由井 倫太郎 院長の独自取材記事
田中医院
(神戸市東灘区/摂津本山駅)
最終更新日:2025/03/26

摂津本山駅南口から東へ歩くこと7分、趣のある街並みの一角に「田中医院」はある。1961年に「田中小児科」として開業し、1989年に前院長の田中良樹先生が継承。そして2024年から由井倫太郎先生が院長に就任し、新たな門出を迎えた。由井先生は日本外科学会外科専門医の資格を持ち、消化器外科を専門とする専門家。約10年間は高度救命救急センターで救急医療に従事。初期診療から集中治療まで一貫した診療スキルを持ち、疾患を問わず診られる強み、適切な処置への判断力を生かして診療にあたっている。訪問診療や悪性疾患を持つ患者の全身管理、緩和医療にも対応。幅広いニーズに応え、地域に寄り添う「かかりつけ医」として長く頼られる医院を引き継いだ思いや、診療において大切にしていることを聞かせてもらった。
(取材日2024年12月12日)
地域で65年以上、患者の健康をサポート
長きにわたり地域を支えてきた医院ですね。

この場所で、前院長の田中良樹先生のお父さまが小児科として1961年に開業しました。1989年に田中先生が継承し、お父さまが亡くなるまでは田中先生は小児科として一緒に診療されていたそうです。田中先生は高血圧と心疾患がご専門でしたので、それにつながるような糖尿病の患者さんや、高血圧症などの生活習慣病、生活習慣病が原因で起こる狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の患者さん、認知症の患者さんへの診療を、現在も引き続き行っています。風邪や腹痛などの一般内科や呼吸器、循環器内科、在宅医療まで幅広く対応している他、私はこれまで消化器外科を専門としてきましたので、消化器にまつわることで何かお悩みや健康診断で異常を指摘された際には、ぜひご相談ください。
由井先生のご経歴をお聞きします。
医師の多い家系で生まれ育ち、父や祖父、母方の祖父も外科の医師だったので、私も幼い頃から自然と、将来は手術ができる医師になりたいと考えていました。関西医科大学卒業後は、同大学の附属病院や大阪赤十字病院に勤務。2013年からは枚方にある関西医科大学附属病院の高度救命救急センターに配属され、主に腹部の緊急手術を担当する他、救急の一般診療を行っていました。高度救命救急センターには、生命に関わる重症患者さんに対応する中でも、特に重症度の高いケースや特殊疾患の方が運ばれてくるため、事故などによる外因性や内因性の疾患まで、本当に多様なケースの診療にあたってきました。
こちらの院長に就任されたのは、どのようなきっかけからだったのですか?

私は以前から、最終的なキャリアとして地域医療に携わりたいと考えており、外科の道に進んだのは、全身を診られるような医師になるという目標をかなえるためでもありました。田中先生と私の父は大学の同窓生で、医師会でもお付き合いがあったご縁から、私に医院の継承の声をかけてくださいました。実際にこちらで働くようになり、「開業されたお父さまや田中先生は、この地域の皆さんから信頼されていらっしゃるんだなあ」と実感することがたくさんあります。患者さんの中には「私は大先生、つまり田中先生のお父さまの時代から、ずっと来ているんです」と、すごくうれしそうに教えてくださる方がたくさんいらっしゃるんですよ。
救命救急科で培った幅広い診療と適切な医療への道案内
由井先生のご経験から、どういった診療を得意とされているのでしょうか?

救命救急治療においては、重症の患者さんを救命するために初期診療が重要で、その質も高くなくてはなりません。さまざまな病気や状況に対応する必要があり、専門的な治療が必要であれば、他科の専門の先生に引き継いで一緒に治療していくこととなります。当院にも多様な症状の患者さんがいらっしゃるので、どんな方でもまずは受け入れさせていただき、その後の交通整理が、私の得意とするところです。どのような治療を行っていくべきか、道案内を経て、適切な医療の提供に導くことを心がけています。
生活習慣病などの管理にも、引き続き注力されているそうですね。
大学病院で働いていた頃、脳卒中や心筋梗塞になって運ばれてくる方がたくさんいらっしゃったのですが、多くの原因は糖尿病や生活習慣病などがしっかり管理されていないことにありました。そういった経験から、病気が悪化して結果的に大病を招いてしまうことにならないように、服薬だけでなく生活習慣の見直しが大切だと考えています。ヘルスメンテナンス、つまり病気にならないための予防や健康を維持・増進するためのアドバイスも含めて、患者さんの日常的な管理をきちんと行っていきたいです。当院では予約制で専属の管理栄養士さんによる栄養指導を定期的に行っているところも、特徴の一つかと思います。そういった食事療法や運動療法をベースも含めて、それぞれに患者さんに合わせてできるだけ具体的なアドバイスを行うことが大事ですね。
日々の診療で心がけていることはありますか?

当たり前のことですが、接遇面を大切にしています。体の具合が悪い方や、何らかの不安や心配事を抱えられている方がいらっしゃる場所ですので、それを察して、患者さんの気持ちに寄り添った対応や行動を取り、嫌な思いをせずに帰っていただけるよう常日頃から心がけています。現在は看護師さんが3人、受付の方が5人の他、管理栄養士や超音波の検査スタッフに来ていただいています。スタッフ一同、患者さんと温かいコミュニケーションを図り、安心していらしていただける雰囲気づくりを大切にしています。
緩和ケアにも対応し終末期まで寄り添う在宅医療
在宅医療にも取り組まれています。

高齢で足腰が悪くなるなど通院できなくなった患者さんのご自宅へ、定期的に伺っています。初めのうちは田中先生と一緒に、今年の夏頃からは私一人で伺うようになりました。在宅の患者さんが急に具合が悪くなったというご相談もよくいただくのですが、そういった場合は特に、幅広い疾患の急変に対応するという救命救急センターでの経験が生きていると感じます。重症度を見逃さず、どのタイミングで救急病院に送るべきかなどを常に考えて、迅速に適切な対応を取っていけるところは在宅医療に向いているのではないかと思いますし、患者さんやご家族にとって安心要素になるとうれしいですね。信頼関係を築き、一人ひとりに合った医療をお届けできるよう、努めてまいりたいと思います。
悪性疾患を持つ患者さんにも対応されているとか。
はい。私はこれまで消化器外科を専門として、悪性疾患の手術から緩和ケアまでたくさんの患者さんを診てきました。その経験を生かして、当院でも悪性疾患の患者さんの全身状態の管理の他、体や心の苦痛を和らげるため、在宅での緩和ケアにも取り組みはじめ、少しずつご依頼をいただいている状況です。自宅や施設において、福祉や介護など多職種の方々とも連携しながら、患者さんが住み慣れた地域で、最期まで自分らしい暮らしを続けていけるよう、お手伝いができればと思っています。
最後に、今後のご展望や読者や地域の方々へのメッセージをお願いします。

今後は外科的な処置が必要な患者さんにも対応し、内科・外科問わずどんなお悩みをお持ちの方でも来られる場所にしていきたいです。地域の方々にとって何でも気軽にご相談いただけるような、頼れるクリニックであり続けられるよう、日々精進してまいります。小さなお悩みでも「こんなことで行ってもいいのかな?」と考えず、ぜひご相談にいらしてください。お待ちしています。