近藤 慕子 院長の独自取材記事
えがおこどものクリニック
(名古屋市緑区/左京山駅)
最終更新日:2024/08/09

来院する患者とその家族が「笑顔」になれるクリニックでありたいという思いから名づけられた「えがおこどものクリニック」。緑区相原郷の静かな住宅地の一角に立ち、れんが調のタイルの貼られた外観と広々とした駐車場、そして家族をモチーフにしたかわいらしい看板が目印だ。優しい笑顔と話し方が印象的な近藤慕子(こんどう・もとこ)先生は、1992年に父が開業したクリニックを継承し、2024年から院長に就任。何か心配な症状があった時には「まずは『えがお』に相談すればいいね」と思われるクリニックにしたいという。日本専門医機構認定小児科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医である近藤院長に、具体的な診療内容や保護者として気をつけるべき点、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2024年6月26日)
患者に寄り添った診療を徹底
まずはクリニックと先生ご自身について、簡単にお聞かせください。

幼い頃からこの辺りに住んでいて、高校生の時に父がここで内科・循環器内科を開業しました。医師としての父を間近で感じ、医師になろうと決めました。小児科を選んだ理由は、単純に子どもが大好きだからです。学生時代、いろいろな診療科で実習をしましたが、ブレることはなく小児科一択でした。大学卒業後は地元を離れて、愛知県、三重県、岐阜県の小児病棟とNICU(新生児集中治療室)を併設する病院に勤務し、1000g以下で出生された小さな赤ちゃんの治療から、小児のさまざまな分野の疾患の治療まで多岐にわたる診療に携わりました。結婚出産を経て、医師としてのこれからを考えた時、地元に医療で少しでも貢献したいと、2020年に父のクリニックに小児科を増設してここでの診療をスタートさせました。2023年末に内科を閉鎖することになり、2024年初めに院長を継承して小児専門クリニックとして再スタートしたところです。
治療方針や得意とする疾患について教えてください。
父は開院当初から「患者さんに寄り添った診療」を大切にしており、それは今も大切にしています。もしわが子だったら、家族だったらどうするかを基準に、独り善がりにならない適切な方法を提案しています。また、特に小さなお子さんの場合は親御さんと診療を進めがちですが、必ずお子さんにも声をかけ、視線の高さを合わせるようにしています。その子に合わせた話し方で説明すると、子どもなりに理解をして協力してくれることも多いです。疾患については生まれたての赤ちゃんから小児の疾患全般を診療できますが、特にアレルギー疾患はアレルギー専門医としていろいろ相談にのれると思います。また、私も含めスタッフは女性ばかりなので、育児に関しての不安など病気ではないけれど心配なことも相談していただきたいですね。
内装でこだわった点はありますか?

小児科なので、明るく優しい雰囲気になるように心がけました。「怖い場所じゃない」と思ってもらえたらいいなと思います。また、院内の感染防止対策には力を入れています。発熱や新型コロナウイルス感染症、水痘や麻疹など、他児への感染リスクがある疾患が疑われる場合は、別の入り口から直接入っていただける診察室を用意しています。おもちゃからの感染リスクを考えて、あえてキッズコーナーは作っていません。診察室や処置室にはいくつかおもちゃを置いてありますが、お子さんが遊んだ後は一回一回スタッフが消毒しています。また、定期ワクチン接種が始まる前の小さな赤ちゃんや、感染症には特に注意が必要な持病がある方などは、来院していただく時間を調整したり別の待合室を使用したりと、他の患者さんと極力接することがないように工夫しています。
アレルギー疾患は定期的な受診で症状の把握を
どんな症状で来院されるケースが多いですか?

小児科なので感染症はとても多いです。新型コロナウィルス感染症だけではなく、インフルエンザ、RSウイルス、溶連菌、アデノウイルスなど、1年中感染症の流行があります。流行性の感染症は保育園や幼稚園など集団生活をしていると感染することも多いと思います。ご本人が元気であればそれほど慌てなくても大丈夫ですが、普段よりぐったりしている、熱が続くなどいつもと様子が違う時や生後半年未満の赤ちゃんの発熱は早めの受診をお願いしたいです。あとは、食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症などのアレルギー疾患も多いですね。アレルギー専門医としてガイドラインに準じた診療を行っています。
アレルギーは具体的にどのような診療を行いますか?
基本はガイドラインに基づいた診療を行っています。何にアレルギーがあるか判断するときに血液検査や皮膚テストが参考になります。主な疾患で言うと、食物アレルギーは実際の症状と検査結果を参考に負荷試験を行い、除去や解除の進め方を判断します。気管支喘息は症状の頻度や程度をもとに治療を行いますが、年齢の大きな子は呼吸機能検査結果も参考にします。あとは環境整備も大切です。アトピー性皮膚炎はスキンケアや外用薬を適切に行えるよう指導もします。アレルギー性鼻炎は検査結果と症状をもとに治療を行いますが、ダニとスギ花粉に関しては5歳以上で舌下免疫療法の治療を行うこともできます。
アレルギーを持つ子どもの親として気をつけるべき点はなんですか。

状態の把握は大切です。 診断は適切か。何にアレルギーがあって、どんな症状が出るのか。症状が出た時はどうしたらよいのか。食物アレルギーは年齢とともに改善して食べられるようになることもありますが自己判断で食べてしまうと強い症状が出ることもあります。また、本当は摂取できる食材を過剰に除去してしまうケースもあります。きちんと受診して確認してほしいです。気管支喘息は大きな発作がなくても、風邪などをきっかけに軽い発作を繰り返していることがあります。本人も発作に慣れてしまい気がつかず、症状の重症化につながることもあります。いずれにしても定期的な受診で症状の確認や治療の見直しが必要です。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎も含め、自己判断で治療を中断せず、定期的に受診をしてほしいです。
とにかく気軽に相談できる場所でありたい
スタッフ全員が女性というのは安心感がありますね。

スタッフは全員女性で子育て経験があります。特に限定はしていませんが、たまたまそんなスタッフがそろいました。皆子ども好きで、子育ての大変さやわが子を心配する気持ちを経験しているので、ご両親の悩みや不安な気持ちを理解しています。ぜひ、スタッフに日常の小さな悩みも相談してほしいです。きっと、経験談も交えて話を聞くと安心できることも多いと思いますよ。また、患者さんが来院された時の様子もよくみていて、「今日はいつもより元気がない」とか「呼吸が苦しそう」など、急を要する状態の時は教えてくれるのでとても頼りにしています。スタッフとの連携はとても重要ですね。
では、今後の展望をお聞かせいただけますか。
子育てに寄り添える社会であってほしいですね。子育て中は、外出先で子どもが泣いてしまったり、周りの手助けが必要だったりして申し訳なく思ってしまうことが多いと思います。当院でもお子さんが泣いたり暴れたりすると、すごく恐縮される親御さんや、「こんな軽い症状で受診してしまって」と申し訳なさそうにされる親御さんがみえます。そんなことは気にしなくてよいと思えるような、伸び伸びと子育てができる社会になるために微力ながらできることに取り組みたいです。まずは、心配なことがあった時、どの診療科を受診すればよいのかわからない時に、とりあえずここで相談すれば大丈夫と思ってもらえる場所になりたいですね。ちょっと心配だから相談したいなと気軽に受診できる環境をめざしています。遠慮なくなんでも話せるような雰囲気づくりも大切にしたいですね。
最後に、保護者とお子さんに向けてのメッセージをお願いします。

お子さんにとっては注射や検査など嫌なことをする場所でもあり、医療機関が苦手なお子さんほど泣いてしまう、暴れてしまうと遠慮して受診せずに我慢しがちです。でも、受診を繰り返すうちにお子さんなりにどんな場所か理解してくれて、少しずつ慣れていきます。また私たち医療者もお子さんの普段の様子を知ることができ、小さな変化にも気がつきやすくなります。この程度の症状でと思わずに、些細なことでも心配があれば「まずは『えがお』に相談すればいいね」と思っていただけたらうれしいです。小児科専門医、アレルギー専門医としてしっかり対応させていただきます。