下郷 優 院長の独自取材記事
第2しもざとクリニック
(名古屋市緑区/左京山駅)
最終更新日:2026/03/30
鳴海駅から車で約10分、緑区の住宅街に「第2しもざとクリニック」はある。白いタイルの外壁が印象的な建物の1階に診察室、2階に血液透析用の部屋を構え、1992年の開業以来、腎臓病の初期の治療から血液透析まで一貫してサポートできることを強みとしてきた。2025年に父から継承した下郷優院長は、血液透析の専門性が高いことで知られる埼玉医科大学総合医療センターなどで研鑽を積んだ腎臓内科のエキスパートだ。心臓病を抱える患者への繊細な血液透析の条件の設定にも精通する。「患者さんの日常生活の質を落とさないことが一番の目標」と穏やかに語り、図やグラフを用いた丁寧な説明で病気への理解を促している。約20人のスタッフとチーム医療を実践する同院について話を聞いた。
(取材日2026年2月3日)
腎臓病の初期から血液透析まで、トータルにサポート
まずは、こちらのクリニックの特徴を教えてください。

当院の一番の特徴は、腎臓病の初期から血液透析まで一貫して診られるという点です。ちょっとした腎機能障害から血液透析が必要な段階まで、すべてここで対応できるよう体制を整えています。外来診療を行っている血液透析クリニックは実はそれほど多くありませんが、30年前に当院に初めて訪れ、現在まで通い続けている患者さんもいます。また、高血圧や糖尿病といった生活習慣病も、行き着く先は腎臓病ですから、その段階から腎臓を意識した治療ができるのは大きな強みです。腎臓内科を専門とする医師は全国的にも少なく、希少な存在といえます。緑区や南区、天白区あたりからお越しになる方が多く、10代から90代まで幅広い年齢層の患者さんを診ています。
お父さまから継承されたと伺いました。医師を志されたきっかけを教えてください。
父の影響が一番大きかったと思います。子どもの頃、クリニックの2階を見学したり、手術のことを教わったりしていて、そうした記憶がいつも頭の片隅にありました。一直線に医師をめざしていたわけではないのですが、私は一人っ子でしたので、継がなければここがなくなってしまうという思いもありました。父が埼玉医科大学の出身で、こちらが血液透析に強いことは知っていましたから、私も同じ道を選びました。血液透析クリニックの院長が必ずしも腎臓内科を専門とする医師とは限らないのですが、「腎臓内科の専門家が運営する血液透析クリニック」というのが私のめざすところでした。そのため、もともと腎臓内科の医師になろうと決めていたところがありましたね。
埼玉医科大学総合医療センターなどの勤務先では、どのような経験を積まれたのでしょうか。

埼玉医科大学総合医療センターの腎臓内科は血液透析に高い専門性を有していることが全国的に知られており、血液透析の各分野にエキスパートがそろっていました。そのすべてをマスターしたとはとても言えませんが、恵まれた環境の中で、さまざまな技能を習得させてもらいました。その後、埼玉県立循環器・呼吸器病センターで約2年間勤務した経験も大きかったですね。埼玉中から心臓の悪い方が集まる病院でしたから、大学病院よりもさらに繊細な血液透析の条件でなければ命に関わる患者さんばかりでした。現在のクリニックでも、血液透析を受けている方の約半数は心臓に何らかの問題を抱えています。そこで培った経験が、一人ひとり異なる血液透析の条件をきめ細かく設定する今の診療に生きていると感じています。
生活の質を保つための血液透析と、理解を深める対話
血液透析治療で大切にされていることを教えてください。

患者さんの日常生活の質を落とさないことが一番の目標です。血液透析というのは、トイレに行く、お風呂に入る、歯を磨くと同じように日常生活の一部にならなければいけません。週3回、1回4時間という時間は決して短くありませんが、できるだけ負担にならないよう、血液を採るスピードを調整したり、良好な血液透析ができているか確認しながら条件を設定しています。血液透析の条件は本当に一人ひとりまったく違いますから、薬の調整も含めて個別に細かく設定することで、症状が気にならなくなるような、病気であることを忘れられるような、そんな治療をめざしています。
患者さんと接する際に、工夫されていることはありますか。
患者さんの理解度を上げることを大切にしています。一般的に言って、なぜ通院しているのかわからないまま来られている方は少なくないものです。そのため、そこで、まずは確認作業から始めるようにしています。そして、腎臓は体のどこにあるかすら意識されにくい臓器ですから、私は絵を描いたり、グラフや表を使って説明するようにしています。例えば、腎機能を示すeGFRという数値は生まれた時から20歳でピークを迎え、その後は加齢とともに緩やかに下がっていくもの。これは病気ではなく自然な変化なんです。こうしたことを視覚的に示すと、患者さんも納得しやすくなります。頭ごなしに話しても聞く気がなくなってしまいますから、話がすっと入っていくような対話を心がけています。
腎臓病について、読者に知っておいてほしいことはありますか。

腎臓病には実は初期症状がないということです。身体症状として現れるのは、腎機能がかなり低下してから。つまり、検査をしなければ気づけないまま進行し、気づいた時には血液透析一歩手前ということもあり得ます。だからこそ、会社の健診でも特定健診でも、まず受けていただくことが大切。塩分を控えめにする、カロリーを取りすぎない、高血圧や糖尿病にならないようにするといった基本的なことが予防につながります。梅干し1個で塩分は約2グラム、高血圧の方は1日6グラム未満が推奨されていますから、梅干し3個で1日分の塩分に達してしまうんです。こうした具体的なイメージを持っていただくことも大切だと思っています。
チーム医療で患者を支え、予防の啓発にも力を注ぐ
スタッフさんについてお聞かせいただけますか。

当院には約20人のスタッフがいます。看護師、看護助手、臨床工学技士、事務、そして送迎のドライバーさんですね。外来担当の看護師2人以外は、ほぼ全員で血液透析をサポートする体制を取っています。患者さんそれぞれにその日の担当ナースがつき、針を刺すなどの処置をしながらお話を伺います。患者さんから伺った要望や体調の変化といった情報は、毎日私のもとに集約される仕組みになっていて、どういったフォローが必要かを判断しています。こうした情報共有があることで、患者さんも自分の声がきちんと届いているという安心感を持っていただけるのではないでしょうか。スタッフ同士の雰囲気も和気あいあいとしており、チームで患者さんを支えています。
今後、力を入れていきたいことはありますか。
やはり、血液透析患者さんの生活の質を下げない環境づくりが第一です。このクリニックは開業から30年以上たち、徐々に改修が必要な部分も出てきていますので、少しずつ直しながら診療を続けていきたいと思っています。また、現在は紙カルテで運営していますが、電子カルテの整備も進めていく予定です。もう一つ検討しているのが、腎臓リハビリテーションの導入です。血液透析中の4時間をただ寝ているだけでなく、その時間を活用して運動をしてもらおうという考え方ですね。筋力を維持することで体調の改善も期待できます。こうした取り組みを通じて、腎臓病の始まりから終わりまでトータルでサポートする体制をより強固にしていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

まずは健診を受けていただきたいですね。企業健診でも、どこの医療機関で受けるのでも構いません。ご自身の体の状態を知ることが健康でいるための第一歩です。特に気をつけていただきたいのは20歳~40歳の方。20代、30代の食生活の乱れは数値には現れづらいのですが、そのままにしていると40歳以降の健診で数値として現れてきます。腎臓のためには、塩分を控えめにした食事、ウォーキングなどの有酸素運動、そして十分な水分摂取が大切です。喉が渇いたと感じた時点で、実はもう脱水が始まっています。1日につき体重1キロあたり約30ミリリットルの水分を目安に、こまめに取るようにしてください。気になることがあれば、お気軽にご相談いただければと思っております。

