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古井 秀彦 院長の独自取材記事

古井医院

(不破郡垂井町/垂井駅)

最終更新日:2021/10/12

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JR東海道本線の垂井駅から徒歩約10分。「古井医院」は岐阜県不破郡垂井町を流れる相川沿いにある。1917年の開院以来、長年にわたってこの町に住む人たちの健康を守ってきた。3代目院長の古井秀彦先生は信州大学医学部出身でアレルギー科、呼吸器内科が専門。県内外の基幹病院での勤務医を経て、1994年から同院の院長を務める。内科、小児科の地域のかかりつけ医として信頼を寄せられ、専門の喘息やアレルギーの診療には県外からも来院があるという。喘息やアレルギー疾患への理解を広めるための活動にも尽力する古井院長に、同院の歴史や社会貢献活動の足跡を聞いた。

(取材日2020年2月13日)

1917年開院、3代にわたり地域住民の健康を見守る

長い歴史のある医院だそうですね。

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1917年に祖父がこの町で開院しました。開院の翌年、世界中にスペイン風邪がまん延し、この町でも流行しました。祖父が書き残した当時の記録を読むと、献身的に治療に取り組んだことがわかります。また、患者さんの中には「おじいさんに診てもらいました。親切な先生でした」という方がいらっしゃいます。祖父は私が生まれる前年に他界しましたので思い出はないのですが、覚えていてくださる方がいるのはうれしいですね。父は、私が1994年に勤務医をやめて戻ってくるまで、40年以上、院長を務めました。今も健在です。現役時代には地元の医師会での活動など、地域医療に尽力していました。子どもの頃から祖父のことを聞き、父の姿を見ていましたので、自然に将来は地元に貢献する医師になろうと思っていました。

患者層について教えてください。

基本的には地域の方たちですが、呼吸器内科やアレルギー科には県外からも来院されます。喘息や、タバコが主な原因とされる肺の病気、COPDの患者さんたちです。こうした呼吸器疾患の方は気道が通りにくくなっているため、呼吸抵抗が大きくなります。当院では呼吸抵抗測定器を導入してから、診断がつけやすくなりました。また、喘息の方は気道に慢性的な炎症があり、そのため呼気の中の一酸化窒素が多くなります。その値を測定する機器も早くから導入していました。測定して喘息と診断がつけば吸入薬で炎症を抑えるための治療を行います。これらの機器は測定結果がわかりやすいグラフや数値で表示されるので、患者さんにも経過を確認してもらえます。「症状はコントロールできるんだ」という希望につながればと思います。

地域のかかりつけ医として幅広い病気も診察されますか。

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そうですね。地域が高齢化していることもあり、生活習慣病の治療には力を入れています。専門の喘息やアレルギーの治療を軸にして、お子さんから高齢者までの幅広い病気を診たいと思っています。特に喘息は家族集積性がありますので、親子、きょうだいで悩んでいるケースが多いので家族で診させてもらうようにしています。医療はガイドラインやエビデンスに基づいて行わなければいけませんが、一方で患者さんは一人ひとり違います。個々の情報を受けとめて治療に生かすことが大切です。毎年1月はすべてのカルテに、患者さんの持病や血圧、他院での手術経験や、家族の病歴などの要約を更新して、常に初めて受診された時から起きたことを把握して診療するようにしています。

喘息死ゼロをめざし、喘息カードの普及に尽力

喘息は症状がつらく、悩みが深い病気ともいわれますね。

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私自身が子どもの頃、喘息でしたので、この病気の苦しさがよくわかります。それも医師をめざした動機の一つでした。今は治療薬の進歩もあり、症状のつらさは軽減されてきています。加えて、喘息で亡くなる方は年々減ってきています。その背景には、喘息治療の指針を標準化したガイドラインが共有されるようになったこと、そして喘息カードの普及があると考えます。喘息の発作は夜間に起きることが多く、軽快しないと最悪の場合、窒息死に至ります。けれども適切な対応ができれば、翌朝は状態が落ち着いていることも多いのです。一晩、乗り越えられたら日常生活に戻れたかもしれないのに、多くの患者さんが亡くなるのはつらいことです。なんとかしようと始まったのが喘息カードの取り組みでした。

先生は喘息カードの普及に尽力してこられたそうですね。

年間多数の患者さんが、喘息を原因に亡くなっていた時代がありました。夜間に喘息の発作が起きた時、患者さん自身がどの病院に行けばいいのか判断できず、受け入れた病院も患者さんの病歴がわからないことが、対応のしにくさにつながっていたのです。喘息カードは、かかりつけ医、重症度、禁忌薬、緊急時受診病院などを記入するもので、患者さんがこれを携帯していれば救急対応が円滑になります。ここ西濃地区では早い時期から喘息カードの配布と啓発に取り組み、私も参加してきました。やがて岐阜県全体での「喘息死ゼロ作戦」に発展しました。

診療にあたり心がけていることを伺いたいです。

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生活習慣病や喘息などの慢性疾患の治療で大切なのはアドヒアランスです。以前はコンプライアンスといっていました。薬をきちんと飲んでくれる患者さんのことを「コンプライアンスがいい」というように。しかし、これは医師の決定に患者さんが従うという意味合いが強いので使わないようになってきました。アドヒアランスは医師が説明を尽くし、患者さんが納得した上で主体的に治療に取り組んでいただこうという考え方です。例えば「血圧が落ち着いてきたから服薬をやめたい」と言われる患者さんに「いけません」と言うのではなく、先ほどお話ししたカルテの記載に基づいて、初めて受診された時の高かった血圧を再確認してもらい、「ご家族も脳卒中を経験しているでしょう。高血圧を放置すると、そういうリスクがありますよ」と説明します。患者さんと情報を共有し、治療の意欲を高めてもらう。それがホームドクターの仕事だと思います。

病気への理解を深め健康を守るための社会活動を続ける

アナフィラキシーを起こした際に用いる薬剤の使い方講習を続けておいでですね。

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アナフィラキシー補助治療剤は、アナフィラキシー症状を一時的に緩和する目的の注射型の治療薬で、医師の治療を受けるまでの時間を稼げます。とはいえ、生徒・児童がアナフィラキシーを発症した時、本人が注射するのは難しいですし、先生も経験がないと正しく使えません。このため2012年度から地元の地域の学校、幼稚園、保育園の先生方を対象に講習を始めました。患者さんが病気を乗り越えるためには周囲の理解が必要です。そういう環境は医師だけ、学校だけではつくれません。互いによく話し合い、一緒に実現していくものです。この取り組みをもとにして、2013年からは岐阜県全体で実施されるようになりました。今後もこうした取り組みが続いてほしいと思います。

タバコの影響やがんについて知ってもらう授業も行っていらっしゃいます。

呼吸器内科医師は「タバコさえなければ」と考えてしまうような病気を日常的に診ます。一人でも多くの人に禁煙してもらいたいのですが、タバコは吸い始めるのは簡単ですがやめるのは難しい。では吸い始める前の世代、中学生に働きかけようということで2009年度から防煙教室を始めました。有志の医師や薬剤師らが中学校に出向いて、タバコが関連するさまざまな病気のこと、受動喫煙は吸わない人の健康にも影響を与えること、ニコチンの依存性などについて話しています。がん教育では、がんを予防するためのライフスタイルについて、また、がんになっても早期発見、治療できるよう検診について若いうちから関心をもってもらえるようにお伝えしています。時には、がん経験のある方を講師に招いて、病気と向き合いながら生きていく姿を知ってもらいます。

読者へのメッセージや今後の展望をお聞かせください。

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若い頃、先輩医師に「目の前の患者さんを助けるのは大事なことだ。でも、それだけではいけない」と言われました。「基礎医学を学び、自分の専門分野の仕事をし、さらに社会的な仕事をしなさい。その3つを実践してこそバランスのとれた医師になれる」と教えられたのです。私がいろいろな活動をしてきたのは、その言葉がきっかけです。これらの活動は健康の種をまくことで、花が咲く頃、私は生きていないかもしれません。でも、芽生えてくれるであろう可能性に向かって、医師以外の他職種も集まって、夢を語るのはすてきなことです。当院での治療とともに、社会的な取り組みも続けて、町の皆さんの健康を守りたいと思います。

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