山川 智 院長の独自取材記事
やまかわ整形外科・リハビリクリニック
(京都市下京区/梅小路京都西駅)
最終更新日:2024/05/13
京都市下京区にある「やまかわ整形外科・リハビリクリニック」。明治時代から続く同院を2021年に継承した5代目院長、山川智(やまかわ・さとし)先生は「下京区の中で特に“西七条の人は元気”と言われるように頑張りたい」と笑顔で語る。継承後、院内を大きくリニューアルし、運動指導とリハビリテーションに特化した整形外科へと変貌させた。子どもの頃から陸上やサッカーに励み、骨折時の手術やリハビリテーションを受けてきたという。最近は近隣の小・中・高校生の受診も増え、自身の経験も踏まえて、ケガの予防のためのアドバイスも行っている。先進の治療機器や新しい薬にもアンテナを張り、情報収集にも熱心な山川院長に、注力する治療から将来の抱負まで、じっくりと聞いた。
(取材日2024年4月2日)
専門性を生かした診療で地域に貢献。地元を元気に
開業が明治時代。とても由緒ある医院なのですね。
初代が医院を始めたのが1892年ですから、もう130年近く続いていることになりますね。私で5代目となり、4代目の父に代わって継承してちょうど1年がたちました。私は川崎医科大学出身ですが、卒業後は父と同じ兵庫医科大学で初期研修を受け、その後は関連病院に入って経験を積みました。勤務医時代は手術がメインで、外傷や骨折などの手術のほか、人工関節や脊椎の手術なども行っていました。そんな時に聞こえてきたのが、「退院してからもリハビリテーションを続けたいけれど、どこに通ったらいいのかわからない」という患者さんの声でした。私自身、手術後の患者さんがどういう経緯をたどるかについて不安に思う部分がありましたし、完全に良くなるところまでしっかりとサポートしたいという気持ちもありました。そこで患者さんのご要望にお応えできる環境をつくり、できる限りのことをやっていきたいと新しくスタートを切りました。
リニューアルして、どのように変えたのですか?
1つは理学療法士を迎え入れたことです。父からもらった助言の中に、「医師はちゃんと患者さんを触りなさい」という言葉があります。整形外科に限らず、しっかりと患者さんと関わっていくことで、患者さんに安心してもらうことが大事だという意味ですが、文字どおり触診することの大切さを表わしていると思います。理学療法士は体の動きの専門家です。一人の患者さんを真の意味で癒やしていくためにも、医師の私だけでなく彼らの目線がとても重要なんですよ。また、子どもからお年寄りまで、どなたにでも通っていただきやすいように、スロープやエレベーターを設けてバリアフリーに対応、駐車スペースも7台分用意しました。
リハビリテーション室も充実していますね。
今までは1階だけだった診療スペースを2階にまで広げ、2階全体をリハビリテーション室にしました。従来のけん引や電気治療器といった物理療法はもちろん、理学療法士とトレーニングが行えるスペースも設け、先進のトレーニング機器も導入しています。骨粗しょう症や骨折といった治療が必要な人に、自宅で行える筋力トレーニングの指導を行って転倒防止などにつなげたり、スポーツを頑張る人たちのサポートなど、さまざまなリハビリテーションに対応したいと考えています。外に向かって張り出た大きな出窓が、開放的なので楽しくトレーニングをしていただけるのではないかと思っています。
どの年代、症状にも有益なリハビリテーションを追求
骨粗しょう症の治療にも注力していると伺いました。
骨折のリスクが増大する骨粗しょう症は、ご高齢の方にとって寝たきりや要介護につながる事態を引き起こす重大な病気です。ところが骨粗しょう症は自覚症状がまったくないので、骨折して初めて気づくという方が多いのが実情です。エックス線で見ると、骨の外側の部分が薄くなってることや、筋が走って内部がスカスカな状態になっていることが確認できるので、診療では「骨密度の検査をしてみませんか?」と積極的にお声かけします。当院は「隠れ骨粗しょう症」の発見につながる、DEXA法を用いた先進の骨密度測定器を導入しています。10分ほど横になっていただいて、腰と太ももの2ヵ所を撮影するだけの簡単な検査で、予約の必要もありません。骨というのは、運動の刺激が伝わることで強くなっていきます。普段から適度な運動を行うことはとても大切で、骨粗しょう症に対しても体を動かすことが有用なのです。
スポーツをする若い方の受診も増えているそうですね。
リハビリテーションは骨折などのケガに対してはもちろんですが、スポーツを安全に行うための体づくりにもつながります。最近は近隣の小・中・高等学校に通う、サッカーや野球、陸上を部活動で行っている子どもたちの来院も増え、当院の診療が認知されてきていると実感しています。筋力は中学生ぐらいから発達し始めますが、それが急激なため体に硬さが出てしまい、ケガにつながることもあります。普段から柔軟性を高めることがケガ予防につながりますので、リハビリテーションで行った体の動かし方を活用していただければと思います。また競技によって体の使い方にも違いがありますから、理学療法士が競技に合わせたアドバイスも可能です。また、当院では「痛みが取れるまで安静に」というのではなく、動かしながら痛みの改善をめざす方針です。なるべく競技をストップする期間を短くして、パフォーマンスを落とさないようにすることを配慮しています。
どのようなリハビリテーションを提供していきたいですか?
「良くなりそう」「今までとは違う」と言ってもらえるようなリハビリテーションですね。そのために何をしているかというと、当院で初めてリハビリテーションを受けた方には、リハビリテーション後にもう一度診察室でお話しをさせていただいて、今後について一緒に考えます。腰や膝もそうですが、関節は筋力で支えられています。マッサージをして一時的に痛みが改善に向かったとしても、おうちへ帰って同じ生活を繰り返せば体は元へ戻り、痛みも戻るでしょう。そうならないために、体の使い方を知ってもらい、トレーニングで筋力をつけていく運動指導を重点的に行います。手術後のリハビリテーションも同じです。手術を受けた場合、手術と同じくらいリハビリテーションも重要だというのが私の考え。術後のリハビリテーションをきちんと行わなければ、せっかく受けた手術も台なしになりかねないほど、体にとって重要なものだと考えています。
歴史にとらわれず、常に新しいことにチャレンジする
診療で大切にしていることは何ですか?
「患者さんが、自分の親や家族だったらどうするか」ということを考えて診療するようにしています。また、医院を訪れる患者さんは、少なからず不安を持っているもの。病気の説明ではなるべくわかりやすい言葉を使い、図や写真を使った丁寧な説明を行うなど、少しでも不安を取り除くような診療を心がけています。また、同じ病気の患者さんでも、職業や生活スタイルによって、ニーズは異なります。薬が飲みづらい人には注射を中心とした治療にしたり、アクティブな人には服薬だけでなく運動指導を取り入れたりと、一人ひとりに合った診療を提案するようにしています。
手術が必要な患者さんにはアドバイスも行っているとか。
今までにたくさんの患者さんを手術してきた経験から、おおよその予測ができるので、どの程度の手術になるのか、術後の過ごし方などお話しさせていただいています。大きな病院に行くと緊張されると思いますし、今まで顔を合わせたことも話したこともない医師に気後れすることもあるでしょうから、事前に予備知識を入れた状態で手術に臨めるように、と考えています。また、手術先の病院をご紹介する際には、患者さんの希望を優先していますが、疾患によってはこちらで良いと思った病院をご紹介することもあります。長年のお付き合いから各病院の得意分野や特徴などがわかっている点も、当院の強みです。
今後の展望をお聞かせください。
私はこの場所で生まれ、育ちました。ですから地元の方々に貢献したい、という思いがとても強いのです。とにかく地元を良くしていきたい。下京区の西七条を「ここは元気な人がたくさんいる地域だね」と言われるような場所にすることが私の目標です。そのために新しいお薬や先進の機器にもアンテナを張っています。理学療法士とも密に連携しながら、私自身も腕を磨き、診療の質を上げ、常に進化を続けられるように努力してまいります。お子さんから高齢の方まで気軽に来院いただき、元気に動ける体を一緒にめざせたらうれしいです。