神谷 透 院長の独自取材記事
神谷耳鼻咽喉科医院
(京都市右京区/常盤駅)
最終更新日:2025/06/09

常盤駅から丸太町通を挟んだ北側に「神谷耳鼻咽喉科医院」の入るクリニックビルがある。ビルの1階は大型薬局で、同院がある2階にはエレベーターでアクセスできる。院長の神谷透先生は、先代である父が開業して以来30年以上にわたって地域の健康を支えてきた同院を継承。新しい設備やシステムを導入し、現在の場所に移転開業した。「丁寧でわかりやすい診療」を心がけ、必要に応じて患部の画像などを示しながら、症状や使用する薬などについて、しっかりと説明してくれる。こうした丁寧な対応ができるのは、新型の電子カルテを導入するなど、診療以外の業務効率化に積極的に取り組んでいるからこそだ。「地域のかかりつけ医として、何でも気軽に相談してほしい」と語る神谷院長に、同院の診療姿勢や力を入れている診療などについて語ってもらった。
(取材日2025年5月13日)
丁寧な診療で不調の原因を突き止める
どのような患者さんが受診されますか?

開業した当初は父の診療所に通っておられた方の割合が高く、年齢層も高めでしたが、徐々に若い患者さんが増えてきて、お子さんや子育て中の方も多くお見えになります。中心は周辺にお住まいの方ですが、少し離れた所から受診されるケースもあります。新型コロナウイルス感染症が流行した時期に多くの医療機関で受け入れが難しくなる中、当院では積極的に患者さんを受け入れていたので、その頃に少し遠方から来られて、以来そのまま継続して通ってくださる方などですね。
特に多い訴えはありますか?
やはり鼻水、鼻詰まり、咳など、いわゆる風邪症状の方が多いですね。風邪をこじらせて副鼻腔炎になっている方、お子さんなら中耳炎になっている場合も多く、診察してみると鼓膜の奥に液体がたまった滲出性中耳炎というケースも少なくありません。風邪の症状があると、内科にかかる方が多いと思いますが、鼻や耳の様子を直接診ることができるのが耳鼻科の強みなので、しっかりと経過を追うようにしています。内科で風邪の診療を受けたけれど、どうもすっきりしないと当院に来られる方もおられます。
患者さんと接する際に心がけていることを教えてください。

症状や治療について、わかりやすく丁寧に説明することを大切にしています。必要と判断した場合は、内視鏡を使って鼻や耳の内部の様子を撮影し、画像を見ていただきながら説明することで、ご自身の症状について理解していただきやすく、どのようなお薬を使うのかについても納得していただけるのが利点です。また、次回以降について伝えることも大切ですね。症状が改善すれば再受診の必要がないのか、改善したように見えてもまだ大丈夫とは言えない状態なのでいつ再受診すれば良いのかなど、お伝えするように心がけています。
表面的な症状だけでは判断できないこともあるのですね。
例えば、滲出性中耳炎になっているお子さんの場合、本人は聞こえにくさなどを感じているはずですが、特にそれについて周りの大人には伝えることはあまりありません。本人もそれほど気にしていないという場合もけっこうあります。でも、実際はくすぶっていることも多く、保護者の方にそのことをお伝えすると、「そんなに悪いのですか」と驚かれることもあります。それだけに、しっかりと状態が改善するまで診ることが大切です。
受診・通院しやすいクリニックをめざす
こちらに移転開業された経緯を教えてください。

祖父も父も耳鼻咽喉科の医師で、先代院長である父から当院を継承しました。しかし、父の診療所を受診するためには階段を使う必要があり、足が悪い患者さんは来院が難しい状態でした。老朽化のために建て替えの話も出ていたのですが、そんな折にちょうど現在の場所が空きました。エレベーターが利用でき、駐車場も確保できることから移転を決めたのです。院内はバリアフリー設計を採用し、車いすやベビーカーでもストレスなく移動できるよう通路も広く取っています。
設備なども新しくされたのですね。
患者さんが受診しやすいクリニックでありたいと考えており、ウェブ予約のシステムやウェブ問診も導入しています。直接受診される方もおられますが、その場合も少し待ち時間は発生するものの、対応するようにしています。待ち時間をできるだけ短縮できるよう、電子カルテも導入しました。これまで使ってきた電子カルテの動きが遅かったので、先日、新しいシステムに替えたばかりです。診療以外の部分についてはできるだけスピーディーに運用できるよう常に改善方法を探っています。待ち時間が長い、どれくらい待たされるかわからないという状況では、受診をためらう方もおられると思いますし、治療すべき疾患への対応が遅れてしまう恐れもありますからね。
力を入れている診療について教えてください。

アレルギーの患者さんも多いので注力していますね。春先のスギ花粉、ヒノキ花粉だけでなく、夏や秋にも花粉症の原因となる植物があり、さらにダニやハウスダストは季節を問わないので、ほぼ年間を通じて不調を訴えて受診されます。通常は血液検査をしてアレルギーの原因物質などを特定するのですが、10歳くらいまでのお子さんの場合は、指先からごく少量の血液を採取する方法を取り入れています。また、スギ花粉症やダニアレルギーの方については、アレルギー体質の改善をめざすための舌下免疫療法も提供可能です。一般的には5、6歳くらいから始められるとされていますが、3〜5年の治療期間が必要なので、お子さんの場合はご本人が頑張ることができるか、ご家族がしっかり協力できるかなどを確認した上でご案内するようにしています。
アレルギー薬に抵抗を感じる方もおられるそうですね。
一昔前はアレルギーの薬というと眠気などの副作用というイメージが強く、抵抗を感じる方もおられますね。しかし、最近は新しいタイプのお薬が出ているので、あまり問題になりません。最近は、市販薬もさまざまな種類がありますが、その方とお薬の相性もありますし、実は副鼻腔炎などの他の疾患である場合もあります。薬を使わないで我慢するのではなく、耳鼻科で診療を受けて、ご自身に合ったお薬の処方を受けることをお勧めします。
かかりつけ医として地域の要望に応える
補聴器診療用のお部屋もありますね。

現在、週に2回、言語聴覚士の方と補聴器の業者さんに来てもらって、補聴器に関するさまざまなご相談や補聴器選び、調整に対応しています。高齢化に伴って聞こえの悪さに悩む方が増えている一方で、補聴器を使っておられる方は諸外国に比べて少ないのが現状です。きちっと調整をしてもらわずに使っているケースや、使いにくいので放置してあるという方も多く、中には、通販などで扱っている集音器を補聴器と混同している方もいます。専門の技術を持った方にきっちり合わせてもらうことが必要です。聞こえが悪くなると、認知症のリスク上昇にもつながるので、必要とされる方にご自身に合った補聴器を使っていただけるよう、今後はさらに力をいれていきたいと考えています。
超音波検査装置、CT、レーザー治療器など設備も充実していますね。
CTは副鼻腔炎の様子を確認するのに有用で、超音波は例えば首のリンパ節や甲状腺が腫れているといった訴えなどを診る際に使用しています。レーザーはアレルギー反応を軽減させるために、鼻の粘膜に照射します。
今後の展望を聞かせてください。

もっとクリニックの規模を広げて、より多くの患者さんに対応していきたいですね。おかげさまで来院される患者さんの数が増えていますので、待ち時間が長くならないように、非常勤の先生に入っていただくなどしていければと考えています。
読者や地域の方にメッセージをお願いします。
さまざまな病院と連携しており、手術などが必要な場合は、患者さんの症状や治療の内容、利便性なども踏まえて適した病院を紹介します。それ以外のケースについては、当院でトータルに対応できる環境を整え、しっかりと治療後の状態も見守ることを重視しています。自覚症状が乏しく、放置されていた疾患が、受診がきっかけで見つかることも多いので、地域のかかりつけ医として、気になることなどは気軽にご相談ください。