前田 勉 理事長、前田 覚 院長の独自取材記事
前田診療所
(大阪市港区/弁天町駅)
最終更新日:2021/12/01
JR西日本大阪環状線と大阪メトロ中央線の弁天町駅から東へ約250メートル。泌尿器科をはじめ内科・胃腸内科・整形外科・リハビリテーション科などを展開する「前田診療所」は、地域密着型の診療所だ。前田勉(つとむ)現理事長が開業したこの診療所は、2016年に2代目の前田覚(さとし)院長が就任したのをきっかけに、人工透析の専用施設も稼働。大阪市内や近郊に住む患者を広く受け入れながら、前田院長の日本透析医学会透析専門医としての知識を生かした治療を積極的に行っている。大阪ベイエリアの東端にあり、港町の風情を残す界隈で「患者の人生を大切にしたい」と語る前田院長と、前田理事長に、診療所の特徴や透析治療について、また今後の展望など詳しく話を聞かせてもらった。
(取材日2021年11月9日)
患者の思いや生活に沿うことを大切にした診療を
地域の皆さんに長く親しまれている診療所だそうですね。
【前田理事長】1979年に私が開業したのがスタートですから、こちらで診療を始めて40年以上が過ぎました。私は兵庫県西宮市出身ですので、弁天町にゆかりがあったわけではないのですが、開業まで大阪市立大学医学部附属病院に勤務していましたので、大阪環状線の沿線はよく利用していたんです。その中でピンと来たのが、弁天町でした。
【前田院長】私が生まれたのも西宮市でしたが、父の開業と同時に大阪へ引っ越してきました。まだ3歳くらいだったので、私からすると、すでに故郷のような感覚です。ですから、ここで院長として診療できていることをうれしく思っています。
院長に就任する際、コンセプトや目標のようなものはありましたか?
【前田院長】大きな変化としては、人工透析を行うための専用施設をスタートさせたことです。これは私の念願でもありましたので、今後は透析が必要な皆さんに気軽に利用していただける施設になっていければ良いなと思っています。また同時に、理事長がこれまでに積み重ねてきた地域密着型の診療所としても、引き続きしっかりした診療を行うことを忘れてはいけないと思っています。若い方から高齢の方まで、風邪などの軽い疾患から、生活習慣病をはじめとする慢性疾患まで幅広い患者さんがいらっしゃいます。地域の皆さんが親しみを持って、気軽に受診できる診療所であり続けることを大切にしていきたいですね。
患者さんと接するときに気をつけていることはありますか?
【前田理事長】私は「患者さんを脅かしすぎない」ことを大切にしていますね。ほとんどの患者さんは、医療機関に来るだけで緊張されています。病気はネガティブなものですが、だからといってネガティブな話をすればいいというものではありませんので、その点は気をつけてお話ししています。
【前田院長】私も同じで、患者さんを追い詰めないことが大切だと思っています。適切な治療をすればコントロールできる病気でも、完璧にコントロールできる方は少ないです。そこを追い込みすぎると、すべてが嫌になって治療から逃げてしまうかもしれないですよね。できるだけ患者さんの想いや生活に沿うことを大切にしています。
透析の専門知識と経験を生かした治療を実現
人工透析専用施設に関しても、同じ方針ですか?
【前田院長】まず大切なのは、人工透析が必要になる前に早期発見し、早期治療を行うことです。腎臓の病気は自覚症状がほとんどなく、気がついたときには重症化しているケースもあります。実際に倒れてしまったとか、影響があってから治療をスタートする方も多いのですが、実は腎臓は初期から適切な治療を受ければ、透析までの期間を引き伸ばすことも見込めます。ですから、まずは受診、特に健康診断などで異常が見られた場合には、ぜひ医療機関の受診をして診療や指導を受けていただきたいです。
【前田理事長】自覚症状がないとほとんどの方は「まあ大丈夫だろう」と思うんですよね。しかし、自覚症状がないからこそ病気を治すチャンスと考え、受診してもらえたらと思いますね。
透析が必要となると、やはり身構えてしまう患者さんが多いと思います。
【前田院長】これまでの人生で経験のないことをするわけですから、その心理は当然のことです。心配になったり、不安を感じることは当たり前だと思います。実際に、透析を開始すれば時間も回数もかかりますので、通院や治療が面倒と感じる患者さんも多いでしょう。そこで、当院では、患者さんが納得していただけるように説明し、希望がある場合には他の病院へ紹介状を書くこともできます。いくつかの医療機関で同じ診断結果が出ることで、透析をすることに対して前向きに捉えられる方もいらっしゃいますので、その方にとっては必要なステップだと考えています。また、透析の前には、施設を見学していただき、どんなことをするのかを実際に見てもらいます。それだけで安心していただけることもあるでしょうからね。
透析中も快適に過ごせるよう、さまざまな工夫をされていますね。
【前田理事長】透析は時間がかかりますので、できるだけ快適に過ごしていただくことが治療を続ける上で大切なことです。皆さんパソコンで仕事をしたり、テレビを見たり、思い思いに過ごされていますよ。
【前田院長】大阪市内の患者さんは送迎サービスもご利用いただけますし、患者さんの希望があればできるだけ実現できるように尽力します。旅行に行きたい、仕事が休めないなどの相談にも乗ります。日本透析医学会透析専門医として、持てるすべての知識と経験を生かした透析治療をしたいと思っています。また同時に、腎臓以外の不調や慢性疾患も見逃さないようにしています。安心できる透析治療を提供することはもちろん、体の不調について気軽に相談いただけるような関係性を築いていけたらと考えています。
地域のニーズに沿い、気軽に立ち寄れる場所をめざす
診療内容も幅広く、さまざまな不調について相談できるんですね。
【前田理事長】泌尿器科・整形外科をはじめ、内科・リハビリテーション・予防接種など、地域の医療ニーズに応えられるよう、まずは診させていただく。場合によっては、専門設備、入院施設のある大学病院など関連の医療機関に紹介する。病院への橋渡しをするのも、われわれの役割ですからね。
【前田院長】誰もが生きていれば何らかの不調を感じることがあります。風邪やインフルエンザのこともあれば、肩や腰の痛み、性病に悩むこともあるかもしれません。それらを幅広く診ることが、われわれのような診療所の役目だと思います。また地域に密着することで、1人でも多くの方の病気を早期に発見し、早期治療へ結びつけるのも大切な役目だと思って日々診療しています。
何をきっかけに受診すると良いのでしょうか?
【前田院長】1つは健康診断の結果が芳しくなかった場合ですね。要検査と言われたら、必ず受診しましょう。ほとんどの病気は、早期であればいくらでも手の打ちようがあるんです。しかし、放置してしまい、悪化してから焦って受診する方が多いです。治療は怖いし、お金がかかるし……と、悪い面ばかりが目につきます。病気は良いことではないですが、受診することによって生活を見直すことができたり、家族の絆を感じたり、自分の体に興味を持てたりと、少なからずプラスの面もあります。それを忘れないでほしいですね。
【前田理事長】受診のきっかけなんて、なんでもいいんですよ。友達について来たとか、なんとなくつらいとか、そのくらいの気楽さで構いません。特別ではなく、日常の中で立ち寄る場所になれば良いと思っています。
最後に今後の展望についてお聞かせください。
【前田院長】より良い医療を提供する場所であるとともに、患者さんにとってほっと安らげる場所でありたいです。私の理想は、“喫茶店のマスターとお客さん”のような関係を、患者さんと築くこと。別に用事がなくても来て、なんとなく話をして、解決したりしなかったり、時には隣り合わせた人と話が盛り上がったりするのもいいかもしれません。良い医療環境と、良い人間関係の中で、患者さんのQOLを上げるためのお手伝いをしつつ、さまざまな疾患から体を守るための知恵を得る場所としても活用してもらえる。そんな診療所になれるように頑張っていきます。
【前田理事長】患者さんの想いを大切にしつつ、これからも地域の皆さんの健康を守るために、さまざまな面でお役に立てればうれしいです。