北野 安衛 院長の独自取材記事
北野整形外科
(大阪市住吉区/鶴ケ丘駅)
最終更新日:2025/05/14

JR阪和線の鶴ヶ丘駅から歩いて5分ほどのところにあるのが「北野整形外科」だ。大阪メトロ御堂筋線の西田辺駅からも徒歩圏内にある。院内を飾る絵画の額縁はどれも壮麗だ。かかりつけ医として、定期的に通院する患者が顔を見せない日が続くと、心配になり電話を入れて様子を尋ねるという。また、風邪などの症状であれば診察して薬を処方し、診られる範囲は対応できるようにと他科の勉強会にも参加する。休日もクリニックで時間を費やす仕事熱心な北野安衛先生、その愛情深い人柄に触れた。
(取材日2018年8月24日)
いつも笑いが絶えない院内。「通えるのは元気な証拠」
これまでの経緯を教えてください。

近畿大学医学部卒業後、整形外科医局からの派遣により、さまざまな総合病院に勤務しました。麻酔を知らないと手術ができないので、最初の半年間は麻酔科に入ります。その後は外傷・骨折・人工関節などの手術に携わり、樫本病院では整形外科医長を務め、その間、数多くの手術を行いました。開業にあたっては、長居で医院を構えていた内科の先生から、整形外科がないので来てほしいと言われたことがきっかけになってこの地を選びました。この辺りは住宅地で、患者さんは歩いて来られる範囲にお住まいの方が多く、車での通院はほとんどありません。ですから銀行や郵便局へなど所用のために自転車で走っていると、患者さんがよく声をかけてくれます。21年目を迎える今は、私にとってここが第2の地元のように感じられます。
どういった患者さんが来られますか?
8割は70歳前後から90歳代までの高齢の方で定期的に来院されます。すっかり顔なじみになった患者さん同士おしゃべりしてますから、院内はいつも楽しげな雰囲気ですよ。理学療法を受けられている間も、それぞれを区切っているカーテン越しにずっと話をされています。個室ではなくカーテンにしたのは、誰かが「痛い」となったときに、診察していてもすぐ飛んで行けるからだったのですが、おしゃべりに好都合だったようです(笑)。ある意味、当院に通って来られるうちは元気な証と言えるでしょうか。そして、あと2割ほどの患者さんは学生さんやお勤め世代の方たちになります。
どんな症状を抱えていらっしゃるのでしょう?

やはり高齢の方は、加齢による膝・肩・腰の痛みです。軟骨がすり減ってきて痛みが出る変形性膝関節症には、潤滑油の役目を果たしてくれるヒアルロン酸注射を治療に用います。膝を動かすのがスムーズになると自分で買い物に出るのも楽になりますから、月に2回のペースで受けられる方が多いですね。30~50代には四十肩・五十肩でお困りの方が結構おられます。これは肩関節の老化で、関節包と呼ばれる袋がほんの少し裂けるんです。裂けてしまったら外傷になってしまうけれど、そこまではいかない。まだ原因ははっきり解明されていませんが、普段デスクワークで体を動かさない人だけでなく、運動してきた人でもなります。だけど治し方は、一生懸命動かさないと駄目なんです。当院では滑車を使って痛くない側で引っ張り上げて、あとはトレーニングにより肩甲骨や肩周りを正しく動かせるよう体に習慣づけていくことで改善をめざします。
気心の知れたかかりつけ医ならではの診療を提供
診療において心がけておられることを教えてください。

当院で診ていくには難しい症状や手術が必要と判断した患者さんは、専門のクリニックや総合病院へ紹介する、窓口としての開業医の役割を果たすことです。様子を見てからでいいのか急を要するのか、的確に見定めることが肝心です。また、高齢になると駅の階段を上るのもつらいと言う方が多くおられます。ですので、定期的に来られる患者さんに限り、他科の症状にも対応できるように努めています。例えば、しばらく来られないので心配になりスタッフに電話をしてもらうと、風邪をひいていらしたという場合などは、当院で一緒に診て薬を処方することもできます。
患者さん思いでいらっしゃるのですね。
かかりつけ医としては気になりますし、一人暮らしの方もおられますから、できる限りのことはしてあげたいと思うのです。お年寄りにとって具合が悪いときに他の場所へ出向いていくのはたいへんな労力で、かえって疲労困憊(こんぱい)してしまいます。当院であれば気心が知れていて歩いて来られる範囲ですから、患者さんにとって心身ともに最小限の消耗で済みます。もちろん対応できる範囲でということになりますが、皮膚科の分野になる湿疹やかぶれ、やけどなども診ています。帯状疱疹の治療にも対応できます。
骨粗しょう症になってから来院される方も多いようですが、予防法はありますか?

予防となると閉経後では間に合わないので、それまでにしっかりカルシウムを取り紫外線を浴びて運動することです。カルシウムは牛乳だけだと1日2リットル必要ですが、それでは胆石や尿道結石になる心配があるので半分は魚で補う。体質的に牛乳が合わない人には炭酸カルシウムなどの錠剤を出します。ですが、せっかくカルシウムやビタミンDを取っても、運動のために歩くのが夜では意味がありません。紫外線を浴びないと活性化されないのがビタミンDです。肌のためにと日光を避ける傾向にあることも、骨粗しょう症が増えている一因ではないかなと思います。閉経後の症状の表れ方としては、女性ホルモンやこれらの栄養素の分泌量をお給料に例えるとわかりやすいと思います。毎月のお給料が突然10分の1になった場合、生活に支障を来す事態が発生してきますよね。このことが骨の中で起こっているのが骨粗しょう症なのです。
患者が元気で過ごせるよう、精いっぱい支えていきたい
読者に伝えたいメッセージやアドバイスはありますか?

日頃からお伝えしているのは、年を取ったことで体を動かさずにいると、寝たきりになるリスクが高まるということです。すぐに始められるのは散歩ですが、股関節や膝関節に支障を抱えていて歩けない方もいらっしゃいますよね。調べて異常がない場合はまず筋力トレーニングから始めてもらいます。筋肉がないと歩けないですから、必要な筋肉をつけて歩けるようにサポートすることが大事です。あと、ちょっと変わり種なのは、私は運動健康器具を試すのが好きでフィットネスバイクやスクワット効果を引き出せるものなど、自分用に購入し院内に置いていたのですが、患者さんまで使用されるようになりました(笑)。
休日はどのように過ごされますか?
出勤しています(笑)。好きな音楽をかけながら、何かしら仕事をしています。もともと手先が器用で物作りが好きでしたから、今でいうDIYは得意なので、待合室のTVモニターも自分で取りつけたのですよ。中学・高校はバレーボール部に入って9人制と6人制の両方を経験し、他にもスポーツは全般に親しんできました。大学時代には、まだ日本に伝わっていなかった太極拳を習い始め、一時期教えていたこともあります。この太極拳は健康維持にも役立ちますから、2階フロアで教室を開催しようと少し前にエレベーターを設置しました。ですが朝の診察前にその時間をつくるのは私の体力が持つか懸念があり、いまだ思案中です。
今後の展望について聞かせてください。

これまでどおり「患者さんのために」をモットーとして、力になれるように努めていきます。私は腰のけん引や膝・肩にしても、できるだけ保存治療で改善できるように取り組んできました。来院時つらそうだった患者さんが、帰るときにはニコニコ笑顔だとうれしくなるものです。例えば当院では、腰の痛みで来院された方には、ストレッチを施すなど、痛みが和らぐような工夫をします。患者さんが足取り軽く笑顔で帰れるようにこれからも努めていきたいですね。また、常に新しい知識を取り入れるための勉強会は、内科など他の科であっても参加しています。先ほどお話ししたように私が診れる範囲なら当院で対応できたほうがいい場合もありますし、整形外科ではなく他科に原因があると思われる疾患もありますのでね。地域の患者さんが元気で過ごせるように精いっぱい支えていきたいと思います。