また来てください」と告げるのは、患者さんにとってつらいですよね。すぐに検査をし、おおかたの方向性をつけるようにしています。胃腸疾患の約7割は心の状態、すなわち「気」が関与していると考えています。がんや潰瘍、胆石などの有無をしっかり診た後、「気」の問題の解決に向けてのお話をするというスタンスで診療しています。先ほど申し上げた「気」を診る、ということにもつながるのですが、病気の裏には、家庭や職場の問題が隠されていることも多いです。こちらが「何か思いあたることはないですか?」と質問すると、「ああ、そうだ」と患者さんに気づきがあったりしますね。
胃・大腸内視鏡検査や超音波検査も、需要があるそうですね。

【姜院長】専門が消化器内科ですから、胃腸のみならず肝臓、膵臓、胆嚢などの消化器疾患をすべて診ますし、腹部、頸動脈の超音波検査は私が指導した臨床検査技師が行っています。心臓超音波検査は、循環器の先生が担当しています。胃・大腸の内視鏡検査は、娘の純希(すに)先生のほうが患者さんに人気があるようです(笑)。
【純希先生】女医ということで、やさしくゆっくり検査を進めてくれるイメージがあるからかもしれませんね。基本的に鎮静剤は使わずに検査しますが、例えば開腹手術の既往がある方や、痩せ型の方など、痛みが出そうな患者さんには、鎮静剤を使って半分寝た状態で検査をすることもあります。しかし鎮静剤を使用しなければ、患者さんと一緒に会話しながらモニターで胃、腸内を見て検査ができますので、患者さんにとっても安心だと思います。どちらにも対応しますので、気軽にご相談ください。
地域全体の健康寿命を伸ばすため、日々努力をする
純希先生は体に良いことが大好きだそうですね。

【純希先生】はい。できるだけ無農薬の物を食べたり、水素水を飲んだり…。あと運動も好きですね。いまは出産したばかりなので、子どもをあやしながらバランスボールを使い、効率よく運動をしています。運動を継続されている患者さんを、本気で尊敬します。健康寿命を伸ばす、という父の考え方の影響が大きいと思います。私が医師をめざしたのも、父の影響です。神戸で震災があった時、道路も寸断してしまって大変な中、ずっとバイクで病院へ通う父の姿を見て、医師になろうと決めました。消化器内科に進んだのも、父と同じように人を診たい、人と関わりたい、という気持ちがあったからです。父と私はタイプは違うけれど、大事にしたいものは同じなんだろうな、と思います。
看護師長さんの仕事や、院内での役割についても教えてください。
【姜院長】たくさんあります(笑)。私が何かをど忘れしてしまったら、すべて補ってくれます。特に、長田育ちなので地元のことや住んでいる人についても詳しく、私が把握したいと思っている患者さんの家族関係や生活の背景を知り得ているので、医院を支えるというより、患者さんを支える縁の下の力持ちという感じです。
【金看護師長】私の祖母が朝日診療所の往診を受けていたことがきっかけで、資格を取って経験を積み、こちらに来てもう20年以上がたちますね。いつも心がけてきたのは、できるだけ患者さんと同じ目線で、同じ立場で考えるということです。そこを心がけながら、これからもやっていきたいと思っています。
リハビリテーションを通して、医院がめざしていることは何ですか?

【姜院長】地域のかかりつけ医院、ナンバー1になるつもりで地域の人たちを巻き込み、みんなで助け合って、長田区の健康寿命を伸ばすことが私の目標です。人は、年齢を重ねると動くことがおっくうになったり、運動機会も減っていきます。そうすると筋力が弱ってしまい、転んで骨折して入院してしまうことも多々あります。その防止のため鍼灸師、柔道整復師を含むスポーツトレーナーによる運動指導に力を入れ、効果を上げています。
【金看護師長】退院してすぐの高齢の方は、自力で歩けなくなっていることが多いので、当院では入院先の先生に「治療が終わったら早く帰してください」とお願いし、リハビリテーションに通院してもらうことで早々に筋力が戻っています。
患者一人ひとりに合わせるオーダーメイド医療を実践
大勢のスタッフさんがいらっしゃいますね。

【姜院長】人を診ていく仕事は、少ない人数では難しいです。当院には看護師、受付スタッフだけでなく、臨床検査技師、管理栄養士、リハビリテーションスタッフを含め、職員数は40人ほど(2022年10月21日現在)になります。20人ぐらいが交代で常時いるので、雨が降ったりして患者さんが少ないと、職員の数のほうが目立ってしまっています。「これで経営は大丈夫かなあ」と思うこともありますよ(笑)。職員一人ひとりは患者さんと親身に接して、必要な医療のヒントを引き出してくれています。
意志の統一や連携も大変なのではないでしょうか? 指標として掲げていることなどはありますか?
【姜院長】Always say 「Yes」です。いつも門戸を開いて、患者さんを受け入れています。人というのは、主張するものです。それをできるだけ聞いてあげる。Yesから始まって、どうしていこうかという話ができたらいいのだと思います。Noから始まることで良いことはひとつもありません。
【金看護師長】当院のスタッフはみんな、よく患者さんの話を聞くように心がけています。院長が常々言っている、患者さんは一人ひとりバックグラウンドも異なるのでマニュアルどおりではなく、「医療もオーダーメイドだよ、みんな違うからね」の言葉どおり、その人に合わせた会話を心がけています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【姜院長】私が最近、興味を持っているのは「老化も病気」という考え方です。「年だから……」と放置せず、どう行動すべきか? これからの医療は、老化と向き合う必要性が出てきたと思います。当院では老化予防の一つとして、運動を推奨しています。心拍数が少し上がるぐらいの運動を、1週間でトータル150分することを、お勧めしています。毎日なら、20分間の運動が目安なので、誰でも習慣化しやすいと思います。
【純希先生】当院では運動指導と月2回の体操教室を開催しています。また、誰でも簡単にできるオリジナルエクササイズや体操教室の動画を運動指導のスタッフが作成し、動画サイトで配信しています。新型コロナウイルスの流行で外出できないときなどに活用していただけたらと思います。今後も健康寿命を伸ばす良いアイデアを、皆さんに提供していきたいと考えています。身近な医院として、気軽に受診、相談していただければと思います。