小石 麻子 理事長の独自取材記事
小石マタニティクリニック
(豊橋市/豊橋駅)
最終更新日:2024/12/02

女性一人ひとりが身体的にも社会的にも健やかな生活を送れるよう、医療を通して女性を支える。こうした信念のもと「小石マタニティクリニック」は、長年多くの女性に寄り添ってきた。出産時は心身への負担を軽減できるよう、音楽を聴きながら眠りに近い状態へと促す「ソフロロジー式和痛分娩法」を採用しているのも特徴だ。産前から出産、さらに出産後の孤独から母親たちを守るため、オンラインを活用したケアにも注力する。理事長を務める小石麻子先生は「女性は思春期から妊娠、出産、さらに更年期など大きなホルモンの変化に人生を左右されます。女性が幸せに、そして健康的に生活できるよう医療面からサポートすることがわれわれの役割」と優しい笑みを浮かべる。女性の体はもちろん心の在り方を大切に考えている同院の体制について話を聞いた。
(取材日2023年12月19日)
世代を超えて頼ってもらえるクリニックとして
ホテルのような雰囲気で、とても落ち着く空間です。

ありがとうございます。産婦人科に限らず、患者さんがクリニックへ足を運ぶときは緊張しているものです。特に産婦人科は内診もあり、より緊張されると思いますので、リラックスしていただき、スムーズに診療へ進めるようにすることが大切と考え、このような造りとなりました。診察までのお時間もゆったり過ごせるよう待合室でハンドマッサージをしたり、4階レストランスペースをご利用いただいたりしています。当院は1964年に私の祖父が前身となる「小石産婦人科」を開院し、移転を経て現在の「小石マタニティクリニック」へと成長してきました。祖父の代から半世紀以上、地域の皆さんの診療にあたっています。
世代を超えて来院される方もいらっしゃるとか。
当院で生まれた赤ちゃんが成長し、来院されることも多いです。開院当初から当院に通院されている方の中には、私や私の母である現院長の幼少期をご存じの方もいらっしゃいます。何世代にもわたって診療していることもあり、地域の皆さんにも親しみを持っていただけているように感じています。おかげさまで産科も婦人科も多くの患者さんに来院いただいて、妊娠・出産を機に来院されていた方が、そのまま継続して婦人科をご利用してくださっていることも多いですね。
先生が産婦人科の医師を志されたきっかけとはどんなことですか?

祖父も母も産婦人科の医師でしたから、子どもの頃から医師になるものだと思っていました。医学部でいろいろな科を勉強していく中で産婦人科以外に興味を持つこともありましたが、最終的に産婦人科を選んだのは、内科と外科、双方の観点からアプローチできる点に、医師として大きな魅力を感じたから。加えて、やはり女性の一生に寄り添い支えることができるという点も決め手の一つとなりました。家族の背中を見て育ち、産婦人科の医師が体力的にも精神的にもいかに厳しく、大変な仕事かということは身をもって感じていましたが、大きな覚悟を持って産婦人科を選びました。大学卒業後は国立国際医療センター、豊橋市民病院などで経験を積み当院へ戻りました。
親子ともにコミュニケーションを重視
診療の基盤となっているお考えをお聞かせください。

人の成長は、出生後からスタートするわけではなく、妊娠した瞬間から始まります。受精卵という1つの細胞が細胞分裂を繰り返し、やがて胎児となり赤ちゃんとして生まれてくる。おなかの中で過ごす、とても神秘的でかけがえのない時間をより良い環境で過ごすことが、赤ちゃんの人生の土台となる。そのため定期健診でも、単に異常がないかを確認するだけではなく、お母さんやおなかの中の赤ちゃんとコミュニケーションを図り、心身ともに健やかであるかどうかを診ることが大切なのです。そして人が育てば地域が育ち、地域が育てば、社会が育っていきます。私たちは診療を通して社会を育成する一端を担っている。その考えを忘れることなく診療にあたっています。
患者さんと接する上で心がけていることは何ですか?
患者さんの抱えるストレスを解きほぐし、良好な信頼関係を築くことです。特に妊娠中の場合、体や心の変化が大きいため、胎児の成長に喜びを感じる一方でストレスを抱え込みがちです。そのためストレスを解きほぐし、少なくしていくことが大切です。妊娠期間中の過ごし方は赤ちゃんの一生にも大きく影響します。だからこそお母さんが健やかな生活を送れるよう、手助けするためにチーム一丸となって行動し、患者さんと接しています。お悩みやご家族のことなども丁寧にお聞きしていくと、皆さんいろいろ話してくださいます。スタッフが女性ばかりなのも話しやすく感じていただけるのではないでしょうか。オンライン診療も行っており、遠方の方や薬のことだけ聞きたい方などに利用していただいています。
こちらで行われているソフロロジー式和痛分娩法とは?

分娩によるストレスは、お母さんだけでなく赤ちゃんにも大きく影響します。そのストレスの軽減をめざすのがソフロロジー式和痛分娩法です。お産に対して痛みやつらさといったイメージを持つのではなく、陣痛は赤ちゃんに会える喜びのためのものとイメージし、落ち着いて穏やかに出産に臨んでもらうための方法といえます。妊娠初期の教室で、赤ちゃんに話しかけたりおなかを触ったりしてたくさんコミュニケーションをとってくださいとお話しします。そして音楽を聴いてリラックスし、呼吸法を練習したりエクササイズをしたりしていきます。分娩時も音楽を聴きながらリラックスしている状態で、いきまず自然に赤ちゃんが生まれてくることが期待されるので、お母さん、赤ちゃんともに心身のストレスの軽減が望め、幸せな感情に満たされる方法だと思います。
産前産後だけでなく女性の人生に寄り添う
産後のケアにも力を入れられているそうですね。

産前と同じように助産師によるケアが充実しています。外来で、乳房ケアや母乳相談、育児相談に対応するほかオンライン訪問も行っています。産後はホルモンのバランスが大きく変化するため、産後3~4ヵ月頃は人によっては抑うつ状態になりやすく、医師が診察して精神科の医師にご紹介することも。お母さん方が孤独を感じないように、医師、助産師はじめ看護師、栄養士、理学療法士、その他スタッフ皆で産前から信頼関係を築き、産後まで寄り添うことはとても大切だと考えています。また当院ではショートステイとデイケアにも対応しており、2024年8月より産後ケアセンターとして広く地域の方々を受け入れる準備が整いました。さらに隣接する小児科クリニックとは密に連携しており、出生時と退院時には診察をしています。お子さんが生まれた時から小児科の医師と連携していることは、子育てをしていく上で安心していただけるのではないでしょうか。
こちらではさまざまなイベントが行われていると伺いました。
音楽やバイオリン演奏は私の趣味でもあり、地元の演奏家の方々にもご協力いただいてコンサートなどを行っています。妊婦さんを対象とした「胎教教室」では、当院で生まれたお子さんたちが参加してくれることもありますよ。子どもたちの歌声や音色は純粋で一生懸命で本当に心に響きます。赤ちゃんたちがこんなに素晴らしく成長し、人に感動を与える存在になれることに私も涙してしまうほどです。参加している妊婦さんもおなかに優しく手を触れながら音楽に聴き入り、涙を流される方もいます。「おなかの赤ちゃんもよく動き回っていました」という声を頂きますね。赤ちゃんの将来像を目の当たりにすることで、妊婦さんには、より赤ちゃんを慈しむ気持ちが育まれていくように感じます。
今後の展望のお話や読者へのメッセージをお願いします。

これからも1人の医師として、どんな状況においても最善を尽くせる存在であり続けたいです。女性の生き方は以前と比べ多様化していますが、誰もが自由に充実した生活を送ることはまだまだ容易ではないと思っています。女性は人生の中で、思春期、妊娠期、産後、更年期と、ホルモンにより心と体に大きな変化が起こりますが、そうしたことが社会にあまり知られていないこともつらさにつながることがあります。妊娠・出産において時期やその後の育児に悩むこともあれば、女性としての生き方そのものに悩むこともあるでしょう。たくさんの悩みを少しでも減らすために、まずは健診で自分の体を知っていただきたいです。そして妊娠を検討していて、産み方や時期で悩んでいる方や健康について不安のある方はぜひ相談してほしいです。きっとお役に立てると思います。