谷 守 院長の独自取材記事
谷皮フ科
(豊中市/庄内駅)
最終更新日:2026/10/16
阪急宝塚本線・庄内駅の西側に延びる駅前アーケード商店街の一角にある「谷皮フ科」。2015年に、大学病院などでの長年の勤務経験を生かし、専門性の高い診療を地域で提供したいとの思いで開院した谷守(たに・まもり)院長が、地域密着型の皮膚科診療を提供している。谷院長は、一般的な皮膚疾患はもちろん、全身疾患や内科的疾患に伴う皮膚症状にも精通し、見逃しのない診療をめざしている。優しくほほ笑み、穏やかな口調ながらも「五感を働かせて病気と向き合い、必要なタイミングで検査や診断を行うのが皮膚科診療の醍醐味(だいごみ)です」と、熱く語る谷院長に、現在の診療内容や医師として大切にしている姿勢について聞いた。
(取材日2026年2月25日)
「目に見える大きな臓器」といわれる皮膚診療の奥深さ
先代が開業した医院を皮膚科専門のクリニックとしてリニューアルされたそうですね。

父は1960年に、この商店街の入り口のビルで「谷皮膚科泌尿器科医院」を開業しました。私はまだ幼かったのですが、開業当時の様子は今でも記憶に残っています。白衣を着て患者さんに向き合う父の姿はとてもかっこ良く映りましたし、少し大きくなってからは、症状を見て診断し、処方した薬を使って症状の改善を図る仕事に憧れを見出すようになり、自然と医師をめざすようになりました。医院はその後、現在の場所に移転して地域に根差した診療を続けてきましたが、2014年に一度閉院しました。私は、地域医療に対する父の姿勢を受け継ぎつつ大学での診療経験を生かしたいと考え、より専門的な皮膚科診療を提供する場として新たに当院を開院しました。
皮膚科を志したのはお父さまの影響でしょうか?
そうですね、父の姿ももちろんですし、私自身がアトピー性皮膚炎であったことも関係しているかもしれません。医学部生の頃は内科や脳神経外科などにも関心がありましたが、大阪大学の皮膚科学教室に入ってから、皮膚への診療を通して内科疾患や全身的な治療にも関わることができることを知り、皮膚科で頑張ろうと決心しました。皮膚は「目に見える大きな臓器」といわれるように、外界から生体を防御する重要な役割を持つ免疫組織です。大阪大学の皮膚科学教室では、局所的な皮膚疾患だけでなく、全身疾患と関係する皮膚症状にも積極的に取り組んでいて、私も皮膚のリンパ腫や乾癬を中心に専門的な診療を行ってきました。関連病院で勤務していた時期には、幅広い領域の患者さんを大勢診察する中で、さまざまな皮膚疾患を診る目を養えたように思います。
現在はどのような患者さんが受診されていますか?

当院は商店街の一角にあり、主に近隣に住む方が通院してくださっています。開院当初は、ご高齢の患者さんが非常に多く、次いでお子さんが多かったですね。後から知ったことですが、この地域は以前からずっと住んでいる方が多いそうです。今でも文化住宅や銭湯など下町らしい景色が見られる地区です。一方で、阪神・淡路大震災では大きな被害のあった地域でもあり、震災後には新たな開発が進み若い世代の転入が増えたことから、子どもの患者さんも多いのではないかと思います。最近では、中高年層の患者さんも少しずつ増えてきました。
丁寧な診察と検査、五感を駆使して診断の精度を追求
診療ではどのようなことを重視していますか?

大学病院では、主に皮膚のリンパ腫を診ていました。非常に珍しい疾患であるため見逃しやすく、また、見た目も多様で他の皮膚疾患と区別がつきにくいなど、皮膚科医泣かせといわれます。そんな病気と向き合っていたので、適切に診断をつけて、適切な治療に結びつけていく重要性を痛感しています。そこでクリニックの診療でも、初診の段階からさまざまな疾患を想定し、診療を進める過程で適切な診断をつけることをめざしています。ただし、クリニックの日常の診療で最初からすべての検査を行うことは現実的ではなく、必要なタイミングを見極めて必要な検査を行う必要があります。それから、皮膚科の診察では患部の皮膚をどれだけ見るか、触れるかが鍵となります。また時には、においといった情報も手がかりにしながら、五感をフルに働かせて診断することが重要ですし、それらを瞬時に行う判断力も求められます。
乾癬やリンパ腫をご専門にされたきっかけをお聞かせください。
私の出身校である大阪大学の皮膚科に乾癬専門の教授がいらっしゃったことから、多くの乾癬の患者さんが訪れていました。アトピー性皮膚炎と乾癬は、皮膚科領域の炎症疾患の中の2大疾患です。乾癬のほうが比較的研究も進んでいますね。リンパ腫に関しては、医療人となるからには、全身の管理がしたいという思いから、悪性腫瘍やリンパ球の腫瘍、血液腫瘍の分野に興味を持ち取り組んできました。皮膚の一部であっても、全身と関係し合っている部分があるはずなので、それを見逃さないよう心がけています。
特に注力している疾患はありますか?

さまざまな症状の方が来院されますが、アトピー性皮膚炎や乾癬の患者さんは多いですね。アトピー性皮膚炎は症状を繰り返すため、うんざりしたり、「どうせ治らない」と諦めたりしがちな病気です。私にも経験があるので、そのつらさはよくわかります。当院では、症状を抑えるためにステロイドの塗り薬を使い、ゆっくり減薬していく治療法を基本にしています。塗り薬だけではあまり効果が見込めない患者さんに対しては、注射による生物学的療法や過剰に働いている免疫機能を落ち着かせるためのJAK阻害剤の内服薬による治療などもあります。ここ数年のアトピー性皮膚炎の治療薬の進化は目覚ましく、注射も内服薬も増えてきています。費用面のハードルはありますが、治療が後手にならないよう、重症化する前の早い段階で、良いコンディションに持ち込むことをめざすのが大切です。
広がる治療の選択肢で、長く寄り添う諦めない治療
こちらでは、光線療法も導入されているそうですね。

アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬に対する光線治療として、局所型に加え、全身照射が可能な紫外線治療器による「ナローバンドUVB療法」を取り入れています。これは、免疫反応を抑制することを目的に、疾患に適した波長の紫外線を患部に照射する治療法で、白癬や初期のリンパ治療にも有用です。治療時間も短く、部分照射では1箇所につき1回30秒、全身照射でも最大2分と、患者さんの負担が少ないこともメリットです。また、先ほどお話しした注射による生物学的療法では、投与間隔が2週間に1回と1ヵ月に1回の薬剤があり、乾癬に対する注射では、3ヵ月に1回までバリエーションがあります。なかなか治癒が期待できないと感じているアトピー性皮膚炎でも、ライフスタイルやご希望に応じた治療の選択肢がありますから、諦めずに治療を続けていただきたいですね。
診療ではどのようなことを心がけていますか?
適切な診断には、患者さんから必要な情報を伺うことが欠かせません。患者さんが答えやすい問いかけを心がけ、「このようにお聞きしたら、こんなことをお話しいただけるかな」などと想像しながら問診を行い、患部の観察が重要な場合は、その必要性を丁寧に説明し、納得の上で診察を進めています。そのためには、患者さんとの信頼関係の構築が欠かせません。日頃から患者さんとの対話を大切にし、小児の診察の際は保護者との意思疎通も重視しています。看護師やスタッフも患者さんと細かなコミュニケーションを取ってくれるので、そのサポートも大きな力になっています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

皮膚科では塗り薬による治療が中心ですが、病変が広範囲に及んだり、長期間の継続が必要になったりすることもあり、患者さんにとって負担となる場合も少なくありません。だからこそ、診察に多少時間をかけてでも早期に適切な診断を行い、病状を見極めた上で、患者さんやご家族と協力しながら適切な治療を進めていきたいと考えています。当院では腫瘍の手術にも対応している他、イボや脂漏性角化症、尋常性疣贅などを比較的簡便に除去する治療の選択肢も広がっています。特にアトピー性皮膚炎では治療法が増えてきました。諦めずに、ぜひ頼っていただきたいと思います。治療を通して患者さんの心身の健康を取り戻すことをめざすのが、何よりの喜びです。これからも、相談に来てくださる皆さんの生活の質の向上につながるように診療を続けていきたいと考えています。

