高折 和男 院長の独自取材記事
高折医院
(大阪市中央区/天満橋駅)
最終更新日:2022/08/31

祖父の代から3代、70年にわたって地域に根づいた診療を続ける「高折医院」。高血圧をはじめとする生活習慣病の治療や、小児の予防接種を中心に医療活動を行っているのは、3代目にあたる高折和男院長だ。新薬の研究開発で米国ボストンに留学した経験があり、降圧剤の知識に精通している。高折院長は穏やかな性格の優しい先生で、通院が困難な患者のために訪問診療を実践。専門である高血圧の治療や診療に対する思いについて、話を聞いた。
(取材日2018年8月7日/情報更新日2022年8月29日)
得意な薬理の知識を高血圧の治療で発揮
勤務医時代の経験についてお聞かせください。

大阪市立大学大学院では、薬理学という基礎医学を研究していました。大学院を修了してからは、当時の教授の推薦で高血圧の研究に携わり、若い頃は臨床よりもむしろ研究が中心でした。薬そのものへの興味というより、それが人にどう作用するのかということを常に考えていたような気がします。血圧の治療で使われる降圧剤の開発は、日本でも行われていましたが、血圧の研究に本格的に取り組むには、最先端の医療技術が集約されたアメリカへ行くべきだと考え、ハーバード大学関連病院のマサチューセッツ総合病院に留学しました。日本にはない新薬の開発に関わり、新しい医療に触れることができたのは、本当に貴重な経験でした。またアメリカでは研究をやりながら臨床もやっている研究者が多いことに驚かされました。当時の私は研究一筋でしたが、日本に帰ってからは内科へ移り、臨床にも力を入れるようになりました。
どのような疾患で来られる方が多いですか?
多いのは、高血圧の治療ですね。高血圧というのは文字どおり、血管に高い圧がかかる状態ですが、それがなぜいけないのかと言うと、慢性的に血管へ負担がかかることで、血管が破れやすくなるからです。脳で破れたら脳出血、目で破れたら眼底出血を起こし、動脈瘤が破裂してしまうと大出血を起こして死に至ることもあります。高血圧が恐ろしい病気であるといわれる理由は、死に直結するような合併症を引き起こすからなんです。治療では血圧の数値を見るだけでなく、その人の生活習慣やほかの疾患なども考えながら、一人ひとりに合った治療計画を考えていきます。
高血圧の治療はどのように行うのですか?

高血圧の治療は、お薬で血圧を安定させながら、合併症を防いでいくことが目的です。血圧の薬にはさまざまな種類があり、どのタイプが患者さんに有効かを見極めて処方することが大切です。私はもともと新薬の開発に関わり、各種薬剤の性質や特徴について熟知しているので、薬の種類、ほかの薬との飲み合わせ、配合剤の使用などを見極め、適切な処方をする自信はあります。血圧の数値は季節によって変わりやすいため、1年を通じて薬の量も同じではなく調整するようにしており、そういった細かな配慮が患者さんの安心感にもつながっているようです。高血圧の治療は、薬物療法が中心です。また最近は糖尿病の薬も種類が増え、さまざまな薬が処方されるようになりました。もし今飲んでいるお薬が合っていない気がする、不安があるという方は、ご相談いただければと思います。
親子で受診できる地域のかかりつけ医
高血圧の治療で注意すべきことは何ですか?

高血圧の治療で絶対にやってはいけないのが、自分の判断で勝手に薬をやめてしまうことです。風邪薬や胃薬のような治療薬は、治ったら薬をやめることができますが、高血圧の薬は飲み続けてもらわないといけません。治療するための薬ではなく、予防のための薬だからです。大学病院で勤務していた頃、ある患者さんが自己判断で高血圧の薬を中断したところ、眼底出血を起こして片目を失明してしまいました。その後退院して治療を続けていましたが、2~3年後にまた薬を飲むのをやめてしまい、今度は脳梗塞を起こしたのです。自己判断で降圧剤を中止するのは、とても危険なことです。継続的に薬を飲む必要性について、こんこんとお話ししても、なかなか実行できない人もいました。そんなときは「そろそろ受診したほうがいいのでは」と電話をしたくなりますが、医療が押しつけになってはいけないので、それはしないスタンスです。ですが、本当に心配になります。
診療で心がけていることは何ですか?
高血圧をはじめ、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病の治療は、途切れず通院してもらうことが大切です。しかし、このような慢性疾患というのは自覚症状に乏しいため、「治療している」という実感が持ちにくいもの。病識が薄くなってしまい、「今日1日ぐらいさぼってもいいか」と油断してしまいがちですが、治療の空白による病状悪化が一番良くないのです。通院が途切れないようにするには、患者さんに治療の重要性をきちんと理解してもらうことです。特に高血圧の治療は長期にわたりますので、患者さんとの信頼関係を築くことが大切です。患者さんにも血圧計を買ってもらい、測定値や薬を飲んだ時間などを手帳に記録してもらうのですが、患者さんと二人三脚で治療を行います。通院されていた方が、脳の病気や足が悪くなって歩けなくなった場合などは、往診で治療が継続できるようにしています。
小児科の需要も高いそうですね。

この周辺もマンションやスーパーマーケットが増え、若いファミリー世帯が住むようになりました。それに伴い、最近は小児科のウエートが高くなっています。主訴として多いのは、風邪や腹痛などの一般的な内科の症状ですね。子どもが感染症にかかると、家族の人に感染することが多いですが、当院は大人も子どもも診療しますので、親子で一緒に受診することができます。小児診療のニーズとして高いのは予防接種です。昔は任意接種だったものが、今は国の補助で受けられるものも増えています。患者さんには予防接種のスケジュール表をお渡しして、決められた期限内に計画的に受診していただくよう呼びかけています。当院では重症の患者さんには、信頼できる病院を紹介しています。国立病院機構大阪医療センター、大手前病院、小児科は北野病院に協力していただいています。
血圧・血糖値は健康のバロメーター
健康維持に向けたアドバイスをお願いします。

最近は医療をテーマにしたテレビ番組も多く、またインターネットで調べたら手軽に医療情報を入手することができます。しかし大事なのは、その知識や情報を実践に変えていくこと。「運動はいいこと」なんて誰もが知っていることで、結局はそれをやるかやらないかの違いです。そして、行動に移せたら、それを継続することが大切です。私はよく「ジョギングだけが運動じゃないよ」と話すのですが、ただ走るだけだと飽きてしまうし、無理をすると関節を痛めてしまいます。郊外へハイキングに行くというように、気持ちにゆとりを持って運動できるものでいいのです。楽しみながら健康づくりをしてほしいです。あと、若い女性に多いのが低血圧ですが、注意したいのはつらくてしゃがみ込んだ時。その後でいきなり立ち上がると、十分な血液が瞬時に脳まで届かないことがあります。ゆっくり起き上がるようにしてくださいね。
高折先生ご自身は何か運動はされていますか?
高校時代からラグビーをしていました。今は選手としてではなく、観戦するのが楽しみです。高校生の試合にドクターとして付き添うこともあり、年間30日ぐらいラグビーのグラウンドに出ています。50歳になる直前にテニスを始めて、テニススクールにも通っています。それから山登り。1年に2~3回のペースで登っていて、熊野古道を3日ぐらいかけて歩いたこともあります。山の楽しみは達成感ですね。研究論文を書き上げた達成感にも似ています(笑)。
最後に読者に向けたメッセージをお願いします。

3食きちんと食べて、睡眠をしっかりとり、太り過ぎないように運動して、規則正しい生活を送る。30代、40代の若い世代でも、生活習慣病の予備軍は多いので、普段の生活から気をつけてほしいと思います。また病気を見逃さないためにも、せっかく受けた企業健診の結果を無駄にしないで、ちゃんと目を通してください。数値の見方がわからなければ、わかりやすく説明します。健診で血糖値や血圧の数値を指摘されていたのに、そのまま放置してしまい、とことん体調が悪くなってから受診したら、重症化していたということもあります。早期に治療を開始することで防げる病気も多いので、数値が気になる方は気軽に受診してくだい。