真島 玲子 院長の独自取材記事
林診療所
(大阪市平野区/喜連瓜破駅)
最終更新日:2025/12/22
「林診療所」は、高層の市営住宅や学校が立ち並ぶ、喜連西の中心に位置する。幹線道路沿いには大型店舗がそろい、暮らしやすさがうかがえるこの街には、古くからの住民に加えて転入者も多い。1964年に開業した同院は、先代である父から1996年に引き継いだ2代目院長の真島玲子先生が、地域住民の心に寄り添いながら診療を続ける。61年以上にわたり親しまれてきた同院では、幅広い年代の患者が受診する外来の他、訪問診療にも注力。優しい笑顔が印象的な真島院長に、診療内容や地域のクリニックとの連携、患者とのエピソード、医院の歩みなどを聞いた。
(取材日2025年8月20日)
各所と協力・連携した、地域全体で行う訪問診療に注力
現在の診療内容を教えてください。

外来診療では午前の患者さんはご高齢の方を中心に、不整脈、悪性疾患、神経疾患などのご相談が多い傾向にあり、夕方から夜にかけては若い世代の方、急に体調を崩したお子さんも来院されます。また現在は完全予約制の禁煙相談も設け、患者さんの日常の生活状況をお聞きしながら、アドバイスしております。また女性医師ということで、幅広い世代の女性にご来院いただき、さまざまなお話をしていただくことも。特に女性は閉経後の女性ホルモンの低下により骨粗しょう症などのリスクが高まりますので、50代前半くらいから骨密度検査と血液検査をお勧めし、「いつの間にか骨折」の予防を推進しています。またご高齢になると内科、整形外科……と複数のクリニックへの通院が困難な方も多いので、軽症の関節痛や腰痛など日常的な痛みの緩和を目的としたマイクロ波治療器も導入しています。
在宅診療に力を入れ、地域のクリニックとも連携していると伺いました。
脳疾患の後遺症、悪性腫瘍、認知機能低下などで通院が困難な患者さんのご自宅を、地域包括支援センターなどと連携しながら訪問し、在宅医療に力を入れています。地域では「在宅療養支援診療所」として、近隣の井上クリニックと酒井診療所と連携し、2025年で14年目を迎えました。主な取り組みは、月1回集まり、それぞれの在宅患者さんの変化や対応についてカンファレンスを行っています。重症患者さんや難しい事例の患者さんの経験を紹介し合うことで、お互いにヒントを得たり、参考にさせていただいています。また、近隣病院や24時間対応の訪問看護ステーションとも連携し、必要な方が医療や介護のサポートを十分受けられるようつなげています。
在宅診療では、どのようなことを心がけておられますか?

在宅診療では、ご自宅に伺うことで診察室だけではわからない暮らしぶりやご家族との関係が見えてきます。その方が大切にしていることを踏まえて、生活に沿ったアドバイスや支援を心がけています。ご家族が定期的に訪れてケアするケースも多いですが、そうしたケアには限界がありますので、介護保険の利用をお勧めしています。診察室での短い時間では話せないことも、自宅であればリラックスしてお話しいただけることもあり、一人ひとりの患者さんとの時間を大切に日々訪問診療にあたっています。
心に寄り添う診療で「生きる喜び」を
患者さんと接する際に、大切にしていることを教えてください。

患者さんと同じ目線で、話しやすい雰囲気をつくるようにしています。ご病気への不安などから日々の生活の中で疲れてしまうこともあるでしょう。その方が前向きに人生を楽しみ、治療に取り組めるように、意欲を引き出すことができるよう努めています。またご高齢の方の認知機能低下の影響なども鑑みながら、薬の飲み間違いがないか、残薬の確認を行っています。例えば薬の管理が難しいと思われる場合は毎回持参していただき、こちらで残量を数え、残薬があるのなら必要な分だけお戻しすることもあります。訪問看護師により服薬支援を行うこともできます。正しく服用できているかを調べもせずにお出しすると問題も出てきますので、きっちりと確認しています。患者さんをサポートする人たちと協力して、療養を続けられるように心がけています。
体の病気だけでなく、心にも寄り添うことを大切にしていらっしゃるのですね。
患者さんの希望に寄り添いたいと考えています。当診療所には、元気が出る影絵作家の作品を飾っています。その作品の中にはさまざまな生き物が描かれています。この作品を見て年齢や性別、その方の状況に関わらず、それぞれの置かれたところで、生きていることが喜びである、という思いを持っていただけたら。病気を抱えると気力がなくなったり、悩んだり、苦しんだりしながら医療機関を受診するのですが、そこから本当の意味での「生きる喜び」を見つけていただきたい。そのお手伝いができたらと心から願っています。
クリニックでは、イベントにも取り組まれているそうですね。

2020年から年に3回ほど「歌声の集い」というイベントを行っています。音楽の専門家の協力のもと、キーボードやギターの生演奏に合わせて、皆さんのなじみのある曲を歌う会です。きっかけは、もともと毎年開いていたクリスマス会でした。そこに参加された方から「もっと集まれる機会があれば」という声を頂いたんです。私自身も、病気というのは体だけでなく、心や精神を含めた“人間全体”を見ていくことが大切だと考えています。歌を歌うことは大きな呼吸を伴い、心も開放されますし、人と一緒に声を合わせることで自然と笑顔が生まれます。参加者同士の交流も生まれ、そうした時間を通じて、体だけでなく心も元気になっていただきたいと思っています。
何でも相談できる、信頼できるかかりつけ医を探して
開業から61年、地域に寄り添ってきた診療所ですね。

当診療所は私の父が1964年に開業し、私が継承してから今年でちょうど30年の節目を迎えます。診療所と自宅が隣接しているので、診療時間以外の生活でも近隣の様子がわかります。以前から住んでいる方がご高齢になって、一人暮らしをされるケースが非常に増えていると実感し、こうした地域の変化に合わせ、診療を行ってきました。私が継承した1996年からは、徐々に高層建築に建て替わり新しい住民の方が増えてきています。地元の保育園や小学校、高校の学校医も続ける中で、家族ぐるみの関わりが与えられています。新しい住民の方にもわかりやすいよう、ホームページでのアクセス案内や、公費負担で受けられる特定健診、後期乳児健診など地域情報の発信も心がけています。
患者さんとの印象深いエピソードはありますか?
耳鼻咽喉科領域の末期がんの70代の男性との交流が、今でも心に残っています。その男性は、病院からご自宅に戻られたとき、すでに手術によって声が出ない状態でしたから、訪問診療時は筆談、それ以外のときはコミュニケーションアプリなどを用いて親交を深めていきました。積極的な延命治療は不要とのご意思をお持ちでしたが、一方で心の救いを求めていらっしゃいました。そこで私にとって心の支えである聖書の言葉の一節をその方にお伝えしたところ、「山道を歩いているときに、一筋の清流の水を飲んだような思いがしました」と自然に、心に染み込むかのように、その言葉を受け取ってくださったのです。それは私の力ではなく、その方を救いたいという命の源である創造主の力が、男性の心に届いたのだと思います。その後、ご本人の希望どおりの最期を迎えられました。それはとても不思議な体験でした。
最後に、読者へのアドバイスをお願いします。

私が30年ほど地域医療に携わってきて感じるのは、「かかりつけ医との信頼関係がとても大切だ」ということです。元気なうちから、家族や地域、医療機関と関わりを持っておくことは、病気や災害時だけでなく、さまざまな場面で大きな力になります。一人で抱え込まず、つながりを意識することが大切ですね。予防接種や健康診断などで診療所を訪れる機会に、通院のしやすさや診療時間、医師やスタッフの雰囲気などを確かめてみると良いでしょう。どのようなことも、遠慮せずにご相談ください。

