長谷川 健太 院長の独自取材記事
はせがわ診療所
(大阪市北区/南森町駅)
最終更新日:2026/05/26
南森町駅から徒歩1分、ビルの5階にある「はせがわ診療所」は、1996年の開業から約30年にわたり痛みの治療に力を注いできたクリニックだ。院長の長谷川健太先生は、大阪市立大学卒業後、大学院博士課程を経て、大阪労災病院では麻酔科医長を務めたベテラン医師。集中治療室や救急の現場でも研鑽を積んだ、麻酔と全身管理のスペシャリストだ。絵画が随所に飾られた院内には空気清浄機が20台以上設置され、患者が安心して過ごせるよう温かな空間が広がる。「得た情報は全部渡します。治療を選ぶのは患者さんです」と穏やかに語る長谷川院長は、気さくで謙虚な人柄だが、神経ブロック注射の技術など診療へのストイックな姿勢に誠実さがにじむ。きめ細かな痛みの治療や、息子との親子二代の診療体制について話を聞いた。
(取材日2026年4月23日)
麻酔科と救急の経験を、痛みの治療に生かして
まずは、こちらで開業された経緯を教えてください。

1996年に開業して、もう約30年になりますね。もともと大学の同級生がこのビルで開業していて、私も麻酔科医として手伝いに来ていたご縁がありました。そろそろ自分も開業しようかと考え始めた頃に、ちょうどこのビルで空きが出たんです。加えて、私は天神祭りの前日に生まれていましてね。天神橋というこの地域に、何か不思議なご縁が重なり、この場所での開業に至りました。親が商売をしていたこともあって、いつか自分の城を持ちたいという気持ちは早くからありました。大阪市内で生まれ育ち、大学も大阪ですから、この街で長く診療を続けてこられたのは、土地への愛着も大きかったですね。
開業に至るまで、どのような道を歩んでこられたのですか?
麻酔科を選んだのは、一人で黙々と作業できる環境が自分の性に合っていたからです。口はおっとりしていると言われますが、手先は器用で動きは速いんですよ。ペインクリニックの道もありますし、将来の選択肢が広いことにも魅力を感じました。大阪市立大学を卒業後、付属病院の麻酔・集中治療医学教室に入局し、大学院で博士課程を修了しています。集中治療室や救急の現場も経験し、大阪労災病院では麻酔科医長としてICUの開設に携わるなど、非常に忙しい日々でした。大阪労災病院で勤務していた頃からペインクリニックの外来を週1回担当していましたし、民間病院では病棟も担当しながら外来と麻酔を並行して、痛みの治療に関する実践的なノウハウを積み重ねてきました。
クリニックの特徴について教えてください。

ペインクリニックを中心に、整形外科や内科、リハビリテーション科の診療を行っています。患者さんは小学生から90代まで幅広く、腰痛や肩凝り、膝の痛みなど運動器の痛みが主な訴えです。近年はスマホやパソコンの影響で、首・肩・腕の痛みを訴える若い方も増えていますね。麻酔科医として救急医療に携わってきた経験がありますので、処置中に万が一血圧が下がるなどのアクシデントが起きても、動揺することなく迅速に対応できるのが強みです。院内には救急セットや人工呼吸用の機器も備えています。また、院内各所に絵画を飾り、空気清浄機を20台以上設置し、トイレの手洗いには温水器を入れるなど、患者さんが安心して過ごせるよう環境づくりも大切にしています。
親子二代で取り組む、きめ細かな痛みの治療
痛みの治療は、どのように進めていくのでしょうか。

肩凝りや首の症状、ヘルニア、変形性膝関節症、テニス肘といった運動器の痛みを診ています。この十数年で使えるお薬がかなり増えましたので、何でも最初から注射というスタンスではありません。注射に不安をお持ちの方には、まずお薬や物理療法から始めて段階的に進めていきます。一方、ピンポイントで改善が見込める場合には、最初からブロック注射を選択する場合も。注射は針を的確に患部へ届かせることが肝ですから、そこは専門家としてプライドを持ってしっかりと対応させてもらいます。大切にしているのは、患者さんの状況を聞きながら投薬を細かく調整し、ブロック注射も必要な時に必要な最小量を使うこと。治療をワンパターン化させず、一人ひとりに合わせた対応を心がけています。
ほかに力を入れている治療について教えてください。
息子も麻酔科の医師で、日本麻酔科学会麻酔科専門医と日本ペインクリニック学会ペインクリニック専門医の資格を取得しています。現在は週に1度、当院で診療にあたり、パルス高周波治療などの先進治療を行っています。これは坐骨神経痛や頸椎症性神経根症など、手足のしびれや痛みに対し、特定の神経に高周波を当てて症状を和らげることを図る治療で、体への負担が少ないのが特徴です。大学病院レベルの先端の治療を当院で受けていただけるということで、この治療を目的に通われる方もいらっしゃいます。また、リハビリとして半導体レーザー、マイクロ波治療器やけん引装置、近赤外線などを使った物理療法も行っており、ブロック注射や投薬と組み合わせて通院することも可能です。リハビリだけで定期的に通われる方も2〜3割いらっしゃいます。
慢性的な痛みで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

ペインクリニックでは急性痛が治療対象と思われがちですが、慢性痛の治療においても大切な役割を担っています。きちんと診断を受けていないまま慢性化している方は非常に多いもので、検査をしたらヘルニアが見つかった、骨粗しょう症で骨がつぶれかかっていたというケースも珍しくありません。痛くて動けない、動かないから骨や筋肉が弱くなる、そしてさらに痛くなる。この悪循環をうまく断ってあげることが治療の鍵です。悪循環さえ断てば、活発に動けるようになり筋肉がつき、お薬の量も減らせる好循環に変わるでしょう。慢性痛に使えるお薬は増えていますが、1週間単位で見直しが必要なものも多く、こまめに調整できるのはクリニックならではの強みだと考えています。
得た情報はすべて渡す。治療を選ぶのは、患者自身
患者さんと接する際に、心がけていることはありますか?

適切な診断を迅速に行い、得た情報はすべてお渡しします。治療方法をきちんと説明させていただいた上でどうするか、患者さんの意思を尊重しご自身で決めていただくようにしています。また大切にしているのは、しっかりお話を聞くこと。看護師に診察が長いと言われそうですが(笑)、原因がわからないと治りませんからね。痛みの裏に内科的な問題が隠れていることもあり得ますし、慢性痛にメンタルの不調が伴う方も少なくありません。患者さんを信じて誠実に向き合いながら、痛みの治療に取り組むのが私のスタンスです。血液検査やエックス線といった院内の検査体制を充実させていますし、MRI・CTも他院を紹介し迅速に対応できる体制を整えています。
今後の展望とプライベートの過ごし方についてお聞かせください。
ブロック注射の技術をさらに磨いていきたいですね。息子が後継者として引き継ぐ予定ですが、私自身もまだまだ向上していきたいと思っています。めざしているのは、痛みを中心に何でも診られる医師であること。内科や整形外科もシームレスに対応できる、患者さんにとってワンストップなクリニックでありたいと考えています。スタッフと一緒に、院内全体のレベルアップを図っていきたいですね。プライベートではメカ好きで、以前はパソコンを自作したり配線をしたりしていました。妻と一緒にマラソンやサイクリングも楽しみますし、魚釣りでは釣った魚を自分でさばいて薄造りにすることもあります。今は腰痛のため一部休止中ですが、自分自身が痛みを経験したことで、改めて患者さんのつらさが身にしみてわかるようになりました。
最後に、痛みに悩む読者へメッセージをお願いします。

痛みを抱えている方は、本当にたくさんいらっしゃると思います。怖がらずに、フランクにクリニックへ相談に来ていただきたいですね。注射を無理強いしたり、お薬を強制するようなことはしません。なぜ痛いのか、その背景に何があるのか、まず客観的に医学的に判断させていただいて、そこからどうするかは患者さんの生き方ですから、ご自身で決めていただければいいんです。治療を先延ばしにして、痛みを感じる時間が長かったら、人生面白くないですよね。痛みの原因をはっきりさせることが、生活の質を上げる第一歩になるはずです。私たちにできることがあれば、お手伝いさせてください。

