島津 保生 院長の独自取材記事
宮田診療所
(高槻市/摂津富田駅)
最終更新日:2026/06/19
高槻市宮田町にある「宮田診療所」は、開業以来60年以上にわたって地域住民の健康に寄り添ってきた。落ち着いた住宅街の中にあり、0歳児から90歳を超える高齢者までが訪れる、まさに町のかかりつけ医だ。「どんな人でも気軽に来られる場所が私にとってのかかりつけ医の在り方なんです」と、笑顔で話してくれたのは島津保生(やすお)院長。日々の診療の傍ら高槻市医師会の理事としても活動。高齢化が進む地域において、骨粗しょう症を原因とする大腿骨頸部骨折の一次予防に向けた取り組みに尽力している。町の人々の健康についての悩みに対して総合的・包括的に対応し、地域の健康を支える島津院長に、その取り組みや想いを聞いた。
(取材日2026年3月5日)
何でも診られる、地域のかかりつけ医として
医師をめざした経緯を教えてください。

一番大きかったのは、前院長である父の存在だと思います。小さな頃から父の背中を見ていたので、医師になったのは自然な流れでした。また、「医師になること=この診療所を継ぐこと」と考えていたため、父の後をそのまま継承。気がつけばこの診療所も開業してから60年以上がたちました。開業した頃はこの辺りには人家も少なく、近辺では数少ない診療所でした。診療所の名前が地名の「宮田」なのはそのためです。患者さんの中には3世代、4世代にわたって来ていただいているご家族もいらっしゃいます。続けられているのは地域の皆さんのおかげです。近年はこの地域も高齢化が進み、お年寄りが増えました。そんなふうに地域の世代の移り変わりを感じながら、「町の診療所」として何ができるのかを常に考えています。
宮田診療所はどのような診療所ですか?
「地域のかかりつけ医」としての役割を大切にしたいと思っているので、症状や年齢、性別問わず、なんでも相談できる場所でありたいと考えています。近年は医師がそれぞれ専門に特化しすぎて、どこに相談すればいいのか迷うことも多かったと思います。最近は「総合内科」を掲げている病院や総合病院の診療科があり、以前に比べると患者さんは相談しやすくなりました。それでもやはり、どこに相談すればいいかわからない体調不良もありますし、ちょっとしたケガや、やけどなどをすることもあるでしょう。そんな時、難しく考えることなく駆け込める場所。それが当診療所であればいいなと考えています。もちろん、より専門性の高い治療が必要となれば専門の医師を紹介しますので、「なんとなくおかしい」といった不調を感じたときは気軽にご相談ください。
先生は内科を専門的に勉強されていたのですか?

当診療所は内科・小児科・形成外科・皮膚科と幅広い診療を行っていますが、私が医大で専攻したのは形成外科です。出身大学の形成外科では全身熱傷など、全身管理が必要な症例がたくさんあったので、患者さんの全身状態を診る姿勢が身につきました。事故の手術をする時にも生活習慣病などの持病をお持ちの場合は、常に全身の状態を観察しながら治療します。また、生まれつき体表に異常があるときには、形成外科的に手術することもあります。このように医療行為では、診療科目を超えて対応することが多くあります。単なる内科ではなく「地域のかかりつけ医」として、ケガの治療や縫合などにも対応できるのは、私の強みだと思っています。
「宮田診療所に行けばなんとかなる」を大切に
実際に来院する患者さんの訴えとして多い症状はありますか?

ほとんどは内科的な症状ですね。風邪や胃腸炎、頭痛などの方も多いですし、生活習慣病などの管理のために来る方も多いです。学校や家で負った外傷の場合もありますし、なんとなく体調が優れないと言って来る方もいます。予防接種や健診を受けに来る方もいます。これと決まった症状があるわけでなく、皆さんそれぞれの理由で当診療所を訪れます。「取りあえず宮田診療所に行けばなんとかなる」と、思っていただけていることがうれしいですね。些細なことから大きなことまでなんでも気軽に相談に来てほしいですし、当診療所を自分の健康を守るため、そして不安を解消するために役立ててほしいと思います。
高槻市医師会理事としての取り組みについて教えてください。
現在、高槻市医師会の理事として地域連携担当を担っています。専門は大腿部頸部骨折・脳卒中・糖尿病。特に、骨粗しょう症を原因とする大腿骨頸部骨折に関しては、一次予防に向けた取り組みを始めているところです。最近、日本骨粗しょう症学会から新たなガイドラインが発表されました。骨粗しょう症を見つけるための検査法として、これまで主流だった超音波を使った検査ではなく、2種類のエックス線を使うDEXA法を推奨していこうというものです。超音波やCTなどに比べて、この検査法は精密に骨粗しょう症の検査ができるんです。最近、この装置を院内に保有しているクリニックが増えています。骨粗しょう症に関しては検査を受ける人が極めて少ないのが現状ですが、それぞれのクリニックが連携を行うことにより、精度の高い検査を皆さんにもっと気軽に受けてもらえるよう尽力しています。
高齢者在宅医療の支援に向けた取り組みを教えてください。

高槻市医師会では高齢者対策も担当しています。家族や本人の死生観なども含め、在宅で家族を看るのは生半可なことではないと思います。近年は在宅医療を専門にする医師がこの地域にもおり、そうした医師たちと訪問看護師、介護士、ケアマネジャー、ケースワーカーといった福祉の専門家たちの連携が行き届いています。もちろん、当診療所の患者さんだった人が高齢になってそのまま在宅医療に移行するケースもあり、私もご本人やご家族の相談に応じています。特に終末期の場合は、さまざまな意味での準備や協力が必要ですし、覚悟も必要だと思います。ですから、みんなが無理しすぎることなく、より良い時を過ごしていくにはどうするか考えることが大切です。本人や家族の努力には限界があります。必ず私のような医師や地域の資源を最大限に生かしてほしいと思います。
終末期の在宅医療を通して、死と向き合ってほしい
高齢者に向けた医療について考えをお聞かせください。

高槻市医師会の在宅医療・高齢者対策を担当し、いろいろな取り組みをしてきました。かつては実際の在宅医療の現場に各専門家を伴って訪れて現状を見てもらったり、仕組みづくりのミーティングをしたりしていました。今後もより多くの医師が在宅医療に興味を持って参画してくれれば、超高齢社会となった今、より良い在宅医療が行えるのではないかと実感しています。それと同時に、在宅医療を受ける側の皆さんにも、いざという時にどうしたいか、どうされたいかを考える機会を持ってほしいです。最近ではACP(人生会議)が話題ですね。できるだけ早い時期から皆が真剣に「終わり」について考えるような時代になればいいと思います。そうなれば、在宅医療はもっと幸せなものになっていくのではないでしょうか。
終末期の在宅医療についてはどのようにお考えですか?
身近に「死」を感じることは大切な機会だと思います。もちろん、つらい瞬間もあるかもしれません。しかし、生物として誰もが迎える「死」を見届けることは、得がたい経験なのではないでしょうか。家族を送り終えたとき、亡くなった人を最期まで見送ることができたという安心感や充足感を抱く人も少なくありません。「どう生きたいか」「どう死にたいか」について家族で話し合い、すり合わせを行うことは、自分自身の振り返りにもつながります。
それでは最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

体調が悪い時、不安を感じた時、迷うことなく気軽に足を運んでもらえる場所でありたいといつも思っています。お一人お一人と向き合うスタイルの診療所ですので、ちょっとお待ちいただく時もあるかもしれませんが、どうぞ気軽に訪ねてきてください。内科的な病気はもちろん、ちょっとしたケガの縫合処理や、やけどの処置も任せてください。また、地域の小中学校や保育園の学校医・園医を担当しているので、まさに子どもからお年寄りまであらゆる世代の人々の健康維持に携わることができています。また、警察に協力する活動にも取り組んでいる他、高槻市医師会での仕事を通して、包括的な地域のケアも担っています。町医者も結構忙しいんですよ(笑)。でも、そんなふうに地域とともに活動できることはとても幸せなことだと思っています。

