墨 卓哉 院長の独自取材記事
墨医院
(一宮市/玉ノ井駅)
最終更新日:2024/07/11

名鉄尾西線・玉ノ井駅から徒歩5分。近くには大型スーパーマーケットやホームセンターもあり、通勤通学や買い物のついでに寄ることができる好立地にある「医療法人 墨医院」。同院は、院長の墨卓哉先生の祖父が1953年に開業。以来、木曽川町を中心に地域住民の健康を支えてきた。墨院長は医学部を卒業後、総合病院や市民病院で心臓カテーテル治療などの研鑽を積み、2020年5月に同院を継承。日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医でもある。患者にとって難しい医学用語は、自作の図解を用いながら一つ一つ丁寧に説明する優しい人柄の墨院長に、治療で大切にしていることや今後の展望について聞いた。
(取材日2024年6月3日)
幅広く研鑽を積み、地域住民の健康を守る
先生で3代目となる、地域に根差した内科医院だそうですね。

1953年に祖父が開業し、2020年5月に父の後を継ぎました。祖父も父も内科の医師でした。医師が多い家系に生まれ育ったこともあり、小学生の頃から家業を継いで内科医になるのが義務だと言われたこともありましたね。親に反発したい若い頃は、絵を描きたいとかファッションに携わる仕事をしたいなどと思っていました。しかし、地域の皆さんに頼られている親の背中を見て育ちましたし、高校生の頃には医学部一本に道を絞りました。
内科の中でも循環器を専門にされたのはなぜですか?
進学先である東京の大学の医学部での恩師が、実績のある循環器内科の医師であったことが影響しています。当初は循環器内科の救急医療的な領域に興味がありました。急変した患者さんの一命を取り止めるための短期間での治療に魅力を感じていたからです。しかし、生活習慣病が進行した結果心疾患を患っている多くの患者さんを目の当たりにすることで、少しずつ意識が変化していきました。心臓を守るためには生活習慣病の予防と治療が必要であると痛感し、目の前の症状だけではなく、患者さんの5年先を見据えて治療する必要性を感じるようになりました。その考えが今につながっています。
総合病院ではどういった研鑽を積まれましたか?

最初の赴任先は不整脈の治療を得意とする病院で、24時間いつ呼び出されるかわからないほど忙しかったです。不整脈の治療を中心にさまざまな経験を積んだ後、心筋梗塞や狭心症の緊急カテーテル治療を任せられるようになりました。次に勤めた市民病院は、当時は救急車の受け入れがとても多い病院で、数多くの患者さんの治療に携わらせていただきました。目まぐるしい忙しさでしたが、数多く積ませてもらった臨床経験と並行して、患者さんの統計データを取って研究したことは、開業医となった今でもとても役に立っています。
循環器の専門的視点から、予防に力を入れる
開業医になられて、気にかけていることはありますか?

現在の医療制度は、総合病院や大学病院は急性期の患者さんを治療して、その後は町のクリニックに任せる連携体制となっています。クリニックでは日常生活を営みながら病気と付き合っていく患者さんを長期間診ていくので、患者さんのちょっとした変化にも気を配るように細心の注意を払っています。生活習慣病の患者さんの場合、血糖値ばかりを気にして日々の血圧を気にしない方も多くいらっしゃいますが、私は循環器専門医として生活習慣病が進行した結果心臓を悪くした患者さんをたくさん診てきたので、心臓を守るためには血圧の管理が重要だと考えています。高血圧症は無症状なので、管理が面倒だと感じて治療に向き合えない方も多いのではないでしょうか。その気持ちは理解できますが、放置するわけにはいきません。少しでも前向きに治療に取り組めるよう、患者さんの気持ちに寄り添いながら、丁寧に説明することを心がけています。
血圧の管理以外で、生活習慣病の方の健康管理で大切なことは何でしょうか?
食事と運動です。食事の中で特に気をつけたいのは塩分ですね。和食は塩分が多いので、取りすぎてしまう傾向にあります。目標値である1日6g以内に近づけるためにはどうしたらいいか、患者さんの食生活を伺いながら、ポイントをアドバイスしています。適度な運動は生活習慣病の方だけではなく、心疾患の方にも必要なことです。そのためにスポーツジムのようなリハビリテーション室を設けていて、ウォーキングができる機器などを置いています。血圧、食事、運動。これらをしっかり管理していくことが健康寿命を延ばすための鍵となるので、患者さんの生活状況を聞きながら、一人ひとりに合った治療方針を考えています。
先生のご専門である虚血性心疾患の予防についても教えてください。

脂質異常症、糖尿病、高血圧症などの生活習慣病の方は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈の血管の壁にコレステロールがたまってきます。一次予防として、この段階で生活習慣病の管理をして冠動脈を守ることが重要です。コレステロールがたまり続けると冠動脈が狭くなり、心臓に血液が行き渡らなくなって、胸の痛みを感じます。詰まった先の血流がなくなると心臓の筋肉が急速に死んでゆき、心臓に一生ダメージが残ってしまうだけでなく、最悪の場合は死に至ることもあります。これが虚血性心疾患です。ダメージが残った心臓は発症前と同じレベルまでには回復しません。発症後は再発を予防し、今の心臓機能を維持することが大切です。状態が落ち着くと自己判断で治療を中断してしまう人がいますが、これはたいへん危険です。血圧やコレステロール値、症状によって必要な薬が変わるので、定期的な通院を継続して再発を予防してほしいです。
地域の患者のために、診療時間を長く設ける
診療開始時間は早く、終了時間は遅いですね。何か理由はありますか?

当院の診療時間は祖父の代から変わっていません。この地域はベッドタウンだから、患者さんが仕事に行く前に通院できなければいけないというのが祖父のポリシーだったようで、朝8時からの診療です。最終の受付時間は19時半です。なので、20時を過ぎても診療していることがあります。地域の皆さんは結構気を遣ってくれるのか、あまり遅くなることは少ないですが。また、ここは最寄りの玉ノ井駅からは徒歩5分ですし、近くのスーパーとホームセンターからは1分です。通勤通学の前後や買い物の行き帰りでも立ち寄れる場所にありますので気軽に来院していただきたいですね。
一部の検査や検診は予約なしでも可能と伺いました。
予防に力を入れているので、検査や検診のハードルをできるだけ低くして早期発見・早期治療につなげたいと考えています。そのため、当院では多くの検査を予約なしでできるようにしました。事前予約は患者さんにとっては面倒ですからね。胃がん検診の内視鏡検査とバリウム検査以外の健康診断は、予約なしで当日検査ができます。入社が決まると会社から健康診断の結果を出してくれと求められることもあると思いますが、そういった企業用の健康診断も予約なしで受けつけています。その他、睡眠時無呼吸症候群の検査、不整脈を調べるホルター心電図などの検査も当日受けつけ可能です。予防接種に関しては、インフルエンザと肺炎球菌に関しては予約なしで対応しています。ぜひ気軽にご利用ください。
先生が患者に対し、一番気にかけていることは何ですか?

超高齢社会の中で、健康寿命を少しでも延ばせるようお手伝いをしたいですね。総合病院に入院されて、急性期の治療はひとまず終わったけれども、このままでは寝たきりになってしまうかも、と言われた方も多いと思います。そうならないように、なんとかご自分で立ったり歩いたりできる時間を少しでも長く延ばせるようにお手伝いすることが、生活の質(QOL)を高めることにつながると思います。当院ではリハビリ施設もありますから、そのための健康指導もしっかり担っていきたいですし、先ほどお話しした生活習慣病や心疾患の再発予防の管理をきめ細かくすることで、寝たきりにならず楽しく余生を送ることができる患者さんが多いクリニックにしていきたいです。