松崎 修二 院長の独自取材記事
まつざき小児科
(宇治市/木幡駅)
最終更新日:2024/11/29

1994年に開院し、2024年で30周年を迎えた「まつざき小児科」は、京阪宇治線の木幡駅から歩いて2分ほどのビルの2階にある。院長の松崎修二先生は、物腰がやわらかく、なんでも相談できそうな雰囲気のドクター。その人柄だけでなく、大規模病院で長く新生児集中治療室(NICU)に携わってきた実績や、医師としての経験が豊富なところも強みだ。小児腎疾患の治療を得意としているが、専門性にとらわれずに小児科疾患全般を広く受け入れたいという想いから、専門性を積極的にはアピールしていないそう。診療では「子どもは小さな“大人”ではない」ことを肝に銘じ、異変がどこから来ているのかを注意深く見極めることを心がけている。「些細な不安でも気軽に相談に来てほしい」と話す松崎院長に、同院の診療について話を聞いた。
(取材日2023年5月10日/更新日2024年11月25日)
実績や人柄から長く愛されてきた小児科クリニック
まずは先生が小児科を専門に選んだ理由から教えてください。

子どもは本来明るいものです。病める子どもたちが明るさを取り戻すのを見るのはうれしいものです。子どもが好きで赤ちゃんが泣いていても、まったく気になりません。喉を診るといったちょっとしたことでもとても楽しそうに生き生きした表情をしているといわれます。そういう意味では天職なのかもしれません。さらに、大学時代の小児科の教授がとても魅力的だったというのもあります。勉学に対して厳しい人でしたが、いつも周囲に的確な指摘を与えていました。その姿を見て、この人のもとなら大きく成長できるのではと感じたのです。
来院する患者さんにはどのような主訴が多いですか?
患者さんの主訴として多いのは、アレルギー疾患や感染症などですね。また、勤務医時代に新生児集中治療室(NICU)を担当していたこともあり、乳幼児の診察も得意だと思います。もちろん、これ以外にもお子さんの疾患でしたらどんな疾患でも対応したいと思っています。せっかく当院にお越しいただいたのに、うちでは診れません、と言ってしまうのは不安ですよね。まずは症状をじっくりと聞き、当院で治療が可能なのか、別の病院へ紹介したほうがいいのかをご相談させていただきます。また最近は、核家族化が進んでいたりで、子育てをしていると孤独を感じたり、悩みを抱えてしまう親御さんも多いです。そのため、ちょっとした育児の相談にも耳を傾け、病気を診るだけではなく、「子育て」のサポートも担っていきたいと思っています。当院にお越しいただくことで、親御さんの気持ちも晴れやかになるような医院になりたいですね。
開業までのご経歴についても教えてください。

関西医科大学を卒業後、同大学の大学院に進み、博士課程を修了するまで、関西医科大学には長く通いました。その後3年ほどほかの病院の勤務も経験しましたが、主に同大学附属病院で診療経験を積みました。守口市の滝井に小児科メインの医療施設があり、そこの新生児集中治療室(NICU)も長く担当しましたね。リスクのある新生児を診るわけですから、盆や正月も関係なく当直をこなしていましたし、とにかく忙しい毎日でしたね。現在は生まれてくる子どもにリスクがあるとわかれば、母体を大規模病院に搬送してから出産することが一般的ですが、当時は産まれる赤ちゃんをこちらが迎えに行くスタイルでした。ですので、時には片道1時間もかけて迎えに行き、蘇生をしながら搬送したこともありました。
NICUを担当されたのはなぜですか?
最初は小児腎疾患を専門としていたのですが、腎臓だけが専門というのもどうかな、という思いもあり、経験を積むためにNICUを担当することにしました。また、先ほどお話しした教授が、日本のNICUでの医療において先駆け的な存在だったのも大きな理由です。小児科は本来、内科的な疾患を診る領域ですが、新生児の場合は外科的な疾患を抱えて生まれてくることも多いんです。もちろん私が自分で外科的な治療をするわけではないのですが、外科的疾患があるのではないかという直感は、NICUでずいぶんと養われたと思います。
子どもは「小さな大人」ではない
開業のきっかけは何だったのでしょう。また、開業して感じたことを教えてください。

NICUでの仕事を「やりきった」と自分自身が思えたこと、そしてもっと小児科を広い目で見てみたいと思ったのがきっかけです。子どもが活発に明るく活動し、成長できるように日常的なサポートをすることは大切なことです。もちろん、子どもだけでは成長できないので、周囲の大人をサポートしながら一緒に、子どもたちが自分で成長しようとする意欲を引き出せるように働きかけたいと思っています。また、開業してみると、当たり前ですが、医師は私一人。偏った目で患者さんを診ないように注意しなければなりません。ですので、開業後は再び小児科の基本に立ち返って診療することを心がけるようになりました。
診療の際に心がけていることはありますか?
小児科領域の有名な言葉に「子どもは小さな大人ではない」があります。子どもの病気や症状は、大人のそれとは根本的に違うんですね。ただ、子どもは自分では症状を正確に表現することが難しいので、周りの大人が助けてあげる必要があります。例えば、子どもが「痛い」と言ったら、頭なのか、おなかなのか、喉なのか、よく話を聞いて観察してわかってあげることが大切です。特に開業してからは、治療の判断が私一人に委ねられていることを肝に銘じながら、しっかりと診て、症状を見逃さないように心がけています。また、「Not doing well」のお子さんを、これまでの経験をもとに注意深く診ることも大切にしています。
「Not doing well」とはどのような状態ですか?

熱や嘔吐などの目立った症状がないのに、なんだか元気がない、なんとなくいつもと違うといった状態で、特に小児科の領域で重要とされている概念です。以前、担当したお子さんがまさにNot doing wellの状態で、診察では原因がわからないけれど、このまま家に帰すのは嫌だな、と感じたことがあり入院していただくことに。するとその夜に腸重積であることがわかったんです。Not doing wellの患者さんとして今でも印象に残っていますね。このような経験値は、はやりの生成AIでは肩代わりはできないようです。
親が心配するのは当たり前。些細なことも気軽に相談を
親御さんとの接し方で心がけていることはありますか?

やはり注射や診察の時などは、乳幼児はみんな泣くものですが、中にはすごく泣く子もいます。私としてはどんなに泣いてもいいんですよ、という気持ちですが、親御さんの中には申し訳ない気持ちになる方もいると思います。ですから、どんなに泣いても帰る時にケロッとしていたら「立ち直り早いね!」とか、診察の時に嫌がる子がいたら「うまく逃げるなあ」などと、お子さんを褒めることを心がけています。そうすると、親御さんもそうですが、お子さん自身もホッとされます。子どもも子どもなりに、泣くのはいけないんだと思っているんでしょうね。いくら泣いても終わったら「頑張ったね」「できたじゃない」と声をかけています。
地域の園医や校医も長く担当されていると聞きました。
はい。複数の保育園や学校で園医と校医を引き受けています。やはり学校健診はとても大切で、実際にそこで異常が発見される子もいるんです。ただ、長時間聴診器をつけながら集中しているので耳は痛くなりますし、とても体力が必要だと感じました。生徒一人ひとりにあいさつや声かけをしていたら、健診が終わる頃には声がかれてしまうこともあります(笑)。健診で診た子が、その後当院を探して来てくれたことも何度かあり、うれしかったですね。
読者へのメッセージをお願いします。

開業して30年近くがたつので、親子で来院してくださる方も少しずつ増えてきました。そうやって健康が引き継がれていくのを間近で見られることに喜びを感じます。親となれば、自分の子どもに対して心配事が多いのは当たり前ですので、些細なことでも気軽に相談に来てほしいと思います。私に話すことで親御さんの気持ちが楽になれば、それは子どもにも伝染します。私はNICUに長く携わっていましたので、赤ちゃんでもためらわず連れて来てください。