関沢 敏弘 所長の独自取材記事
西七条診療所
(京都市下京区/梅小路京都西駅)
最終更新日:2026/07/17
程近い場所に鉄道博物館や水族館があり、観光客の利用も多い梅小路京都西駅。そこから徒歩5分ほどの場所に「西七条診療所」がある。内科、小児科、皮膚科、放射線科を標榜しており、地域のかかりつけ医として幅広く対応している同院は、「無差別平等の医療」を目標に掲げ、社会福祉制度を積極的に活用していることも特徴だ。医療のゼネラリストとして診療にあたる関沢敏弘所長は、京都大学を卒業後、複数の病院や診療所を経て1996年から西七条診療所へ。以来30年にわたって地域医療に貢献している。患者への温かいまなざしを、休日は自宅で育てている植物に向けるという心優しい関沢所長に、診療所の歴史や診療方針について聞いた。
(取材日2026年7月2日)
「できるものは何でも診ていく」姿勢で30年
こちらの診療所は歴史が長いのですね。

西七条診療所の成り立ちは少し特殊で、約70年前の1955年、地域の皆さんからの募金をもとに開設されました。私は、ここへ来る前には北区の待鳳診療所で所長を務めていたのですが、そこも同じような経緯で生まれた診療所です。戦後間もない1950年代当時は、医療資源が十分ではなかったので「自分たちの医療機関は自分たちでつくろう」という運動が広がっていたんですね。西七条診療所は、以前は七条小学校の近くにあり、十数年前に今の場所に移転してきました。私は以前の場所にある時から所長を務め、もう30年になります。出会った時は赤ちゃんだった患者さんが今ではお母さんになっていたりして、時の流れは早いものです。
幅広い診療科目と体制について教えてください。
せっかく頼って来院してくださった患者さんに、「内科しか診ていないので皮膚の症状は皮膚科へ行ってください」や「お子さんは診られません」とお断りすることがないよう、幅広い領域に対応できる体制を整えています。「できることは何でも診る」というのが私の基本的な姿勢です。特に皮膚科では、アトピー性皮膚炎にも対応していることが強みの一つです。基本的に私が診療を担当していますが、水曜日には神経内科の先生も来られ、ご高齢の患者さんに多いパーキンソン病や脳卒中後のまひなどを診察していただいています。また、京都市の特定健診や個人健診、お子さんの予防接種なども実施しています。さらに必要に応じて、腹部や心臓の超音波検査も予約制で行っています。
さまざまな困り事について、気軽に相談できるのですね。

ええ。「症状があるけれど、どの診療科にかかったらいいかわからない」といった場合も、ご遠慮なくご相談いただけたらと思います。当院でまず診察し、診断を行った上で、必要に応じて専門の医療機関へおつなぎすることもできます。例えば、「骨が折れているかもしれない」とお越しくださった場合も、当院でエックス線検査を行い、実際に骨折が確認された際には速やかに整形外科をご紹介します。また、お忙しい方にも受診していただきやすいよう、お電話でのご予約にも対応しており、近々ウェブ予約の対応も予定しています。夜間診療も行っていますので、お仕事帰りの「最近、肌にブツブツができて気になる」などといったご相談もお任せください。
すべての人が安心して医療を受けられるように
コンセプトに掲げる「無差別平等の医療」とはどういうことでしょうか。

「『医学的』以外の理由が、治療の障害となってはいけない」というのが、私たちの考える「無差別平等の医療」です。例えば、身体や精神の障害によって働くことが難しく、経済的に困窮している方や、さまざまな事情で外出が難しい方もおられます。そうした方々が必要な医療を受けられなくなることがないよう、私たちは可能な限り支援したいと考えています。その一つが、社会福祉法第2条第3項第9号に基づいた「無料低額診療事業」のご案内です。制度の利用には少し手間がかかりますが、必要な方に医療が届くことを第一に考え、そうしたサポートも丁寧に行っています。また、長年にわたり訪問診療にも取り組んできました。通院が難しい方のもとへこちらから伺い、どのような状況にあっても安心して医療を受けていただける地域でありたい、そんな思いで日々診療にあたっています。
訪問診療はどのように取り組んでいるのですか。
通院そのものが負担となるような患者さんにとっては、医師がご自宅まで伺うほうが負担も少なく、待ち時間もありません。以前は週に1回、午前中の診療を終えてから、近隣の患者さんのご自宅を自転車で回っていました。それが少しずつ増えて、今は週に4回、車で訪問診療を行っています。そのうち2回は私が担当し、残りの2回は外部から応援に来てくださる先生にお願いしています。訪問診療では患者さんの生活環境やご家族との関わりなど、診察室では見えにくい部分まで把握することができます。その方の生活背景を理解した上で診療し、一人ひとりの思いや希望に寄り添った医療を提供することが大事だと考えています。それができた時は、特に訪問診療の意義を感じますね。
「下京健康友の会」という活動もされていると聞きました。

以前、デイサービスを行っていた3階のスペースを活用し、現在は健康づくり講座や趣味のサークル活動を行っています。絵手紙や生け花、民踊、着つけ教室などがあり、地域の皆さんが和やかに交流されています。実は、この活動はスタッフの提案から始まったものなんです。「こんな取り組みをしてみてはどうか」という声に私も賛同し、多くの方に支えられながら長く続いています。こうした活動は、地域住民の皆さんが主体となって、住みやすい街づくりと健康づくりのために取り組まれているんです。私たちも単に医療を提供するだけではなく、友の会の皆さんと協力しながら、誰もが安心して健康に暮らせる地域づくりを大切にしています。地域の方々が仲間とのつながりや生きがいを持つことは、心身の健康にもつながります。診察室の中だけでなく、地域全体で健康を支えていく。そうした取り組みもまた、私たちが考える地域医療の大切な役割だと思っています。
どんな時も相手を尊重して丁寧に接する
先生はどうして、この診療所の理念に共感されるようになったのですか。

明確なきっかけがあったわけではないのですが、自分自身の生い立ちが影響しているかもしれません。私は福井県に生まれ、実家は小さい農家で、経済的にそこそこ大変な思いをしながら育ちました。小さい頃からぜいたくをした記憶がなく、そんな環境から「貧しい人も医療を受けられる社会」への思いが芽生えたのではないでしょうか。中高生の頃は建築分野にも興味があったのですが、医学部に入った姉の影響を受けて「自分もできるんじゃないか」と医師をめざすようになり、京都大学に進みました。もともとの専門分野は循環器だったので、この診療所に来た時はちょっとドキドキ、ハラハラでしたね。赤ちゃんも、湿疹の人も、ケガの人も来る。でも、それこそが地域のニーズなのだろうと、それに応えたいと思い日々診療に向き合ってきました。
患者さんとの接し方で心がけられていることを教えてください。
「親しき仲にも礼儀あり」で、言葉遣いには気をつけています。私はまず相手を尊重することが大切だと考えています。そのため、どなたに対しても丁寧な言葉で接するよう心がけています。当院には経済的に困難を抱えている方も来院されます。そうした方々の中には、社会の中で十分に尊重されず、つらい思いをされてきた方もおられます。だからこそ私は、立場に関わらず、相手を尊重しながら接したいと思っています。「どうなさいましたか?」といった丁寧なお声がけも、そうした思いからです。
休日の過ごし方や、診療所の今後についてもお聞かせください。

休日はひたすらゆっくり過ごしています。趣味と聞かれれば、花を咲かせることでしょうか。植物が好きなんですよ。いろいろと育てていますが、カサブランカや富貴蘭といった気品を感じる花が特に好きです。植物園にもよく足を運びますね。診療所の今後のこととしては、自分も加齢は避けられませんので、そろそろ診療所の後継者を見つけたいですね。信頼できるお若い先生にバトンを渡せるめどがつくまでは、元気で頑張らなければと思っています。とは言うものの、自分の健康づくりは、なるべくエレベーターやエスカレーターではなく階段を使うことくらいで、良くないなと反省する日々で(笑)。何か運動もしないとなあと考えているところなんですよ。まずは自分も元気でいて、これからも地域のために診療を続けていきたいですね。

