大鹿 智 院長の独自取材記事
大鹿眼科
(津島市/津島駅)
最終更新日:2023/03/06
津島市ふれあいバス、東柳原町北停留所の近くにある「大鹿眼科」は、一般的な眼科診療から白内障などの日帰り手術までに対応する眼科医院である。同院の大鹿智(おおしか・さとる)院長は、大学病院などで眼科の専門的な診療・研究に携わった後、地元である愛知県津島市の地で開業し、以降20年以上、地域に根差した眼科診療を続けてきた。大鹿院長の人柄を慕い、開業時から通い続けている患者も少なくないという。また、患者だけでなく、院外の眼科の医師とも良好な関係を築いており、白内障の手術や神経ブロックなど、各領域に精通した医師たちが定期的に同院に来て診療を行っている。「患者さんの希望に応えることを第一に考えています」と語る大鹿院長に、同院の特色や診療への思いなどについて聞いた。
(取材日2019年12月21日)
地元津島市で、長年にわたり目の健康を守り続ける
最初に、こちらで開業された理由を教えてください。
勤務医をしていた40歳頃、本格的に開業を考え始めました。人気のあった名古屋市東部など、当時はいろいろな開業地を検討しました。一方で、津島市は私の生まれ育った故郷ですし、父と母が医院を開業していた町でもあります。また、開業を検討し始めた時点では、高齢になった祖母も津島市に住んでいました。私は、小さい頃祖母にかわいがってもらいましたし、両親の近くにいてあげたいという思いもあり、最終的に地元に戻る決断をしましたね。具体的な開業場所としては、実家の医院の跡地という選択肢もありましたが、競合する他の眼科医院との距離を考えて、父が所有していたこちらの土地を使わせてもらうことになりました。
どのような眼科診療を行っていますか。また、特徴的な機器などはございますか。
かかりつけの眼科医院として、視力検査や眼圧・眼底の検査といった一般的な眼科診療はもちろん、緑内障や黄斑変性、糖尿病性の網膜症などの診療も行っていますし、開業当初から手術室を設置し、白内障や眼瞼下垂などの日帰り手術にも対応しています。手術は比較的全身状態の良い方が対象で、重度の合併症や著しく体力の低下した方については、入院施設のある他の医療機関に紹介しています。機器としては、後眼部OCTに加えて前眼部OCTも導入しているのが当院の特徴といえるかもしれません。この機器は、角膜から水晶体までの前眼部について、非接触・非侵襲で画像検査を行うための機器で、特に急性緑内障発作のリスクを事前に把握し、早期発見・早期治療を行う上でとても有用です。
開業から20年以上たつとお聞きしていますが、現在の患者層はいかがですか。
地域としては当院周辺にお住まいの方が多いですが、一部遠方から通われている患者さんもいらっしゃいます。年齢としては、0歳から100歳代の方まで幅広い方が通われており、その中でもやはり、高齢の患者さんの割合が高いですね。そのため疾患としても白内障や緑内障など、高齢者に好発するものが中心になっています。この地域も高齢化が進んでいますし、開業当初から通われてる患者さんも当院とともに年を重ねてきましたので、ごく自然なことだと思います。ただし高齢者といっても、特に女性の方はお元気な方も多いです。中には100歳を超えてから、「そろそろ白内障の手術をしてもらおうと思って来ました」という方もいらっしゃり、そのバイタリティーには驚かされますね。
患者の希望に応えることを何より大切に
ホームページを拝見すると、貴院の診療には多くのドクターが関わっておられるようですが。
そうですね。常勤医師は私だけですが、非常勤医師として、たくさんの先生に助けていただいています。人数としては外来を担当する先生が最も多く、その他、白内障などの手術を行う先生も2人いますし、月に2回ほど神経ブロックを行うために来ていただいている先生もいます。これだけの先生に協力いただけているのは、私がつてをたどってお願いしてきた結果でもありますが、当院が中京グループに属している影響も大きいと思います。中京グループは、名古屋市南区にあるJCHO中京病院を中心として眼科医療の質向上を目的に設立されたグループです。私は同グループが立ち上がる前から、その中心的な役割を担う先生に懇意にしていただいており、今でもその先生を含めて、同グループと関係のある医師に何人か来ていただいています。
他の医療機関や医師と協力することによって、どういったメリットがありますか。
1つは、円滑な連携ができることです。当院に来られる患者さんの中には、全身状態が悪く入院治療が必要な方や、角膜移植など専門的な医療機関での治療が必要な方がいらっしゃいます。そういった場合にも、適切な医療機関にスムーズにつなぐことができるのはメリットだと思います。2つ目は、当院の医療水準を保つのに役立つことです。白内障手術や神経ブロックなど、各診療をその分野に精通した医師が担当することで、専門性の高い医療を提供することができます。また、私自身も、日常的にそういった先生と関わることで知識をアップデートできますし、外来診療や医院全体のマネジメントに集中できる点でもメリットは大きいと思います。
診療を行う上で、心がけていることはありますか。
私が一番大切にしていることは「患者さんの希望に応える」ことです。患者さんの中には、先ほどのように、100歳を過ぎてから白内障の手術を受けたいという方もいますし、反対に、大きな問題がなければできるだけ手術はしたくないという方もいらっしゃいます。私は、そういった患者さんの希望をしっかりと受け止め、可能な限り患者さんの望むようにしたいと思っています。そのために、正確に状態を確認することと、今後の見立てやリスクなどについてしっかりとお話をすることを心がけています。また、患者さんの中には、あまり自分から希望をおっしゃらない方もいらっしゃいますので、スタッフにも、患者さんと接する際には本人の希望を把握するよう促していますね。
これからも長く地域を支え続けたい
先生は、なぜ眼科を専門に選ばれたのでしょうか。
当院の診療方針にも直結するのですが、眼科は「患者さんの希望に応える医療」が実践しやすい診療科だと思ったからです。実は私は、大学卒業後、一度放射線科に進んでいます。そこで末期がんの患者さんと多く関わったのですが、その中には、意識がもうろうとして自分の希望が言えない方もいらっしゃいましたし、言えたとしても医師としてそれをかなえることが難しい場合も多々ありました。私は次第に「もっとはっきり要求に応える医療がしたい」と思うようになり、意識のしっかりした患者さんが多く、「見える、見えない」など希望が実現したかどうか明確に答えが出る眼科に転科したという経緯です。
眼科の医師になられてからは、どういったキャリアを積んでこられましたか。
まずは、名古屋市立大学医学部にある眼科の医局に所属し、助手の立場で臨床と研究に従事しました。臨床面では、一般的な眼科診療だけでなく、大学病院ならではの難しい症例や、手術なども行っていましたし、研究面では、主に視神経乳頭付近の先天異常についての研究を行っていました。その後医局人事で、当時愛知県東海市にあった東海産業医療団中央病院に赴任し、開業の直前には、知り合いに頼まれてコンタクトレンズ処方を中心としたクリニックに勤務していましたね。
少し目線を変えまして、先生のリフレッシュ法について教えてください。
正直これといったものはありません。仕事のことを忘れないように、長期の休みはとらないようにしていますし、休みの日もリフレッシュのために特別なことはしていないです。ただ、こうした日々を送れるのは、私が職場でストレスを感じることが少ないからかもしれません。そのこつは、あまり過剰な期待をしないことですね。患者さんやスタッフに対して過度な要求をすると、相手も疲弊し不満を抱きますし、私自身も疲れてしまいます。ある程度それぞれの特性やペースに合わせることが長続きの秘訣だと思います。
最後に今後のビジョンをお話しください。
開業から24年がたちましたが、今でも患者さんが希望をかなえ喜ぶ姿を見ると、「良かったな」と心から思います。当院を頼ってくださる患者さんもまだたくさんいらっしゃいますので、これからも希望に応える医院であり続けたいです。そのためには、私も可能な限り診療を続けていくつもりですが、将来を見据えて後継者などについても考え、少しでも長く地域を支えられるようにしていきたいですね。