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朽名 文子 院長の独自取材記事

くつなこどもクリニック

(名古屋市天白区/原駅)

最終更新日:2021/10/12

朽名文子院長 くつなこどもクリニック main

名古屋市天白区、昔ながらの落ち着いた住宅街の一角にある「くつなこどもクリニック」は、1983年開院という歴史のある小児科のクリニックだ。院長の朽名文子(くつなふみこ)先生は女性医師が少なかった時代、女性が自立できる仕事を求めて医師を志したという。出産し子育てをしながら、一宮市立市民病院、海南病院、相生山病院での勤務医を経て同院を開院。漢方にも精通し、漢方的な視点から触診を重要視した診療も行う。朗らかで優しい雰囲気を持ち、「日常的に気になっていることなど話を聞かせてほしい」と語る朽名院長は、子どもはもちろん親にとっても安心できる場所を提供してくれるだろう。そんな朽名院長に、過去の経験から今の診察中に思うことまで聞いた。

(取材日2019年10月2日)

触診を重視した診療で子どもの体質まで把握する

クリニックの歴史と院長の経歴を教えてください。

朽名文子院長 くつなこどもクリニック1

隣接する「平針原クリニック」ができてから3年後の1983年に「くつなこどもクリニック」を開院しました。娘が小学1年生になったタイミングでの開院で、とても大変だったことを覚えています。開院する前は一宮市立市民病院に勤務し、この時1人目を産み、1年産休を取りました。産休が明けて海南病院に勤務し、2人目を出産。院内に幼児保育室があったおかげで、子どもを預けて働けましたが、子どもと過ごす時間が少なくて寂しい想いをさせたかもしれないなと思います。その後、相生山病院に勤め始め、そこでご年配の方を診ることになったんです。「小児科の医師にとってこんな勉強になるチャンスはない」と思いました。今でもこの時のことは大きな経験になったと思います。

高齢者の診療で大きな経験になったというのはどのような点ですか?

私が漢方薬を始めたのが相生山病院に勤務していた時なのですが、どんな塗り薬を使っても改善しない皮膚疾患のご年配の患者さんに、漢方薬の処方をしたことがあります。そのことが漢方に興味を持つ一番のきっかけになり、自分のクリニックを開院した後も、漢方の勉強を続けました。西洋薬には解熱剤などの体温を下げる目的で作られているものはありますが、体を温めるという目的になると漢方しかありません。漢方を勉強することは、医師としての自分の武器を増やすことにもなったと思っています。

漢方の知識は子どもの診療にも生かしていらっしゃるのでしょうか?

朽名文子院長 くつなこどもクリニック2

大いに生かしています。私は必ず耳を診て、口の中を診て、胸の音を聞いて最後におなかを触診します。おなかを触診するのは、体質などまでおなかを触るとわかるという漢方的な視点からです。おなかを触って「この子はよく食べるけど体重が増えないでしょ」とお母さんに聞くと、「そのとおりです」と返事をいただくこともあります。「この子便秘でしょ」と聞いて「なんでわかるんですか?」とおっしゃったお母さんには、お子さんのおなかを触らせて、おなかの上からわかるたまったうんちを触らせることもあります。もともと全身を診ることを大切にしていましたが、漢方を扱うようになってより一層全身の触診を重視するようになりました。

親との対話を大事にして、子育て環境も気遣う

漢方薬や薬を飲むのが苦手なお子さんも多いのではないでしょうか?

朽名文子院長 くつなこどもクリニック3

漢方薬は苦くて、子どもには不向きと考えている方もいますが、私の患者さんの中には漢方薬しか飲まないという子もいます。できればお子さんに飲ませる前に、親御さんに味見をしてみてほしいんです。その時のお母さんの顔をお子さんは見ていますよ。味見をしてみると意外とまずくないのがわかります。どうしても無理な時もあります。その時はご相談ください。また、当院はかなり早い段階で「院外処方」と「お薬手帳」を取り入れました。他のクリニックにかかるときは「絶対お薬手帳を見せてください」と伝えています。お薬手帳を見ると、その医師がどんな治療をしたのか、どんな薬を処方したのかがわかります。そのためにも「お薬手帳」の記録はとても大事です。

その他、お子さんや親御さんに対して接する際の心がけを教えてください。

お子さんに対しては、子どもだからと軽く考えずにきちんと気を使って接しています。例えば、おしりの視診などは、診察室の仕切りになるカーテンを閉めて診察します。言葉も幼児語ではあまり話しかけず、子ども扱いはしません。普通のしゃべり方のほうがちゃんと返事が返ってきます。親御さんには、どういう考えを持っているか、日常的に気になること、子育ての環境など、できるだけ話してもらうようにし、聞くことを一番大事にしています。話しているうちに困っていることなどもぽろっと出てくるんです。「この子のことじゃないけどいいですか?」とご兄弟の話をなさる方もいます。忙しい時は難しい場合もありますが、できるだけじっくりお話を聞くように心がけています。また、私は「お母さん」「お父さん」とは呼ばず、ご両親のお名前でお呼びしています。これは昔から意識していることですね。

長年この地域で小児科医をされている中で、変化したことや気になることはありますか?

朽名文子院長 くつなこどもクリニック4

最近、落ち着かない子が増えています。発達障害の疑いのある人は、専門のクリニックには専門のスタッフもいますし、生活のベースをどういうふうにしていけばいいのか、専門家の詳しい指導を得られます。「学校に行けなかった子が、本当は発達障害だった」という話もよく聞きます。専門家の指導があれば、将来的にも本人が社会で暮らしやすい大人になっていけると信じています。気になられることがあれば気軽に相談していただけるといいですね。病気に来院の際、症状や心配事をメモしておいでください。

まずは子育てする親にリフレッシュの時間を

クリニック自体のこだわりもお聞きしたいのですが、とても明るい内装ですよね。

朽名文子院長 くつなこどもクリニック5

ありがとうございます。私は植物を見に行くことが旅行の目的になるくらい、草木が好きなので、草木模様の壁紙を選びました。スペースに制約があるので、間取りを工夫することはできなかったのですが、感染しやすい病気を診療することもあるため、隔離するスペースを設けました。インフルエンザの検査は、診察室の後ろにある隔離室で空気清浄機を稼働させて行っています。陽性の場合は隔離します。

先生が医師になろうと思ったきっかけは何でしたか?

私は小学生時代から男勝りの活発な性格で、高校生の時に、女性でも自立できる仕事に就きたいと考えるようになりました。高校の先生か医師かのどちらかになろうと思っていたのですが、医師のほうが自律度が高いだろうという理由から医学部をめざしました。私は戦後生まれで、その時代は女医さんは少なく、会ったこともありませんでした。周りに医学部に行った人もいませんでしたが、私が医師になったことを祖父が一番喜んだそうです。本当は私の父を医師にしたかったみたいで。あとで聞いて、医師をめざして良かったなと思いました。

働きながら子育てした親として、小児科の医師として、地域の親御さんたちに伝えたいことはありますか?

朽名文子院長 くつなこどもクリニック6

子どもと一緒に生活を楽しんでほしいです。私は自分が子育てする時期に働き過ぎて、後悔することも少なからずありました。また、今は保育園もたくさんできたので、仕事の時だけではなく「自分の時間をつくるために預ける」という選択肢もあっていいのではないかと思います。朝からお弁当を作って、自分も仕事に行って……と親御さんの心の余裕がなくなると子どもにもあたってしまいがち。ゆとりを持てる時間が週1回でもあると子育ての気分転換になります。休むということに対して周りの目もあるかもしれませんが、気にせず自分のリフレッシュの時間を取ってください。子どものためにもパートナーのためにも、まずはご自分を大事にしてくださいね。

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