木佐貫 修 院長の独自取材記事
木佐貫整形外科
(大阪市生野区/今里駅)
最終更新日:2024/04/24
今里駅から少し離れた、昔ながらの住宅街の一角にある「医療法人木佐貫整形外科」。木佐貫修(きさぬき・おさむ)院長は、2019年に父から院長を引き継いで以来、地域住民のケアに尽力してきた。診療では患者から丁寧にヒアリングを行い、不調の原因へアプローチするほか、患者の生活習慣や職業の特性、運動頻度などにも注目し、治療に反映。27年にわたる勤務医経験を生かした生活改善指導や体づくりのアドバイスも行う。地域のクリニックとしての特性を生かすべく、患者のライフスタイルに合わせたリハビリテーションの環境を整えたり、専門外の領域においても患者の悩みや相談に乗ったりと、地域に根差した温かい医療を提供。「大切なのは人と人とのつながり」と、話す木佐貫院長に、地域に根差した診療や患者との向き合い方について話を聞いた。
(取材日2024年2月29日)
人と人とのつながりを重視した心の通う医療をめざして
現在の患者層や主な相談内容について教えてください。
クリニックで働き出して10年、父から院長を引継ぎ5年ほどになります。当初は父の代から来られていた患者さんが多かったですが、現在7割は新規の患者さんになりました。年齢層は60代以上の方が多いですね。近くに学校があるので、小学生や中学生のお子さんも受診されます。地域の特性が当院の患者層にそのまま反映されているという感じではないでしょうか。主訴としては、お子さんはスポーツでのケガ、働き世代は腰痛が多く、50代以上の方だと肩や膝、腰が痛いというケースが多いですね。また当院は労災指定病院でもあり仕事中のけがや、交通事故の患者さんも幅広く診ています。
先生が診療時に心がけていることはどのようなことでしょうか?
整形外科の領域は、日常生活の把握がとても重要です。そのため診療の際には、患者さんの職業についても深くヒアリングをさせてもらっています。例えば、一日中パソコンに向き合っている事務職の方と建設業などの肉体労働の方では、同じ症状で来られても、治療後のアドバイスが変わることもあります。場合によっては作業の制限範囲や日数が変わることもあり、日常に早く戻るためにはそういった生活様式も考慮しながら治療計画を立てていく必要があります。またご高齢の患者さんの場合には、自宅で支援してもらえる同居者が居るかどうかで、気をつけていただく内容が変わります。そのため初診の場合は特にヒアリングを丁寧に行い、患者さんが一日も早く日常生活を取り戻せるような診療を心がけています。
日頃から患者さんとのコミュニケーションが大切になりますね。
医療で大切なのは、「人と人とのつながり」だと思っているので、カルテやパソコンばかりを見るのではなく、患者さんと向き合う診療を意識しています。リラックスして会話をしていただけるような、気軽な雰囲気づくりも重要です。症状を伺うだけでなく、日常的な話題をこちらから投げかけるようにもしています。特に、一人暮らしの高齢の患者さんは話し相手にお困りでしょうから、会話を通して脳の活性化やリフレッシュをお手伝いできればと思います。「病気というほどじゃないから」「どの病院に行けば良いのかわからない」と来院を迷われる方もおられますが、それを判断するのは私たち医師の役目です。ちょっとしたお悩み相談の気分で、お顔を見せに来ていただけるとうれしいですね。例えば頭痛の原因は脳だけでなく、首や目や鼻にあることがあります。詳しい検査が必要な時は専門病院へ紹介します。お困り事の相談を気軽にできる場所でありたいですね。
専門分野を追究しつつ知見を広げ、地域医療に貢献
医師をめざしたきっかけを教えてください。
開業医である父の背中を見て育ちましたから、物心ついた頃には「医師になりたい」と思っていました。父はいつも診療に忙しく、幼少の頃は私が起きている時間帯に帰ってきた記憶はほとんどありません。近所の方から相談を受けることも頻繁にあり、「大変だけど、やりがいのある仕事なんだ」と憧れていました。本好きな子どもだったということも、医師をめざした理由の一つかもしれません。図書館に通うたび、医療界の礎となった偉人たちの伝記を読んで、感銘を受けていました。そして、「いずれは自分も人を救う仕事がしたい」と強く思うようになりました。内科をめざした時期もありましたが、大学在学時に受けた整形外科の教授の講義や臨床実習がとても興味深く、現在の分野を専攻しました。
先生は手の外科がご専門と伺いましたが、どのような症例を手がけてきたのですか。
症例としては、首と手をつなぐ神経の障害により手指がしびれる手根管症候群、手指の関節が腫れたり変形が生じるへバーデン結節や母指CM関節症、軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれるリウマチなどですね。現在は手術の必要がある場合には手外科を専門とする医師が在籍する連携病院を紹介させていただきます。ただ、かつては「加齢だから」で片づけられていた症状でも「おかしいな」と思ったときに早めに来院していただければ、専門知識を生かし手術以外にもさまざまな対処法をお伝えすることができると思います。
講演会や勉強会に積極的に参加するなど、勉強にも熱心に取り組まれていますね。
クリニックの中にいると、得られる情報が偏りがちになるので、積極的に講演会などに参加するようにしています。若いドクターとの交流や、違う専門分野の先生の意見はとても参考になりますね。最近の講演会ではエコーを用いた診断・治療がトピックで、講演をきっかけに当院もエコーを導入し、治療に用いています。整形外科以外の内科など広い分野においての最新情報にふれることで、患者さんに多くの選択肢が提示できるようになることも、重要なことだと思っています。またクリニック内で定期的に勉強会を行い、スタッフ間での知識の共有や向上をめざしています。基本的な医学用語をはじめ、多い症状や薬の見込まれる効果、ケアの方法のほか、受付対応などをブラッシュアップしています。
患者の思いに寄り添うクリニックとして地域に貢献
トレーニングを含めた予防医学にも注力されていますね。
平均寿命が延びたことで、一人で健康的な生活を送るための体づくり、いわゆる「健康寿命」の確保は超高齢社会で生きる人々全体の課題となりました。当院でサポートしているトレーニングは、日常生活に必要な筋力、関節の可動域やバランス感覚の維持を目的としたものがメインです。また、寝たきりになる骨折の大きな原因として骨粗しょう症があります。骨粗しょう症を予防するために、骨密度を測定し、その結果に基づき、運動や食事指導、ビタミンDなどを中心とした飲み薬や注射の治療なども行っています。もちろんケガの治療は行っていますが、願わくば「ケガをしない、手術をしなくていい体づくり」をお手伝いする機会が増えるといいですね。患者さんには日頃から、「悪くなってから来院するのではなく、悪くなる前に来院してね」と、伝えています。
治療後のリハビリの環境について教えてください。
院内には整形外科で使用する機器をほぼ一通りそろえています。主訴に応じてそれらの機器を活用しながら、在籍している2人のセラピストが患者さんとコミュニケーションを取りつつ適切な施術を行います。当院には他にもリハビリ補助スタッフが2人、看護スタッフが2人、受付スタッフが3人いて、全員で患者さんとしっかりコミュニケーションを取りながら治療にあたっています。時には病気以外のたわいのない話をすることも、クリニックの大切な役割の一つです。ご家庭のこと、体調のことなどを話していると、意外なところから治療のヒントにつながることもありますので、普段から患者さんと積極的に話をするように心がけています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
周辺に大規模病院が多いこの地域の特性か、とりあえず大きな病院を受診したいという患者さんが多い印象です。急を要する場合は別として、一通りの設備もそろっているので、ほとんどはクリニックでも十分に対応することが可能です。逆にクリニックでは些細なことでも時間をかけて丁寧に診れるというメリットがあります。もちろん診察の過程で手術や精密検査が必要と判断すれば、地域の医療機関との連携がしっかりしているので、適切な機関に紹介させていただきます。また、大きな病院で手術した後のリハビリなどは手術した病院と連携をとりつつ、患者さんの状況を診ながら当院でじっくり行うことができますので、お困りのことや心配なことがあれば、ぜひ一度お越しください。