有賀 秀治 院長の独自取材記事
有賀耳鼻咽喉科
(大阪市城東区/鴫野駅)
最終更新日:2021/10/19

JR東西線・学研都市線鴫野駅から徒歩2分。駅前のクリニックビル5階にある「有賀耳鼻咽喉科」は、小さな子どもから高齢者まで幅広い世代に親しまれている。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医の有賀秀治院長は、大阪大学医学部卒業後、吹田市民病院や住友病院に勤務し、上顎がん・喉頭がん・咽頭がんなどの手術を行ってきた経験豊富なドクターだ。1994年の開業以来、その経験を生かし、地域のかかりつけ医として診療している。「病気だけを診るのではなく、患者さんの不安を取り除いていくのがかかりつけ医の仕事だと思っています」と話す有賀院長に、医師としての真髄について熱く語ってもらった。
(取材日2018年4月10日/修正日2020年7月21日)
病気を治すだけでなく患者に寄り添う医療を
これまでの経歴と開業のきっかけを教えてください。

私は頭頸部がんが専門で、大阪大学医学部附属病院では大きな手術をしていました。具体的には、耳鼻咽喉科が腫瘍を取り除いた後、形成外科が再生手術を行うという、12時間ほどかかる手術です。頭頸部は衣服で隠すことができず、外から見える部分なので、手術が成功したとしても患者さんによって受け止め方はさまざまです。そのため、私は「患者さんの満足感がどこにあるのか」を常に大事にしながら執刀していました。これまで深く携わってきた悪性疾患の知識は、現在も病気の見極めに生きています。開業を意識するきっかけとなったのは、大学の先輩である酒井國男先生と一緒に、タイの医療ボランティアで中耳炎の手術をする活動に何度か参加したことです。酒井先生は関目で開業されていて、「もし将来開業するのであれば、同じ城東区で開業しませんか」とお誘いいただいたのです。このエリアには同窓生もいて、なんとなく縁を感じています。
どのような患者さんが来院されていますか?
この周辺は市内の中心地に近いわりに、昔ながらの人情味のある住民が多く、親しみやすい住宅街です。古くからある住宅街ということもあり、蓄膿症とも呼ばれている副鼻腔炎、あるいは滲出性中耳炎が起こす難聴や耳鳴り、めまいなどの相談に来られる高齢の方が多い印象があります。それと、小学校への入学を控えているお子さんも多いですね。保育園に通っているお子さんに関しては、鼻水が出る、咳が出るといった風邪の症状で来院されることがほとんどです。
診療スタンスについてお聞かせください。

勤務していた病院では、患者さんの話をゆっくりと聞けなかったので、開業当初から「患者さんのお話をしっかり聞く」ということをモットーにしています。患者さんが持つ悩みや家庭の事情などが、病気に関係しているケースは少なくありません。そのため、お話をじっくりと伺うことで気持ちが楽になり、症状も軽減されればと思っています。患者さんと一緒に考え、患者さんに寄り添い、そうして心身のケアをするのが医師の基本だと考えています。
医師としての務めは、「患者の不安を取り除くこと」
耳鳴りに悩んでいる人は多いと伺いました。

耳鳴りで悩んでいる方に、「検査をして異常がなかったので、心配ありませんよ」と伝えても、ご本人の納得にはつながりません。検査で異常がなかったとしても、患者さんは耳鳴りの症状があり、実際に悩んでいるわけですからね。しかし、「そうか、思っていたよりも悪くなくてよかった」と受け入れていただくことも、時には必要。ですから、「検査をしてみて何もなかったということは、あなたにとっていいことですよ」と、診療で伝えるようにしています。なぜなら、悩んでいる時期は誰しもネガティブになってしまったり、非現実なことを考えてしまったりして、「検査で異常がなかった」ことを受け入れがたくなるものだからです。患者さんのそのような不安を一つずつ取り除くことが、医師の務めだと考えています。
めまいは女性に多いそうですね。
めまいは女性に多い症状で、ストレスが発症の原因になることもあるため、患者さんのお話をしっかりと聞くことで改善される例もあります。例えば、ある患者さんのお話を聞いていると、旦那さんの介護をしているなどの背景があるとわかりました。実際に、そういった話を聞いてくれる人は周りに少ないらしく、これまで心情を吐き出す場がなかったとのことでした。その方以外にも、診察で「どうしたの? 何かあったの?」と聞くと、こらえきれずに泣いてしまう方もおられますが、その後はすっきりした顔で帰って行かれます。診察での対話を通して少しでも楽になっていただけたと思うと、私もうれしい気持ちになりますね。
難聴の方には補聴器をお勧めされているのでしょうか?

滲出性中耳炎から発症する難聴など、治るタイプの難聴は治療すればいいのですが、加齢による難聴は治らないことが多いです。聴力が低下するとコミュニケーション能力も落ちてしまいます。コミュニケーション能力の低下は、認知症にもつながるといわれているため、なるべく早い段階で補聴器を利用していただきたいと思っています。難聴の方は、雑音が入らない静かな環境で生活されていることが多いため、補聴器を着けるとかえってやかましく感じて、すぐに外してしまいます。そのため、早い段階で補聴器に慣れていただきたいのです。具体的な開始年齢などはなく、日常生活に支障を感じ始めたときが、その方にとって補聴器を着けるタイミング。当院で補聴器を販売しているわけではありませんが、専門のクリニックできちんと検査を受けていただいた上で、検討していただきたいと思います。
「かかりつけ医」に何でも相談を
患者の負担を減らす取り組みをされていると伺いました。

来院していただいている患者さんの負担を少しでも減らしたいと思い、当院は院内処方を行っています。院内でお薬を渡すと、飲んでいる薬のことをご自身で把握できると思いますし、体調が悪い患者さんが医療機関に滞在する時間を減らすことにつなげられます。また、高齢の方や子ども連れのお母さんの場合だと、クリニックや薬局など複数の場所を回ると疲れてしまいますからね。院内処方をすると在庫が増えて管理が大変ですが、安心感につなげていただくために、今後も続けていきたいと考えています。また、院内での待ち時間をできるだけ軽減したいと思い、時間予約を導入しています。ウェブサイトと電話で受け付けていますので、受診される際は一度お問い合わせください。
城東区医師会の活動にも注力されていますね。
患者さんは内科や外科、整形外科など、いろいろな診療科を受診されていると思うのですが、診療科に関係なく、かかりつけ医にはあらゆる相談をしていただければと思います。私は耳鼻咽喉科が専門ですから、「血圧が高くて……」という患者さんを診ることはありませんが、高血圧に詳しい先生を紹介するのは可能です。もちろん、その先生に対して紹介状を書くことも。地域で診療するということは、医療機関との連携や紹介も含みますから、皆さんのかかりつけ医の専門にかかわらず、気軽にいろんなことを相談していただきたいです。相談しやすい先生をつくっておくと、介護などの医療以外のことも相談できると思うんです。城東区医師会に所属している先生には、「診療科を越えてかかりつけ医としての役割を果たしてほしい」とお願いしていることもあり、その考えは地域でも浸透しています。
ところで、休日はどのように過ごしていらっしゃいますか?

休日はゴルフに行ったり、舞台や演劇を鑑賞したりしています。特に歌舞伎が大好きで、ひいきにしている役者さんがいるほどです。歌舞伎を観に行くときは大阪が中心ですが、公演日や内容によっては東京まで行くこともあるんですよ。ほかにも、女優さんや劇団など、応援している方々がたくさんいますので、そういった舞台を観に行っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
昔から「病は気から」という言葉がありますが、これは言葉だけではなく、医学的にも正しいことだと私は考えています。毎日にこにこして生活を送るということが、健康にとって一番大事なことだと思います。生きるなら、しかめっ面ではなく、笑顔で楽しく生きるほうが良いと思いませんか。「笑う門には福来る」ともいいますからね。言葉で言うのは簡単で、現実では難しいことかもしれませんが、日頃から意識するのも必要です。それが健康の源にもなりますので、地域の皆さんには笑顔で過ごしていただきたいと思います。