吉本 佳子 院長の独自取材記事
助松団地診療所
(泉大津市/北助松駅)
最終更新日:2026/09/25
南海本線北助松駅から徒歩10分、ゆとりある住宅街の中ほどに「助松団地診療所」はある。ここは、1961年の開業以来、3世代から4世代にわたる家族を診続けてきた地域密着の診療所だ。2008年に院長を継承した吉本佳子先生は、関西医科大学卒業後に放射線科で画像診断や核医学の研究に携わり、博士号を取得。子育てと並行して各地の病院で臨床にもあたるなど、研鑽を重ねてきた。現在は、さまざまな疾患にふれてきた幅広い知見を生かし、どのような患者の訴えであってもまずは受け止め、適切な医療へとつないでいる。穏やかな語り口の中にバイタリティーがにじむ吉本院長に、診療への思いや在宅医療の取り組み、エイジングケアの考え方について聞いた。
(取材日2026年8月13日)
団地と歩んだ60年、何でもまず診るかかりつけ医
はじめに、こちらの診療所の成り立ちについて教えてください。

1961年頃、この一帯にUR公団が誕生したのをきっかけに、父がこの地で診療所を開きました。父は大阪大学卒業後に別の地域で開業していましたが、地域医療に関心があり、こちらへ移ってきたと聞いています。当時は若い世帯や働き盛りの方が多く、お子さんと親御さんの両方を診る「小児科内科」として始まりました。母も看護師・助産師として医療に携わっていましたので、私も幼い頃から医療を身近に感じながら育ちました。もともとは団地の住居で、姉とここから幼稚園や小学校に通っていたんです。2008年に私が院長を引き継ぎ、現在は内科小児科として診療を続けています。当時お子さんだった方がご高齢になり、今では3世代、4世代にわたって通ってくださるご家族もいらっしゃいます。
先生が医師の道に進まれた経緯を教えてください。
高校生の頃はIT系の仕事や理系の教師にも憧れがありましたが、姉が薬学部に進んだこともあり、自然と医学の道を意識するようになりました。関西医科大学に進み、6年生の実習で放射線科の画像診断に強く惹かれたんです。「体の中はこうなっているのか」と。放射線科ではがん患者さんの診療にも携わりますが、がんの方はさまざまな疾患を併せ持っていることが多く、幅広い診療科の知識を学ぶことができました。その後、核医学の研究に取り組み、論文執筆を経て博士号を取得したのです。子育てと並行しながら各地の病院で当直や臨床にもあたり、興味を持ったことには挑戦してみる、そんな日々でした。1995年頃からは父の診療所にも加わり、内科や小児科の診療を実地で学んでいきました。
現在はどのような診療を行っていますか?

放射線科でさまざまな診療科の疾患にふれてきた経験から、特定の専門を掲げるのではなく、どのような方でもまず診察し、そこから判断する姿勢で診療にあたっています。高血圧症や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病の管理から、大きな病院を退院された方のフォローまで幅広く対応してきました。専門的な治療が必要な場合は適切な病院へご紹介し、入院先の診療情報を引き継ぐ病診連携も行っています。特定健診や就職時の健康診断、各種予防接種にも対応しており、お子さん連れの方や若い世代の方も来られます。最近は地域にお住まいの外国人の方やそのご家族がクチコミで来院されることも増え、翻訳アプリも活用しながら対応しています。院内・院外の両方で処方しており、急な発熱時にはその場で薬をお出しすることもできます。
「今、何が苦痛なのか」を起点に在宅も予防も支える
診療の際に心がけていることを教えてください。

診察ではまず「今、何が苦痛ですか」と伺うところから始めます。というのも、初めての方の場合、一度の診察で全体像をつかむのは難しいことが多いからです。これまでどんな病気をされてきたか、今の生活状況はどうかなど、何度か通っていただきながら少しずつ聴いていくと、ようやく見えてくるものがあるので、結論を急がず丁寧にお話を重ねることを大切にしてきました。また、大きな病院はすぐに受診できないこともありますから、まずお近くの窓口として気軽にご相談いただければと思います。理想は「学校の保健室の先生」のように、構えず何でも話せる存在ですね。私自身、近しい人を若くして亡くした経験もあり、一人ひとりの声に耳を傾ける大切さを身をもって感じています。
通院が難しい患者さんへはどのように対応されていますか?
通院が難しくなった方には、私のほうから出向くようにしています。ただ一人ですべてを担うのは難しいので、訪問看護ステーションと連携を取りながら対応しています。連携先のステーションは、私の外勤先で看護師長を務めていた方が立ち上げたところで、信頼のおけるスタッフが訪問看護や訪問リハビリにあたってくれています。夜間や休日もそちらとつながっていますので、一人暮らしの高齢の方にも安心していただけるのではと思います。お子さんが東京や東北、海外にいらっしゃるケースも増えていますが、訪問看護の際にオンラインで遠方のご家族をつなぐことも行っています。「親御さんの様子はこちらでしっかりと見ますので、ご安心くださいね」とお伝えすると、離れて暮らすご家族にも少しほっとしていただけるのではないでしょうか。
予防医学の観点から取り組んでいることはありますか?

最近は、抗加齢医学の研鑽を重ねてまいりました。健康寿命を延ばしていくことがこれからの課題ですし、エイジングケアに力を入れていきたいと考えています。エイジングケアは年配の方向けの印象があるかもしれませんが、若い頃からの生活習慣がとても大切です。私は高校と小学校の校医も務めており、講習会では生徒さんだけでなく保護者の方にも食事や運動、睡眠の大切さをお伝えしています。夜更かしや朝食を抜く習慣が続くと、若くても筋力は落ちていきます。健康診断もぜひ定期的に受けていただきたいですね。また、当院では禁煙治療にも対応しており、看護師も熱心に取り組んでくれています。COPD(慢性閉塞性肺疾患)の予防や、睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP療法も行っていますので、気になる症状があればご相談ください。
信頼のスタッフとともに、地域の医療を未来へ
診療を支えるスタッフについて教えてください。

当院の看護師は経験豊かで、患者さんの状態をとてもよく観察してくれます。ちょっとした変化にも気づき、急を要するのか様子を見て良いのかをしっかり判断してくれるので、私としてもとても心強い存在です。救急車を呼ぶべきかどうかの見極めが必要な場面でも、落ち着いて対応してくれます。また、週に1回、紹介先病院の消化器外科専門の先生が診療にあたっています。専門性の高い先生が来てくださることで患者さんの安心にもつながりますし、私たちスタッフにとっても新しい知見にふれられる貴重な学びの機会になっています。地域の診療所ではありますが、それぞれの持ち味を生かし、患者さんに安心していただけるチーム医療を心がけています。
今後、診療所をどのようにしていきたいとお考えですか?
クラウド型の電子カルテの導入を検討しています。カルテがクラウド上にあれば、診療所にいなくても患者さんの情報を確認できます。通院が難しい方にとって、オンラインでの診療が選択肢の一つになればと考えています。また、週1回の一般病院での外勤や、抗加齢医学の分野の研鑽など、新しいことにも関心を持ち続けていきたいですね。これからも学び続け、患者さんが安心して医療を受けられる環境を整えていきたいと思っています。一方で、適切な医療をご提供するには自分自身の心身の健康管理も重要です。プライベートではジャズをはじめさまざまなジャンルの音楽が好きなので、時間を見つけてはライブに足を運んでいます。そうしたひとときが、日々の診療への活力につながっているかもしれません。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

内科的なことで何か気になることがあれば、まず気軽にご相談いただければと思います。どこの科にかかればいいかわからないというときも、こちらで判断して必要があれば適切な医療機関をご案内します。健康診断は大切だと日々感じていますので、市の特定健診や会社の健診はぜひ定期的に受けていただきたいですね。検診で異常が見つかった場合のご相談もお受けしています。禁煙でお悩みの方も、一度お電話いただければ対応いたします。できるだけ元気に長く暮らしていただきたいというのが、私の一番の願いです。当院は60年以上にわたってこの地域の皆さんとともに歩んできました。これからも身近な場所で皆さんの健康をお支えしていければと思っています。

