澁谷 きよみ 院長、澁谷 美由記 さんの独自取材記事
渋谷医院
(名古屋市瑞穂区/総合リハビリセンター駅)
最終更新日:2024/12/13

総合リハビリセンター駅を出て閑静な住宅街を10分ほど歩くと、立派な日本家屋が現れる。それが心療内科専門の「渋谷医院」だ。澁谷きよみ院長はかつて産婦人科の医師として働く中で、心のサポートが重要と考えるようになり、心療内科への方向転換を決意。現在は、娘で公認心理師である澁谷美由記さんとともに、ストレスや不定愁訴を抱える人、休職中で復職をめざす人などさまざまな患者に対応している。公認心理師は美由記さんを含め3人が在籍。「医師と、男性、女性それぞれのスタッフがそろい、多角的な視点を持っていることが当院の強みの一つ」ときよみ院長。その朗らかで優しい人柄は美由記さんにも受け継がれている。インタビューを通して、「患者さんのために」という2人の熱い思いが伝わってきた。
(取材日2024年11月20日)
産婦人科を経て心療内科に重点を置いた医院に
こちらはカウンセリングをメインとされているのですね。

【きよみ院長】はい。かつては瑞穂区内の違う場所で、亡き夫とともに産婦人科の医院を営んでいました。当時から心の問題にも対応していましたが、もっとメンタルサポートに力を入れたいと考えるようになり、子育てが一段落したところで医局に再入局して、心療内科や漢方治療について勉強しました。夫から医院をたたむ相談を受けたのはその後です。それを転機とし、2020年、カウンセリングを主体とした医院として現在地に移転してきました。この日本家屋は父が建てたもので、天井や庭など細かい部分に父のこだわりが詰まっています。患者さんには「リラックスできる」「落ち着く」と言っていただくことが多いですね。中庭もあるので換気もスムーズですし、四季の移り変わりも感じていただけると思います。
どのような患者さんが来られていますか?
【きよみ院長】男女ともに10代から90代までと年齢層も幅広く、お悩みもさまざまです。学校や職場での悩み、人間関係の悩み、不定愁訴、また高齢の方では「孤食」で、誰かと話したいと来られる方も。現在はカウンセリングをメインに行う医院となっていますので、「話したい」「聞いてほしい」という方にも対応しやすくなり、お一人お一人にじっくりと向き合う時間ができました。以前の医院では難しかったことが可能になりましたね。カウンセリングにあたるのは、私と、娘の美由記を含む3人の公認心理師。うち1人は男性です。ほかに企業勤務経験のある男性スタッフもおり、一側面からだけでなく多角的な視点でもって相談に対応することができることも当院の強みの一つ。患者さんにとっては、場合によって相性の合うスタッフを選ぶこともできるでしょう。
院長のさまざまなご経験が、今に生かされているのですね。

【きよみ院長】私は麻酔科からスタートし、産婦人科、心療内科、漢方医療と学んできました。積み重ねてきたものを総合的に生かせる分野として、ここにたどりついたと思っています。これまでの経験をもとに、複合的に患者さんと接することができることは大きいですね。当院では、発達障害や、うつ病、不安障害に関する簡易的な心理検査ができますが、採血検査や本格的な治療が必要な場合は、私も診療に加わっている内科・心療内科医院へ、もしくは患者さんの希望される医院へ紹介をしています。
リラックスして話ができるように心がける
美由記さんは、お悩みの中でもリワークに関わる相談に多く応えておられるそうですね。

【美由記さん】はい。例えば職場でパワーハラスメントを受けたり、パワーハラスメントと認められなくてもご本人の心の傷になってしまったりという方は少なくなく、職場復帰、または元の職場でなくとも転職も含めて社会復帰ができるようにサポートしています。リワークプログラムは自治体によるスクール形式と、医院で受けられるグループ単位のものがありますが、当院ではマンツーマンで、私たちが全身全霊を傾けて取り組みます。物の感じ方、受け取り方は人それぞれですので、保険診療でない分、時間をかけて、患者さんそれぞれに合わせた方法で進めることができると思っています。復帰準備期には、他の医院や職業訓練所、職場などと連携していきます。
カウンセリングで心がけておられることはありますか?
【美由記さん】本音を話していただけないと、治療を進めるのに時間がかかってしまいますので、なるべく緊張せず、リラックスしてお話ししていただけるように心がけています。ここは一軒家ですので、「知り合いの家に遊びに来た」というような感覚になっていただければ。カウンセリングというと何から話していいかわからない方も多いと思いますが、まずは雑談でも大丈夫です。患者さんの中には、ここで飼っている猫に会いに来た、という方もおられますよ(笑)。2回3回と回数を重ねて信頼関係ができてきたら、ゴールを一緒に決めていきます。患者さんが仕事に復帰されて、「元気に通っています」とおっしゃってくださったらとてもうれしくなりますね。
公認心理師になられたのはお母さまである院長の影響もあったのでしょうか?

【美由記さん】影響は大きかったですね。父も祖父母も医師でしたが、多忙な母を見ていると医師になりたいとは思えなくて(笑)。今思えば患者さんのために一生懸命だったとわかるのですが、その母が心療内科の診療を始めてから、私も、カウンセリングの仕事に興味を持ち始めました。そして、「病気だけを診るのではなく人を診る」という母の姿勢も素晴らしいことだなと思うようになりました。今も一緒にいると学びは尽きません。
【きよみ院長】私が言うのも何ですが美由記は勘がよく、患者さんと少しお話をしただけで「この方にはこういう方法がいい」「あの方にはこうしたアドバイスがいい」などとわかるようなのです。カウンセラーとして天性のセンスがあり、彼女にとって今の仕事は天職だと思っています。自分の力を患者さんのために十分生かしてほしいですね。
元気と思っている人でも気軽に来られる場に
今後、力を入れたいことはありますか?

【美由記さん】ストレスや心に悩みを抱えることは、誰にでも起こり得ることです。であれば、誰でもなり得る風邪を予防するように、心の問題も予防ができたらと思うのです。気持ちがどーんと落ち込んでしまってから来られる方がほとんどですが、回復するにはエネルギーも必要で時間もかかります。ですから心がフラットな状態のうちにストレスに気づき、自分でストレスを緩和することができれば、回復もしやすいのではないでしょうか。そのため、元気なうちに当院を利用してもらえたらいいなという思いがあります。体の健康診断は年1回受けられていると思いますが、心の健康診断も大事なのでは。心理的な検査を受けて、必要に応じて治療をして、といった当院の利用の仕方もいいのかなと考えています。
院長はいかがですか?
【きよみ院長】以前の医院では診療の仕方が異なり、患者さんの心のつらさには「共感」しかできませんでした。今はカウンセリングを主体にしていますので、ストレスに対する耐久力や対応力について指導したり、アサーションといったコミュニケーションに関するトレーニングをしたりできます。当院の公認心理師たちの腕の見せ所でもありますね。患者さんは予約制で、朝電話をいただいても夕方には対応できるように努めていますが、フラッと来られた方も受け入れたくて、将来的にあと2人ほど公認心理師を増やしたいと思っています。実は1軒、近くに家を借りており、そちらではリビングでソファーに座ってお話をしてもらっています。こちらには畳の部屋があるので、いつか改装して掘りごたつを作りたいなと(笑)。こちらにも、遊びに行くような気軽な気持ちで来ていただければうれしいですね。また引き続き、オンラインでの相談にも力を入れていきたいです。
最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

【きよみ院長】一番伝えたいのは「調子が良くない、おかしいなと思ったらすぐ来ていいですよ」ということです。「些細なことだから」と遠慮する必要はありません。ストレスの原因や、仕事に行きたくないと思う原因を一緒に探していきましょう。話を聞いてほしいけれど、なかなか一歩踏み出せないという方は多いと思いますが、私たちは、もっともっと力になりたい。患者さんそれぞれのめざすゴールにたどり着くまでのパートナーとして寄り添いたいと思っているのです。患者さんに喜んでもらうことが私たちの喜びでもあります。ぜひお気軽にいらしてくださいね。
自由診療費用の目安
自由診療とはカウンセリング(公認心理師)/4400円(30分)~、カウンセリング(医師)/6600円(30分)~、リワークプログラム/4400円(30分)~