磯浦 東 院長の独自取材記事
おっかわこどもとアレルギーのクリニック
(半田市/植大駅)
最終更新日:2022/10/31
かわらしい犬のキャラクターがいて、黄緑やオレンジ、黄色に彩られた外観の「おっかわこどもとアレルギーのクリニック」。中に入ると、同じ色づかいのソファに青空が描かれた高い天井、壁にはからくり時計など、楽しい雰囲気でいっぱいだ。紳士的に迎えてくれたのは、磯浦東(いそうら・あずま)院長。「子どもは大きな未来がある存在。その未来を守る手助けをしたい」と、地域医療と専門のアレルギー治療を柱に日々力を尽くしている。自身も1児の父であり、医師として親として、子どもとその親へあたたかい心配りを忘れない穏やかな先生だ。
(取材日2017年1月18日)
前院長の姿勢を引き継ぎ、地元愛あふれる患者と交流
まず、開業の経緯について教えてください。
名古屋市立大学に進学し、卒業後は名古屋市内の総合病院の小児科に勤務しました。生活に密着しながらアレルギーの専門的な治療を行いたいとの思いが強くなり、開業を考えるようになりました。ここは以前「おっかわこどもクリニック」という名でしたが、院長がご病気で急逝され、1年半ほど休診の状態でした。その先生が名古屋市立大学小児科医局の大先輩というご縁もあり、2016年、私が引き継ぐ形で新たに開院させていただいたわけです。地域の小児医療に尽くされた前院長の姿勢を受け継ぎ「こどもクリニック」という名を残したかったこと、また私の専門であるアレルギーの病気の治療も合わせて行っていきたいと考えたことから、現在の名前に決めました。何人もの患者さんから「小児科が再開してくれてよかった」と言っていただきましたね。
ここはどんな地域でしょうか、またどんな患者が来られますか?
患者さんとお話をしていると、地元に愛着が強い方が多いと感じます。半田市は、勇壮な山車を引く伝統的な祭りがとてもさかんで、それがちゃんと若い世代に受け継がれているんです。私も今は半田市民で、高齢の方も若い方も住むバランスの良いところだなあと思います。患者さんは主に赤ちゃんから中学生まで、アトピー性皮膚炎や喘息の症状の方が多いですね。小さいお子さんの場合は特に、保護者の方が上手に管理することが重要で、いかに治療に前向きに、長期的に取り組んでいただくかが難しいです。それだけに治療の変化を感じていただければ、非常に喜んでいただけるようになると思いますのでやりがいがありますね。
アトピー性皮膚炎など、どのように治療が進むのでしょうか?
アトピー性皮膚炎は、かゆみが悪化要因になりますので、かゆみを抑えることがポイントです。乾燥しないようにしっかり保湿をしたり、ヒスタミンの薬を内服したり、塗り薬を使用していただきます。ステロイドは副作用がないわけではありませんが、使用についてはガイドラインで定まっており、必要なときには塗るほうがいいですね。ぜんそくは軽症の場合は判断が難しいので、保護者の方の話をしっかり聞くようにしています。ひと月に何回症状が出るのかによって、それに合わせた治療をしていきます。飲み薬のほか自宅で吸入する薬もあり、小さなお子さんだと保護者の方に補助器具を使っていただくので、治療の効果を上げるため、その使い方もしっかりお教えしています。
アレルギーの病気は、良い状態を保つことが目標
こちらでは栄養士による栄養指導も行われているのですね。
はい、予約制で大体30分ほどの栄養指導を行っています。食物アレルギーだと、その食べ物を除去する場合もあるので、代替の食べ物を紹介して実際に試食していただいたり、加工品ならどのぐらい食べられるのかを指導したりしています。食物アレルギーは、今はアレルギー症状が出ない範囲で最小限食べたほうが治る可能性は高いと言われており、当院では、どのぐらいなら食べても大丈夫かを調べる食物経口負荷試験を行っています。例えば、卵を2グラム食べていただき、その後2時間ほど個室でDVDを見たり、おもちゃで遊んでもらったりしながら様子を見るわけです。
子どもの患者に対して気をつけていることはありますか?
子どもにとって、病院は注射もするし、怖いイメージですよね。そのためカジュアルな服装で診察する小児科の先生も多いと思いますが、私は、制服のようにネクタイを締めて身だしなみを整えたほうが自分の気も引き締まりますし、仕事をきちんとまっとうする、つまり真剣に患者さんの治療をする心構えが患者さんにも伝わりやすいかなと思っていて、こういうスタイルなんです。ただ、ネクタイは人気キャラクターがついたものを幾つか持っていて、お子さんとの会話のタネにもなっています。あと、人気キャラクターの物まねをしたりもするのですが、子どもたちの評価は分かれます(笑)。スタッフもみんな子ども好きで、普段から子どもと目線を合わせて話をするよう心がけてくれていますね。
保護者の方に対しては、いかがでしょうか?
例えば発熱などは、熱が下がれば治る、とゴールがわかりやすいのですが、アレルギーの病気だと、小児喘息でも大人になるまでに多くの方が治るものの、それがいつなのかはわからないわけです。親御さんにしてみれば「いつまで薬を飲み続けるのか」と不安な思いもありますよね。アレルギーの疾患は、完治をめざす治療はまだ発展途上の段階で、症状を抑え、健康人と変わらない日常生活を送ることが目標になります。自然に治る場合もあるので、それを待ちながら良い状態を保つことが大切で、そのことを丁寧に説明するようにしています。ですから、お母さんの気持ちに寄り添い、良くなってきたときにはお母さんにも「頑張りましたね」と褒めて差し上げるようにしていますし、ときには同じ親として子育ての相談に乗ったりもしています。
「子どもの未来を守りたい」を合言葉に、成長を手助け
先生が、医師になろうかと思ったのはなぜですか?
人の命を救う仕事が素晴らしいと思ったからです。私が小学生の頃に母が病気をし、お医者さんや看護師さんに随分お世話になりました。おかげさまで母は今も存命です。もともと子ども好きだったことと、学生時代に小児医療についての本を読んで感銘を受けたことをきっかけに小児科の医師をめざしました。さらにアレルギーを専門にしたのは、子どもにアレルギーの病気が多く、これを専門に勉強すれば、よりたくさんの人に貢献できるのではと考えたからです。またアレルギー治療は、どうしても患者さんとのお付き合いが長くなるので、気の長い自分の性格に合っていると思いましたね。
子育てをする読者へ何かメッセージはありますか?
私にも小さい子どもがいるのですが、自分に子どもができてから気づいたことはたくさんあります。実は、薬を飲ませるのがこんなに難しいとは思っていませんでした(笑)。子ども相手だと、服薬にしても吸引にしても、工夫が必要なのだと改めて痛感しています。お子さんが薬を嫌がるときは、ゼリーやアイスクリームに混ぜたりしてあげてください。子どもはとてもかわいいものですが、夜泣きをしたり言うことを聞かなかったり、親がイライラやストレスを感じることも当然あると思います。本当に実感なのですが、子どもは思うようにいかないのが当たり前。そういうものなんだと大きな心で、気長に接することが大事かなと、医師としても親としても思っています。
先生の理念やこれからの展望をお聞かせください。
子どもは、未来や可能性を持っています。もっと大きな目で見ると、これからの日本、そして世界を背負っていく存在であり、期待も膨らみます。しかし大学病院に勤めていた頃は、小児がんで亡くなる子どもたちを何人も見てきました。子どもはみんな大きくなって当然と思いがちだけれども、そうではない場合もあることを思い知らされ、愕然としたものです。以来、力を尽くして子どもの病気を治療し、未来につなげたいと強く思うようになりました。当院のキャッチフレーズは「子どもたちの未来を守る」です。この合言葉のもと、前院長が行っていらした地域における小児医療、そして私の専門であるアレルギー治療、この2つを柱に、子どもたちが成長していくお手伝いをしていきたいと思っています。