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池庭 誠 院長の独自取材記事

池庭医院

(多治見市/多治見駅)

最終更新日:2023/09/04

池庭誠院長 池庭医院 main

再開発が進む多治見駅から歩いて10分。静かな住宅街の一角にたたずむ「池庭医院」は、1960年の開業以来、親子3代で地域の健康を見守り続けてきた老舗クリニックだ。待合室には院長の母が選んだ愛らしい人形がさりげなく飾られている。3代目院長である池庭誠先生は、日本糖尿病学会糖尿病専門医。名古屋大学医学部卒業後は、地域の基幹病院で糖尿病・内分泌内科領域を中心に研鑽を積んできた。2015年に院長に就任してからは、糖尿病専門医として豊富な臨床経験を生かし、東濃エリアの医療に貢献。特に糖尿病患者へのコーチングを得意としている。気さくで話し上手な池庭院長に、これまでの歩みや診療に対する思い、最近力を入れている活動まで、たっぷりと語ってもらった。

(取材日2022年3月23日)

祖父と父から受け継いだクリニックで地域医療に貢献

こちらのクリニックは、親子3代にわたって診療されていると伺いました。

池庭誠院長 池庭医院1

はい、1960年に祖父がこの場所で開業をして、その後父、私と続いています。この辺りは今でこそたくさんの医院がありますが、祖父が開業したばかりの頃は件数が少なかったので、春日井のほうまで往診に出かけていました。そんな祖父の背中を今も覚えています。その祖父は5年前に93歳で亡くなりましたが、前日まで普通に仕事をしていました。昔から「患者さんとじっくり話すことができるのが開業医の醍醐味だ」と言っていましたので、患者さんと接する時間を最期まで楽しんでいたのだと思います。このクリニックは父が後を継いだ1990年に一度改築をしていて、受付の位置が変わったり、機器が増えたりしているので、院内の様子は随分と変わりましたね。

先生が医師をめざしたきっかけは何ですか?

正直なところ、子どもの頃は自動車関係の仕事にも憧れていましたし、社会問題にも興味があったので政治家もいいなと思った時期もありました。でも、私の家は代々医師の家系でもあったので「自分が後を継がなくては」という思いがあり、結局は医学部へ進学したんです。開業医として地域医療に貢献する祖父と父の姿も見てきましたので、大学卒業後は生まれ育ったこの地のために働くのがいいのではと思いました。糖尿病を専門にしたきっかけは、研修医時代に熱意のある糖尿病を専門とされている先生に出会ったことです。糖尿病は人と関わることの多い分野なので、そういった面も面白そうだなと思いました。私は「口から先に生まれた」なんて人から言われるくらい、話をすることが好きなので(笑)。このクリニックを継いだ頃は、まだ糖尿病専門医が東濃エリアに少なかったので、可児と土岐の総合病院で非常勤をしながらの診療で本当に忙しい日々でした。

現在はどのような患者さんがいらっしゃっていますか? 

池庭誠院長 池庭医院2

父の頃から続けて通ってくださっている患者さんもいらっしゃるので、うれしいですね。近頃はインターネットなどを見て、可児や中津川といった遠方から来院される方も増えています。糖尿病治療にお悩みの患者さんも多く来院していただいています。あとは糖尿病を中心に派生した病気に悩む方や、高血圧などその他生活習慣病の治療を求めて来られる方も多いように思います。父の代から漢方を取り入れた診療を行っているので、漢方を用いた医療を求めて来院される患者さんもいらっしゃいます。最近は心身ともに不調を感じている患者さんが増えている印象です。心療内科や精神科へ行くのはハードルが高いと感じている患者さんが、漢方を求めて来院されるケースもあります。

患者の興味を引き出し、前向きな治療につなげていく

糖尿病の患者さんに対する指導で苦労されることはありませんか? 

池庭誠院長 池庭医院3

以前、インスリン注射が必要な患者さんがいらっしゃったのですが、「インスリン注射は太るから打ちたくない」と言って治療を拒んでいたんです。ですがある日緊急搬送されて入院することになり、その時にインスリン注射の必要性に気づいたそうです。難しいのは、「関心のない人たちにどのように関心を持ってもらうのか」ということ。自覚のない人や、「どうでもいい」と考えている人たちを指導するには工夫が必要になります。「変化ステージモデル」というものがありますが、まったく関心がない「前熟考期(無関心期)」、興味はあるけどやらない「熟考期」、やり始めようと思って少しやっている「準備期」というように、それぞれの段階に応じてアプローチを変えるようにしています。前熟考期の患者さんに「糖尿病についてどう思っていますか?」と質問し、考えを聞いてみる。「聞いて、待つこと」が大切です。

患者さんと向き合う時に気をつけていることはありますか? 

患者さんを自分の家族だと思って接すること、相手が医師だったとしても恥ずかしくないような説明をするということですね。相手によって態度を変えるということはしないと決めています。あとは、患者さんがなんでも相談しやすいような雰囲気も大切にしています。素直に話していただけるような信頼関係を築くことも大切ですね。患者さんから相談されるということは、医師としてうれしいことです。糖尿病の患者さんに対しては、糖尿病のコントロールが忍耐だけのつらいものにならないように気をつけていて、その人が何を大切にしているのかをきちんと見極めることが大切だと思っています。

漢方に対する先生の考えをお聞かせください。

池庭誠院長 池庭医院4

漢方というのは野球でいうと、ピッチャーが変化球をたくさん持っているのと同じだと思っています。たくさんの種類があるから、いろいろな症状に対応することができるんです。漢方医療では、「ぱっと見」というのが意外と大切で、その人を見た時に元気そうか否かが基準になります。「望診」という言葉があるように、患者さんの全体像をしっかり見つめることが欠かせません。最近はインターネットなどで情報収集ができるので、患者さんも漢方に関する知識が豊富な方が多くて、種類を指定されることもあるんですが、漢方というのは人によって使い方が違います。その人に合った漢方を出すためには、その人を知るということが大切なんです。

患者の幸福のために社会のシステムにも目を向ける

最近は診療以外の活動にも力を入れていらっしゃるそうですね。

池庭誠院長 池庭医院5

2022年2月末から岐阜県保険医協会の副会長を務め、「生きやすい社会づくり」をめざした活動に従事しています。社会システムや医療制度の現状や問題点について、ブログで情報発信も行っています。母からは「目立つことはやめなさい」と言われていますが(笑)。以前ご高齢の患者さんが「長生きするのが申し訳なくてつらい」と仰っていました。そんな思いをしてほしくない。社会システムや制度を良い方向に変えていくことで、皆が生きやすい社会になってほしい。そういった願いから、社会の仕組みや制度に目を向けるようになりました。私たちの幸福のために、そして子どもたちにより良い環境を残すために、諦めずに自分の力を出し切って社会を良くするために行動していきたいと考えています。今は私の意志に賛同してくれる仲間が増えるように、情報発信に力を入れています。

プライベートについても少しお聞かせください。お休みの日はどのように過ごされていますか?

患者さんに健康指導をする立場もあるので、自分が太ってはいけないと思って以前はテニスをしていました。今は忙しくて、運動は買い物をする時に歩くぐらいです(笑)。高校時代には絵を描いていましたし、大学ではコーラスをしていました。歌に関しては最近まで続けていましたね。大学を卒業後も年に2回のコンサートには続けて出ていました。伏見にあるコンサートホールなどで教会音楽を歌ったこともあります。家内ともコーラスがきっかけで出会ったんですよ。またいつかテニスとコーラスを再開させたいですね。

最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

池庭誠院長 池庭医院6

患者さんの生活環境や考えを大事にし、さまざまな治療法の中から最も適したものを提示するように心がけています。漢方を求めていらっしゃる患者さんの中には、「この漢方が飲みたい」と特定のものを希望される方もいらっしゃいます。当院では患者さんの要望を否定せず、より良いものがあればアドバイスした上で処方するようにしています。患者さんと信頼関係を築きながら診療するのが、医師としての喜びですね。これからも、地域の方々の幸せを願いながら、診療にも診療外の活動にも本気で取り組んでいきます。

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