治療のポイントはかゆみのコントロール
新たに注射薬も保険適用に
おっかわこどもとアレルギーのクリニック
(半田市/植大駅)
最終更新日:2024/11/07
- 保険診療
アトピー性皮膚炎で悩む患者は多く、特に小児の場合はかゆみを我慢するのが難しいため、かくことで肌が荒れ、荒れるとまたかゆくなるという悪循環を繰り返しがちだ。かゆみに気を取られるせいで勉強に集中できない、夜寝られないなど日々の生活にも支障を来すことがあるという。「おっかわこどもとアレルギーのクリニック」の磯浦東(いそうら・あずま)院長は「かゆいのにかいちゃ駄目といってもそれは難しいです。薬を上手に使ってかゆみのコントロールを図ることが何より大事」と話す。最近、従来の飲み薬と外用薬に加え、注射による治療薬が保険適用になり、今までの治療法では効果が得にくかった患者に対し、新たな治療法が加わった。今回はアトピー性皮膚炎の新しい治療薬や正しい薬の使い方など、同院での治療の取り組みについて話を聞いた。
(取材日2024年6月20日)
目次
かゆい・かく・肌が荒れるの悪循環を断ち切ろう。薬の塗り方など生活上のアドバイスも含めてサポート
- Qアトピー性皮膚炎の原因や症状について教えてください。
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A
もともと肌の構成要素でバリア機能が弱い人は、皮膚をかくとそこから抗原といってアレルギー物質が侵入しかゆみが出てしまいます。かくことで皮膚をかき壊してしまい、そうするとまたかゆみ物質が発生し更にかいてしまうという悪循環に陥り、肌の状態が継続的に悪くなってしまっている状態をアトピー性皮膚炎といいます。主な原因はダニで、動物の毛なども要因になったりします。赤ちゃんは顔面、幼児期は肘や膝の関節に症状が出やすいといわれています。子どもの病気のように思われているかもしれませんが、大人になってから発症する場合もあります。肌が乾燥するとかゆみがひどくなりやすいので、薬を塗るだけでなく保湿も大切です。
- Qアトピー性皮膚炎の診断は検査によって行うのですか?
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A
赤ちゃんの肌が荒れると「アトピー性皮膚炎では」と心配される親御さんが多いと思いますが、赤ちゃんは乳児湿疹になりやすく、アトピー性皮膚炎との明確な区別はつきにくいです。TARCといってアトピー性皮膚炎の炎症程度を反映する検査があり、それは一つの指標になりますが、その結果だけでは判断はできません。検査結果は参考にはしますが、基本的には医師が診察をし症状を診て判断しています。アトピー性皮膚炎には診療のガイドラインがあるので、その項目を満たしているかどうかを一つずつ確かめながら診断を行います。また、治療によって現在の状態が良くなっているかどうかを判断する材料として、TARCを使うこともあります。
- Q治療方法について教えてください。
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A
アトピー性皮膚炎の治療で一番重要なことは、かゆみをコントロールすることです。基本の治療は、炎症を抑えるための抗ヒスタミン薬の服用とステロイド外用薬でかゆみのコントロールを図ります。最近、それに加え今までの薬とは違う作用機序でかゆみを抑えることを目的とした注射薬が保険適用になりました。飲み薬や外用薬で効果が得られない患者さんの治療ができるようになりました。薬は2種類あり適用月齢が違いますが、当院では注射の痛みや怖さを考慮し、どちらも6歳以上のお子さんに適用しています。注射を打つ間隔は体重により異なり、2週間か4週間ごとに継続して行います。自己注射もできますが、当院では来院してもらい行っています。
- Qこちらならではの治療の工夫や取り組みについて教えてください。
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A
「薬を使っても良くならない」と言う方がいますが、よくお話を聞くと外用薬の塗り方が適切ではないことが多いようです。しっかり塗って改善に向かえば減量することもできるので、処方された量をしっかり塗ってください。また当院ではプロアクティブ療法と言って、状態が悪い時だけ薬を塗るのではなく、肘や膝のように悪くなりやすい箇所は、きれいな状態になっても薬をやめずに、毎日塗っていたのを2日おきや3日おきのように間隔を少しずつ開けながら薬を続けていくようにしています。そうすることでかゆみが出るきっかけを作らず肌の良い状態を長く保ち続けることが期待できます。当院では、薬の上手な塗り方など生活面からもサポートします。
- Qアトピー性皮膚炎は、他のアレルギー疾患にも影響がありますか?
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A
体質としてアレルギーを起こしやすい人は、他のアレルギーも合併しやすいことがわかっています。アレルギーは免疫が誤作動を起こすことで発症するので、気管支で起これば気管支喘息、皮膚で起こればアトピー性皮膚炎、目や鼻なら花粉症になります。食物アレルギーの原因の一つに、経皮感作といって皮膚からアレルゲンが侵入する場合があるといわれており、アトピー性皮膚炎で肌が荒れていると、バリアが弱くなった肌から食物などが入り、食物アレルギーを起こすのではないかという研究がなされています。ですからアトピー性皮膚炎を治療し肌を良い状態に保つことは、食物アレルギーの予防にもつながるだろうと思われます。