小児がかかりやすい感染症
予防と発熱時の対処法
田中小児科医院
(豊田市/梅坪駅)
最終更新日:2023/09/29


- 保険診療
新型コロナウイルスのパンデミックは、感染症の認知度を高めた。手洗い消毒や感染経路の遮断などの対策方法が浸透したことは、拡大防止に大いに役立ったといえるだろう。初期には、子どもは新型コロナウイルスには感染しないなどの間違った情報が広がっていたが、結局、学校閉鎖にまで追い込まれるケースも。家族の健康を守るためには、適切な情報や知識を得ることが必要だ。新型コロナウイルス蔓延が落ち着いても、ヘルパンギーナなどの感染症は子どもの間で流行しているため、さまざまな感染症について知っておくべきだろう。「田中小児科医院」の田中健一院長は、日本小児科学会小児科専門医であり、小児の感染症についても数多くの治療経験を持つ。感染症の予防や発熱時の対応について田中院長に話を聞いた。
(取材日2023年7月19日)
目次
感染症をきっかけに髄膜炎や肺炎になる場合も。乳幼児の3日も続く熱には注意して経過を見る
- Q感染症とはどのようなものですか?
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A
▲丁寧に説明をしてくれる院長
小児に多い感染症は、インフルエンザ、麻しん、風しん、おたふく風邪、ノロウイルス胃腸炎、ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱、突発性発疹などのウイルス感染です。このウイルス感染はいわゆる風邪のことですが、その風邪がきっかけで肺炎や髄膜炎、脳炎などの合併症を起こす場合もあります。特に、免疫能の未熟な乳幼児は、そのような合併症に注意が必要です。感染経路は、唾液、尿、便、吐物。お子さんが熱を出した場合は、基本的に感染すると考えて、対策をしてください。ヘルパンギーナや手足口病のように、一度感染している大人は感染しにくいものや、インフルエンザや新型コロナウイルスのように何度でも感染するものもあります。
- Q感染症の予防と治療法について教えてください。
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A
▲日頃の体調管理にこまめに気をつけてほしい
予防接種を受け、睡眠や栄養をしっかり取って日頃から体調管理をすることが大切です。新型コロナウイルスの流行でも学んだように、こまめな手洗いや消毒も重要。家庭で体調が良くない家族がいたら、箸やタオルの共用を避け食事の場もなるべく分けて対策をしましょう。専用のお薬としては、現状インフルエンザなど数種類しかありません。それゆえ多くの風邪は、症状を緩和するためのお薬を服用して安静にするのが基本です。まれに、最初は風邪だと思っていても、川崎病などの重大な病気であることも。熱が出た後も経過が重要です。これは小児特有の病気なので、症例経験のある小児科専門の医師であれば迅速に判断してもらえるでしょう。
- Q発熱した場合、すぐに受診したほうが良いのでしょうか?
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A
▲年齢や症状によって対応は変わってくるそう
年齢や症状によります。3ヵ月未満で熱がある場合はすぐに受診してください。1歳未満で熱が続いている場合は、髄膜炎や肺炎などの心配もあるので、受診していただくと安心です。3歳以上で朝に熱があっても、お子さんが元気そうなら、様子を見てもいいと思います。発熱当日の検査で陽性反応が出なかったけれど、翌日の再検査で陽性反応が出るということもありますので、お子さんの状態を見ながら受診してください。私の印象では、発熱から5~6時間くらいたっていないと検査で反応が出ないことが多いです。不安であればすぐに受診していただいて、症状を緩和するためのお薬を処方してもらうと良いでしょう。
- Q発熱時、解熱剤はすぐに飲ませたほうがいいのですか?
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A
▲何でも気になることはすぐに相談してほしい
熱があってもお子さんが元気なら無理に飲ませなくて良いと思います。熱が上がっている状態がウイルスにとっては嫌な状態なので、多少熱があったほうが体の免疫反応が働いている状態といえます。その場合、解熱剤よりも氷枕のほうがマイルドに熱を下げるのに役立って良いと思います。頭や関節が痛いとかつらいという場合は、我慢させずに解熱剤を飲ませてあげましょう。体が発育途中のお子さんのほうが大人より肺炎になりやすいので、熱が3日も続いたり、咳がひどい時は、医師に経過を診てもらう必要があります。いきなり肺炎になるわけではなく、熱が下がらず咳が徐々にひどくなるというように段階的に肺炎に移行しますから注意してください。